2012 年 66 巻 1 号 p. 182-188
セメント系硬化体中の空隙表面電位は、イオンの拡散性状に影響を及ぼすと考えられている。本研究では、空隙表面電位を近似的に表すことのできるゼータ電位に着目し、細孔溶液組成、水和物の種類と生成量、溶液温度がセメント系硬化体に及ぼす影響について検討を行った。また、各硬化体の細孔溶液を抽出し、そのイオン組成を模擬した溶液中で硬化体を構成する各種水和物のゼータ電位の測定し、実際のセメント系硬化体のゼータ電位を推定することを試みた。その結果、セメント系硬化体を構成する各種水和物の生成量、比表面積、ゼータ電位を積算することにより、実際のセメント系硬化体のゼータ電位を精度良く推定することが可能となった。