本研究では,警察の山岳遭難記録をもとに,行動形態による遭難特性の相違を考慮し,採集行動,スキー行動,一般登山に区分し比較検討した。次に一般登山に対し,山域毎の危険性に応じた遭難対応の必要性を踏まえ,遭難者が多い北アルプスの山岳遭難特性を,他の山群,北アルプス内の山域間,個別山域,3つの異なる空間尺度で比較検討した。その結果,採集行動やスキー行動では遭難特性が一般登山とは異なり,個別に対処する必要性が示された。山群,山域,個別山域で比較検討から,各空間尺度で導出された遭難特性,および空間尺度に跨る遭難特性,相互の共通点や相違点を確認し,遭難対策で着眼すべき点や今後の課題を明らかにした。