抄録
本研究では,河川に広く生息するオイカワ(Zacco platypus)を対象に,体組織の炭素と窒素の安定同位体比が食物源の違いを反映して河川(およそ-26‰と16‰)と遊水地(およそ-22‰と11‰)で異なったことを利用し,水域間の移動を明らかにした。同種の採補は,神奈川県内の境川,境川支流の和泉川,神奈川県立境川遊水地公園内の俣野遊水地,下飯田遊水地の隣接する4水域で実施した。出水による越流前後で河川と遊水地で採補された個体の安定同位体比の比較から,越流による河川から遊水地内へのオイカワの移動が確認された。遊水地は出水による生息域の流下を防ぐ役割があり,遊水地は河川のオイカワの生育場として重要な場所であることが示唆された。