抄録
カタクチイワシの栄養段階(TL)を炭素・窒素安定同位体比(δ13C・δ15N)を用いて推定した。本種のδ15N は外 洋域で低く,相模湾(沿岸域)で高かった。δ15N とTL の試料内変動は沿岸域で大きく,外洋で小さかったが,沿岸と 外洋で平均TL はそれぞれ3で変わらなかった。しかしながら,外洋域と沿岸域ではδ13C に有意差があった。したがって,両者は食物網の起点が異なると判断され,食物網構造にも違いが生じたと考えられた。さらに,相模湾は回遊魚である本種の沖合個体群が来遊することで複雑な食物網構造を示した。