抄録
近年,無作為抽出された市民から参加者を募集する討論会が各地で開催され,情報提供と討論を組み合わせて市民の意見を把握する新しい手法として注目されている。筆者らは地域の将来像選択をテーマに討論会を行い,この手法の特徴である参加者の多様性と熟議を検証した。多様性は母集団との一致性というよりは従来の参加者との違いの点で示された。熟議の結果として得られると考えられる市民意向を,意見変化および確信度から把握した。参加者の選択は,事前アンケートと討論会後で大きく異なり,討論会の効果が示された。また,参加者は確信を持って選択したわけではなく,選択は討論によって変化する可能性があることが分かった。