抄録
本稿は三重県伊賀市K 集落を事例に,中山間地域における小規模な農業水利施設の維持管理の変容を明らかにした。その結果,水需要と農業者数の減少に伴い用水管理組織の機能が失われていること,および(ⅰ)管理区間の長さに比しての維持管理作業参加者の少なさ,(ⅱ)複数の管理区間の維持管理作業への参加,(ⅲ)作業への機械導入の困難さ,(ⅳ)水利施設の修繕費の負担問題を背景に,維持管理作業にかかる農業者の負担が増加していることを明らかにした。また,農地や水利施設の持つ景観・防災機能の評価の向上,あるいは維持管理作業と地域行事との一体化によって,農業者以外の住民の作業への協力を促せる可能性があることを指摘した。