セメント・コンクリート論文集
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セメント化学
  • 北川 遥喬, 斎藤 豪, 神村 幸弥, 佐伯 竜彦
    2023 年 77 巻 1 号 p. 2-8
    発行日: 2024/03/29
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル フリー

    本研究では、ローマンコンクリートや粘土を用いたセメント系材料中に生成し、強度や耐久性に大きく寄与するとされているストラトリンガイトの構造変化の評価を目的とした。具体的には加熱前後のストラトリンガイトの原子の結合状態やAl配位数の変化および脱水挙動を分析し検討を行った。その結果、XRDおよびFT-IRから、150℃の加熱によってmain layerは結合が切断された一方で、interlayerは結合が残存していることが示された。また、ダイナミックTGの結果からストラトリンガイトは脱水が3段階で進行し、構造内の水分子が脱離した後、main layerの水酸基、interlayerの水酸基の順に脱離することが示された。

  • 金舛 育実, 大村 訓史, 竹田 宣典
    2023 年 77 巻 1 号 p. 9-16
    発行日: 2024/03/29
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル フリー

    近年、高耐久であることが知られているローマンコンクリート内部に11Åトバモライトが存在することが明らかとなり、11Åトバモライトの基礎的な力学特性の理解が求められている。本研究では、分子動力学法を用いて、11Åトバモライトの単結晶と非晶質状態での応力-ひずみ関係を詳細に調べた。その結果、11Åトバモライトは引張方向によって異なる変形機構を持ち、強度も異なることが明らかとなった。また、圧縮変形に関しても、引張変形と同様に圧縮方向によって異なる変形機構を持つことが分かった。非晶質状態に関しては変形前の構造がすでに乱れているため、変形方向によるメカニズムの違いは現れない。

  • 佐伯 直彦, CHENG Luge, 栗原 諒, 丸山 一平
    2023 年 77 巻 1 号 p. 17-25
    発行日: 2024/03/29
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル フリー

    セメント硬化体は、外部の相対湿度(RH)に応じてC-S-Hゲルの構造、空隙内での自由水分布および結合水量が変化する。それらの変化には乾燥履歴によるヒステリシスが存在するため、処女乾燥させた系と乾燥後に再吸湿させた系とでは、同じRHで平衡にある状態でもそれらの性質が異なる。本研究ではセメント硬化体をRH 60%で処女乾燥した系、RH 23%乾燥後とD-dry乾燥後にそれぞれRH 60%に再吸湿した系を比較し、1H NMR Relaxometry、水蒸気吸着、TG、XRDで測定した。RH 23%乾燥やD-dry乾燥による層間距離の減少はその後の再吸湿によっても回復しないことが確認された。また、乾燥と再吸湿によるGel水やInterlayer水量の変化、及びAFt量の変化を定量的に評価することができた。

  • 茶林 敬司, 安達 丈, 加藤 弘義, 新 大軌
    2023 年 77 巻 1 号 p. 26-34
    発行日: 2024/03/29
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル フリー

    本研究では、組成の異なるカルシウムアルミノフェライトの水和反応に及ぼすアルカノールアミンの影響について、水酸化カルシウムや炭酸カルシウムなどが共存する各種条件下で検討した。その結果、アルカノールアミンはカルシウムアルミノフェライトの水和反応を促進し、特にFe2O3比率の高いフェライトで反応促進効果が顕著であった。また、アルカノールアミンの中でもFeとAlの溶出度の高める効果が顕著であったトリエタノールアミンは特にカルシウムアルミノフェライトの反応速度を速めることが確認された。水酸化カルシウムや炭酸カルシウムが共存する系においても、アルカノールアミンの反応促進は同様に確認された。

  • 栗原 諒, 大窪 貴洋, 丸山 一平
    2023 年 77 巻 1 号 p. 35-43
    発行日: 2024/03/29
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル フリー

    処女乾燥時に起きるセメントペースト(HCP)の空隙構造変化は、再吸湿過程で非回復性となる構造変化が介在する。本研究では、HCPの空隙中にある水分子の1Hを核種とした1H NMR relaxometryを用いたT1-T2緩和相関測定を、再吸湿過程におけるHCPにおいて実施した。その結果、2次元のT1-T2緩和相関から、封緘時ではT1/T2≈1.7の対角線上にinterlayer、gel、capillary空隙に由来する緩和成分が存在する。再吸湿過程では対角ピーク上で再吸水挙動が確認される一方、95%RHでの再吸湿においても非回復性である、他の空隙中と運動性の異なるC-S-H中の1H緩和成分がT1/T2≈12.3に確認された。この緩和成分は、再度水没させた場合のみ回復しうる、処女乾燥時のC-S-Hの非回復性の構造変化に由来するものと考えられる。

  • 伊神 竜生, Abudushalamu Aili, 五十嵐 豪, 丸山 一平
    2023 年 77 巻 1 号 p. 44-52
    発行日: 2024/03/29
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル フリー

    本論文は、1H-NMR Relaxometryを炭酸化過程に適応し、炭酸化によって変化する結合水量、自由水量および全体の水分量の変動を、炭酸化進行と共に分析した。その結果、20℃、85%RH環境では、水酸化カルシウムとC-S-Hの炭酸化が確認された。横緩和時間T2の測定から、Interlayer及びGel poreの横緩和時間が炭酸化により長くなることを確認した。熱重量/示差熱分析を用いて算出した水酸化カルシウムの炭酸化度とSolid echo法を用いて測定した結合水の変化量には負の相関関係があり、炭酸化によって水酸化カルシウム中の結合水が自由水へと変化したことを確認した。自由水について、炭酸化初期におけるC-S-H中のGel poreの水分量は増加し、Interlayerの水分量は減少した。

  • 扇 嘉史, 細川 佳史
    2023 年 77 巻 1 号 p. 53-61
    発行日: 2024/03/29
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル フリー

    β-C2Sの炭酸化によるCO2の固定化機構を検討した。本研究で対象とした炭酸化したβ-C2S(炭酸化β-C2S)の構成相は、各種分析から、カルサイト、アラゴナイト、CaOを少量含んだシリカゲルであった。TG-MSによって、通常の炭酸カルシウムの脱炭酸温度よりも低温である400℃付近から脱炭酸が生じたことが確認された。これは、炭酸化β-C2Sにおいて炭酸カルシウムとシリカゲルが共存したため、炭酸カルシウムの脱炭酸温度が低下して生じた現象と推測された。β-C2Sの炭酸化において、CO2は炭酸カルシウムの形態として固定化されると考えられ、一度吸収されたCO2は気中に放出されることなく、長期に渡り安定的に存在することが期待できる。

  • 富田 さゆり, 五十嵐 豪, 山田 一夫, 丸山 一平
    2023 年 77 巻 1 号 p. 62-70
    発行日: 2024/03/29
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル フリー

    本研究ではCalcium aluminate silicate hydrate(C-A-S-H)の炭酸化前後の構造変化と相組成に着目し、中湿度領域での炭酸化による変質と、炭酸化後に液水と接触した際の変化を確認した。合成したC-A-S-Hについて、NMR、SEM-EDS分析、液相組成分析の結果を基に算出したCa/Si、Al/Si、H/Si、Na/Si比から構造を同定しスキマティックなモデルを示した。炭酸化後の試料には、バテライト、カルサイト、アルミノシリケートゲルの生成を確認した。生成したバテライトは、合成バテライトと異なり450℃で相転移せず、熱重量分析で450~600℃で転移することを実証した。このバテライトは液相浸漬後に相変化し、すべてカルサイトとなることを確認した。生成したアルミノシリケートゲルの組成は、Al/Si=0.16、Ca/Si=0.09、Na/Si=0.09であった。

  • 扇 嘉史, 細川 佳史
    2023 年 77 巻 1 号 p. 71-79
    発行日: 2024/03/29
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル フリー

    乾式または湿式処理によって炭酸化させたC-A-S-Hについて各種分析を行った。乾式処理ではC-A-S-Hがほぼ完全に炭酸化しており、バテライト、アラゴナイト、カルサイト、シリカゲルが生成した。電子顕微鏡観察から、微細な炭酸カルシウムとシリカゲルが明瞭に分かれて存在せずに、混在している様子が認められた。一方で、湿式処理でもC-A-S-Hはほぼ完全に炭酸化していたが、生成相はカルサイトとシリカゲルであった。電子顕微鏡観察から、カルサイトは数μmの大きさを持ち、シリカゲルとは明瞭に区別できるように存在することが確認された。両者で脱炭酸挙動が異なり、乾式で炭酸化させたC-A-S-Hのほうが、低温領域(400から600℃程度)での脱炭酸が顕著に生じた。

  • 伊藤 貴康, 新 大軌, 原田 奏也, 大崎 雅史
    2023 年 77 巻 1 号 p. 80-88
    発行日: 2024/03/29
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル フリー

    本研究では、セメント(OPC)1~3%およびせっこう15%含む高硫酸塩スラグセメント(HS-BFSC)の水和反応や強度発現性に対して、CO2を用いて合成した炭酸カルシウム(CC)と亜硝酸カルシウム(CN)の併用添加による影響を検討した。CCの添加は、材齢7日までのBFSの反応率を高めて初期強さを向上させるが、長期強さの伸びが小さくなる傾向にあった。一方、CN添加は、OPC3%添加時の強さ低下の改善とCC添加による長期強さの低下の補完効果を示した。CNの利用により高炉B種やC種と同レベルの強さを有する、CO2を炭酸塩として固定した高硫酸塩スラグセメントの実用の可能性を示すことができた。

  • 山﨑 誠志, 西野 英哉, 黒岩 大地
    2023 年 77 巻 1 号 p. 89-95
    発行日: 2024/03/29
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル フリー

    けい酸ナトリウムをセメントで硬化させた固化体について、ラマンスペクトル分析、X線回折測定、29Si固体MAS NMR測定を用いて、固化体の構造を検討した。ラマンスペクトル分析とNMR測定から、反応初期にエーライトが消費され、けい酸ナトリウムが反応を促進することでQ2を含む鎖状構造からなるintermediate phaseであることを確認した。さらに、X線回折のハロー解析によってトバモライトに由来するアモルファス固体が生成していることが明らかになった。

  • 宇野 光稀, 近藤 早瑛, 細川 佳史, 新 大軌
    2023 年 77 巻 1 号 p. 96-104
    発行日: 2024/03/29
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル フリー

    石灰石微粉末(LSP)を10mass%まで混合した普通ポルトランドセメント(N)、中庸熱ポルトランドセメント(M)、低熱ポルトランドセメント(L)の圧縮強さ、水和反応に及ぼすトリイソプロパノールアミン(TIPA)の影響を検討した。LSPを混合したNにTIPAを添加することで材齢7日の水和物量が増加し空隙を充填することで圧縮強さが増進した。一方で、LSPを混合したM、LではTIPAを添加しても材齢7日の水和物量が増加せず、空隙が充填されなかったため圧縮強さは増進しなかった。材齢28、91日ではいずれのセメント種でもTIPA添加により圧縮強さが増進した。また、TIPA添加により非晶質のアルミネート系水和物が生成することやC-S-Hの組成が変化することが示唆された。

  • 茶林 敬司, 大田 将巳, 加藤 弘義, 新 大軌
    2023 年 77 巻 1 号 p. 105-111
    発行日: 2024/03/29
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル フリー

    鉱物組成を調整した低温焼成型クリンカーはセメント製造における焼成工程の省エネルギー化が期待されるが、同時に石灰石の脱炭酸によって発生する原料起源のCO2排出量削減も課題となっている。本研究では、産業廃棄物である生コンスラッジをカルシウム源としてクリンカー原料の一部に使用し、低温焼成型組成のクリンカー鉱物およびセメントの物性に及ぼす影響を検討した。その結果、本検討の系では、生コンスラッジを低温焼成型クリンカー原料の一部に使用した場合においても、セメント物性を維持したまま、原料起源のCO2排出量を22.9%削減可能であることが確認された。

セメント硬化体・モルタルの物性
  • 名和 豊春
    2023 年 77 巻 1 号 p. 112-119
    発行日: 2024/03/29
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル フリー

    サーモポロメトリーを用いた細孔構造解析でヒステリシスが生成する機構について考察を加えた。融解過程での細孔径分布が前処理で試料を乾燥した水銀圧入法による細孔径分布と類似することから、サーモポロメトリーの凍結過程において、セメント硬化体が乾燥し細孔構造の変化が生じていることを明らかにした。これは、従来から指摘されていた測定前の処理による細孔構造の変化をよく説明するものであり、セメント硬化体が晒されている環境を考慮した細孔構造の測定が必要であることを明らかにした。また、含水量を変化させた測定データの解析結果から、セメント硬化体中のC-S-Hゲルは、2種類のLD C-S-H(外部C-S-H)とHD C-S-H(内部C-S-H)が存在することを確認できた。さらに、LD C-S-Hは均質核生成によって凍結する2nmのゲルポアに相当する入口細孔を有するインクボトル型の細孔構造を有していることを明らかにした。

  • Zhenli YANG, Luge CHENG, Ryo KURIHARA, Ippei MARUYAMA
    2023 年 77 巻 1 号 p. 120-128
    発行日: 2024/03/29
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル フリー

    The hydration of cement is highly related with the mixing condition. The influence of mixing order to firstly add water or cement and mixing mass on the properties cement paste was investigated. XRD and Rietveld quantification was applied to study the hydration process and NMR is utilized to study the pore structure evolution. The results suggest the change in mixing condition does not intensively affect the hydration degree but affect the pore structure. Changing mixing procedures especially the mixing order exert a long-lasting influence the water distribution in interhydrate and gel pores.

  • 金氏 裕也, 原田 遼河, 黒田 保
    2023 年 77 巻 1 号 p. 129-136
    発行日: 2024/03/29
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル フリー

    乾湿繰返しを受ける鉄筋コンクリート構造物内部の鋼材は、水分と酸素の供給により腐食が発生・進展する環境下にあると考えられる。鋼材腐食の発生・進展を予測するためには、乾湿繰返し環境下におけるコンクリート部の水分移動特性を把握する必要がある。本研究では、モルタルの吸水実験および乾湿繰返し実験により測定したモルタルの飽和度分布および内部水分量の経時変化より、吸水過程および乾湿繰返し過程における水分移動特性に関して検討した。実験結果より、短期乾燥を含む乾湿繰返し過程における水分移動特性は、吸水過程における水分移動特性により表すことができる可能性があることを示した。

  • 佐藤 賢之介, 斉藤 成彦
    2023 年 77 巻 1 号 p. 137-144
    発行日: 2024/03/29
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル フリー

    本研究は、アルカリシリカ反応(ASR)による生成物の形成に合成温度および乾燥条件が及ぼす影響を明らかにすることを目的として反応期間28日でASR生成物を合成し、生成物および原子結合状態、加熱脱水挙動を評価した。その結果、80℃までの範囲では合成温度の上昇に伴い、実構造物において形成されているものと類似性の高い非晶質のASR生成物(ASRゲル(I))が形成されやすくなった。一方、乾燥条件が異なる場合、FT-IRスペクトルにおいてASRゲル(I)の構造中のSi-O振動のピーク位置に変化が認められた。加熱脱水挙動と併せて考察すると、乾燥の進行に伴いASRゲル(I)構造中の水分が逸散し、Si-O結合の状態や結合距離が変化したと考えられた。

  • 多田 真人, 曽根 涼太, 久我 龍一郎, 兵頭 彦次
    2023 年 77 巻 1 号 p. 145-152
    発行日: 2024/03/29
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル フリー

    低温環境における初期強度の向上を目的として、原料中のFe2O3に対するAl2O3の比率(鉄率:IM)を高めることによりC3A量を増加させた早強型のセメントを電気炉および小型ロータリーキルンで試製した。低温環境における初期強度発現性をモルタルおよびコンクリートで評価し、強度発現機構をXRDおよび水和発熱速度により考察した。この結果、IMが高いほどC3Aの結晶が大きく成長し、C3Aの反応性が向上するとともに、このことに起因してC3Sの反応が促進され、低温環境の初期強度発現性が向上することを明らかにした。試製したセメントは、亜硝酸カルシウムを添加し粉末度を高めた早強セメントよりも優れる初期強度発現性を有することを確認した。

  • 髙木 亮一, 林 俊斉, 神村 幸弥, 斎藤 豪
    2023 年 77 巻 1 号 p. 153-162
    発行日: 2024/03/29
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル フリー

    本研究では、バイオマス灰を大量に用いたセメント硬化体の諸物性について、ガラス中の非架橋酸素および四面体イオンの比であるNBO/Tが硬化体に及ぼすに影響に着目した検討を実施した。その結果、バイオマス灰を用いた場合、材齢の経過とともに硬化体中の数~数10nm程度の空隙量が大きくなっていた。FT-IRや27Al-NMRの分析結果から、エトリンガイト、C-A-S-H、モノサルフェートが多く生成されていたことが確認でき、圧縮強度が高くなった一要因であると考えられた。バイオマス灰のNBO/Tと硬化体の圧縮強度の間に正の相関関係が確認でき、このNBO/Tを配合強度推定の指標として用いられる可能性が示唆された。

  • Yuqi REN, Haruya TOMII, Atsushi TOMOYOSE, Ippei MARUYAMA
    2023 年 77 巻 1 号 p. 163-171
    発行日: 2024/03/29
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル フリー

    In the context of the energy transition, the conventional supplementary cementitious materials (SCMs) from the co-products of heavy industries may disappear. Therefore, new SCMs should be developed. With the publication of JIS A 6209, volcanic glass powder (VGP) produced from Kagoshima was identified as an SCM. One advantage of producing VGP is that it does not require calcination, resulting in low energy consumption during the manufacturing process. To expand the production of VGP, the Iizaka Silt produced from the volcanic ejecta of Iizaka (Nakano-Hakudo) was tested in this study. The XRD/Rietveld analysis showed that Iizaka Silt has 7different minerals accounting for about 20mass%. Many holes were observed on the surface of Iizaka Silt by SEM, resulting in a large BET-surface area of Iizaka Silt. The isothermal calorimetry showed that the SiltF had a strong filler effect on the cement hydration. The filler effect of Iizaka Silt was quantified by the relationship between the slope of the acceleration period and the total surface of solids. Iizaka Silt exhibited pozzolanic reactivity through the selective dissolution experiment. However, neither of them contributed to the compressive strength. It was found that the gel space ratio decreased with the substitution of OPC by Iizaka Silt, which resulted in low compressive strength.

  • 門田 浩史, 池尾 陽作, 竹内 勇斗, 新 大軌
    2023 年 77 巻 1 号 p. 172-180
    発行日: 2024/03/29
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル フリー

    本研究により空気中で炭酸化した再生細骨材を使用したモルタルは圧縮強度が増加し乾燥収縮は低減するのに対し、水中で炭酸化した再生細骨材を用いたモルタルの圧縮強度は低下し乾燥収縮は増加することが判明した。原因解明を目的としてセメントペーストを再生細骨材と同等の条件で炭酸化して分析を行った。その結果、空気中で炭酸化した場合は炭酸化前よりセメントペーストの弾性率が増加したのに対し、水中で炭酸化した場合はCaイオンの溶出により弾性率が低下することが判明した。水中で炭酸化した再生細骨材は骨材表面のセメントペーストの弾性率が低下したため、圧縮強度が低下し乾燥収縮が増加したと推定された。

  • 伊藤 洋介, 河辺 伸二, 池田 悠人
    2023 年 77 巻 1 号 p. 181-188
    発行日: 2024/03/29
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル フリー

    電波干渉による通信障害を防ぐため、建築物での大量使用に適した、作製が容易で安価な平板形状の広帯域電波吸収体が求められる。そこで、電気炉酸化スラグと発泡スチロールビーズを骨材としたモルタルを硬化前に加振して広帯域電波吸収体を作製する。本研究では骨材である電気炉酸化スラグと発泡スチロールビーズの混合比を変更することでフロー値、骨材分布の状況および電波吸収性能に及ぼす影響を明らかにする。これにより、測定の範囲内において発泡スチロールビーズの割合を増加することで、モルタルのフロー値が低くても加振時に骨材が流動しやすくなるため、より低い水セメント比で広帯域電波吸収体が作製できる可能性があると分かった。

  • 胡桃澤 清文
    2023 年 77 巻 1 号 p. 189-196
    発行日: 2024/03/29
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル フリー

    高炉セメントセメントペースト硬化体の反応性を高める添加剤として亜硝酸カルシウムが挙げられるが、亜硝酸カルシウムを混和した高炉セメントの反応の温度依存性に関する検討はほとんどなされていない。そこで本研究では、亜硝酸カルシウムを加えた高炉スラグセメントの反応の温度依存性を明らかにすることを目的とした。初期の反応量を測定するためにカロリーメーター測定、反射電子像によるセメントおよび高炉スラグの反応率測定、XRDによる鉱物の測定を行った。その結果、亜硝酸カルシウムを加えることによって初期の高炉スラグセメントの反応は高まったが、35℃養生においてはその影響は高くないことが示された。また、亜硝酸カルシウムを加えた試料のセメントおよび高炉スラグの反応に関するみかけの活性化エネルギーは無混和のものに比べて低下することが明らかとなった。

  • 後藤 壮, 桐野 裕介, 兵頭 彦次
    2023 年 77 巻 1 号 p. 197-205
    発行日: 2024/03/29
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル フリー

    脱炭素社会の実現に向けて、セメント産業では混合材の利用が検討されている。一方、代表的な混合材である高炉スラグの発生量は今後減少することが予想されている。そこで本研究では、石灰石微粉末を用いて、高炉セメントの一部を置き換えた混合セメントのモルタル物性とその影響要因に関する検討を行った。その結果、石灰石微粉末の混合により、流動性の向上、凝結の短時間化および初期強度発現性の向上が確認され、混合率が10%までであれば28日圧縮強さおよび水分浸透速度係数は同等程度に維持できることが判明した。また、圧縮強さは空隙率が支配因子であったものの、水分浸透速度係数は空隙構造の複雑さについても考慮する必要が示唆された。

  • 田中舘 悠登, 前田 拓海, 樋口 隆行, 荒木 昭俊
    2023 年 77 巻 1 号 p. 206-212
    発行日: 2024/03/29
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル フリー

    高炉スラグ微粉末(GGBS)の置換率が異なり蒸気養生を施したモルタルの強度発現性におけるカルシウムサルホアルミネート系早強材(EA)が及ぼす影響について検討した。EAの添加により、GGBS置換率に関わらず蒸気養生終了直後の脱型時の圧縮強度は増加する結果となった。EAの添加による脱型時の圧縮強度の増加量に及ぼすGGBS置換率の影響は小さい結果となった。強度増加の要因としては、エトリンガイト(AFt)等の水和物の生成による結合水量の増加によるものと推察される。材齢28日時点においてEAの添加による圧縮強度の低下は見られず、GGBS置換率25~75%では圧縮強度の増加が確認され、細孔構造の緻密化が確認された。

  • 須田 裕哉, 石底 健太郎, 富山 潤
    2023 年 77 巻 1 号 p. 213-221
    発行日: 2024/03/29
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル フリー

    近年、カーボンニュートラルの実現の観点から混合セメントのより一層の利用が求められている。一方で、混合セメントは普通ポルトランドセメントに比べて中性化が早いという点が挙げられる。本研究では収縮低減材料および反応性MgOを試製した高炉セメントC種に添加することで、セメント硬化体内における気体の拡散に対する抵抗性と中性化進行を評価した。その結果、混合セメントに収縮低減剤および反応性MgOを添加すると中性化抑制に効果があることが分かった。また、反応性MgOを添加した供試体では空隙率の増加をMgOの炭酸化により抑制したことで気体の拡散に対する抵抗性が向上し、これらが中性化の進行を抑制した要因と推察された。

  • 小川 啓悟, 橋本 千宙, 五十嵐 豪, 丸山 一平
    2023 年 77 巻 1 号 p. 222-230
    発行日: 2024/03/29
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル フリー

    コンクリート中の液水移動を可視化するため、乾燥状態にあるコンクリートに対して一面から水分を浸漬した際のコンクリートの状態変化を、対象物表面の微細な変形を検出可能なデジタル画像相関法を用いて可視化した。変形量から主ひずみ分布の経時変化を得ることで、セメントペースト部での乾燥収縮及び液水浸透を原因とする膨潤を示す変形を可視化した。セメント系材料への液水浸透を示す吸水量及び浸透深さと時間平方根との間での線形関係の逸脱を確認し、コンクリートの骨材スケールでの分析においても、セメントペーストの吸水膨張が水分移動の特異性を生じさせることを間接的に示した。

コンクリートの試験・評価
  • 星 健太, 住吉 裕次郎, 小池 耕太郎, 森 寛晃
    2023 年 77 巻 1 号 p. 231-239
    発行日: 2024/03/29
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル フリー

    近年、コンクリート構造物の新たな検査手法の一つとして、近赤外分光法の適用が検討されている。この手法は、分析試料のサンプリングが不要な非破壊分析手法であり、原位置でセメント水和物の検出が可能である。本研究では、コンクリートの硬化過程評価への本手法の適用を目的とし、凝結時間試験等の従来手法との比較検討を行った。その結果、セメント水和物の吸収波長域における近赤外線スペクトルの経時変化と、水和発熱速度および水酸化カルシウム生成量の経時変化に対応関係がみられた。また、統計解析等によりスペクトルからセメント水和物による吸収の影響を抽出することで、凝結時間や圧縮強度を予測できる可能性があると考えられた。

  • 大山 和哉, 上原 典香, 田邉 駿, 五十嵐 心一
    2023 年 77 巻 1 号 p. 240-247
    発行日: 2024/03/29
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル フリー

    AEコンクリートおよび高吸水性ポリマー混入コンクリートのスケーリング試験を実施し、高吸水性ポリマーのスケーリング低減効果を確認した。コンクリート断面の気泡と高吸水性ポリマー粒子の直径分布から3次元の粒度分布を推定し、粒子表面から一定の距離内にあるセメントペースト体積の全セメントペースト体積に対する割合を、保護範囲による被覆率と定義した。その結果、大きなスケーリング抵抗性を発揮しながらも、高吸水性ポリマー粒子の同一距離での被覆率は気泡よりも著しく小さく、高吸水性ポリマーによる耐凍害性の改善を、従来の距離を特性値とする保護領域の考え方だけで説明することは適切ではないことが示唆された。

  • 永田 淳也, 服部 晋一, 寺澤 広基, 鎌田 敏郎
    2023 年 77 巻 1 号 p. 248-256
    発行日: 2024/03/29
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル フリー

    本研究では、電磁パルス法を用いた接着系あと施工アンカー部の施工完成度の評価に有効な評価指標を解析的に把握することを目的とした。まず土木学会の指針を参考にして施工完成度の高いアンカー部を定義し、母材コンクリートの弾性係数をパラメータとして、評価に有効な評価指標を解析的に検討した。動磁場解析より得られた磁場分布に基づき電磁力を分布入力し、衝撃応答解析を行うことでボルト、母材コンクリートの振動応答を算出した。その結果、ボルト頭部で受信した場合の周波数成分比は、コンクリートの弾性係数E=25kN/mm2以上でほぼ一定の値を示し、充填不良を有する場合とも明確な差があることから、施工完成度評価の指標として有効であることを明らかにした。

コンクリートの物性
  • 久保田 雅也, 斎藤 豪, 北川 遥喬, 佐伯 竜彦
    2023 年 77 巻 1 号 p. 257-264
    発行日: 2024/03/29
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル フリー

    本研究では、結晶形態の異なる3つのエトリンガイトを合成し、合成時および加熱脱水後、再水和後における結晶構造の変化について検討した。また熱履歴前後のエトリンガイトのXRDピークを分析し、SEMにより結晶形態の観察を行った上で、FT-IRやTG-DTA、27Al-MAS NMRにより分子の結合状態を分析した。その結果、水和物の結晶形態は合成時の形態に関わらず、加熱脱水および再水和によって粒状に変化することが確認された。また、加熱脱水および再水和により分子の結合状態に変化が生じたが、結晶形態によってその変化に差異が生じることがわかった。以上より、エトリンガイトの結晶形態と結晶構造の変化のしやすさは密接に関係するものと結論付けた。

  • 茶林 敬司, 原 百花, 新見 龍男, 新 大軌
    2023 年 77 巻 1 号 p. 265-272
    発行日: 2024/03/29
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル フリー

    鉱物組成を調整した低温焼成型セメントを使用したコンクリートの強度と発熱性状について検討した。圧縮強度の結果は、普通強度配合の場合は材齢3日まで、高強度配合の場合は材齢28日までOPCと同等の強度発現性を示した。これはC4AFの増量によりカルシウムアルミネート系の水和物が増加したため、それが材齢初期における強度発現に寄与したと考えられる。一方、断熱温度上昇量はOPCに比べて低い値を示した。その要因は、OPCに比べて発熱の大きいC3Aが少なく、増量させたC4AFは発熱量が比較的小さいためであると推察される。

  • 藤倉 裕介, Sanjay PAREEK
    2023 年 77 巻 1 号 p. 273-281
    発行日: 2024/03/29
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル フリー

    本研究では、高圧かつ高濃度のCO2環境下における普通コンクリートの炭酸化進行の評価方法を構築する目的で、Fickの拡散式に基づく炭酸化進行のモデル化を行った。モデルの検証のため、コンクリートの配合や炭酸化開始材齢が異なる試験体を作製し、CO2濃度100%、0.5MPa及び1.0MPaの圧力下で促進炭酸化試験を行った。炭酸化試験の期間と炭酸化深さ、炭酸化速度や炭酸化に伴う質量変化の実験結果について、モデルにより算定した結果と比較した。その結果、モデルにより算定した炭酸化速度係数や質量変化率は実験値とおおよそ一致し、本モデルにより炭酸化進行の評価が可能であることを確認した。また、炭酸化の進行に伴って炭酸化度や炭酸化速度係数が減少している可能性が考えられ、炭酸化進行のモデルに反映させるとともにメカニズムの更なる解明が必要であることが分かった。

  • 丸田 浩, 櫨原 弘貴, 添田 政司
    2023 年 77 巻 1 号 p. 282-289
    発行日: 2024/03/29
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル フリー

    本研究では、施工工程により空気量が減少したことを想定したコンクリートにおいて、固形パラフィンのエマルジョンを混和した場合の凍結融解抵抗性およびスケーリング抵抗性への影響を検討した。その結果、固形パラフィンのエマルジョンを混和した場合は凍結融解抵抗性が向上し、塩化物イオン供給環境下におけるスケーリングの改善効果が認められた。また、スケーリング試験終了後の試験体を用いて塩化物イオン濃度を測定した結果、固形パラフィンのエマルジョンを混和することにより、凍結融解のサイクルの条件によっては、その評価が異なることが確認された。

  • 渡邉 清信, 廣藤 義和, 川崎 昭郎, 福井 信行
    2023 年 77 巻 1 号 p. 290-298
    発行日: 2024/03/29
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル フリー

    近年、構造物は耐久性や耐震性の向上が更に要求されるようになった。この要求からコンクリートは高強度化が進んで粘性が増す傾向となり、また、配筋は高密度な状況が多くなり、コンクリートを密実に充填することが難しい状況が多くなった。他方、環境負荷低減及び天然資源保護の観点からJIS A 5011-4:2018に規格化されている電気炉酸化スラグ細骨材を用いてコンクリートの流動性を向上させ、打込み作業の合理化と作業性向上、高密度な配筋箇所への充填性改善から躯体品質の向上を目的とし検討を進めてきた。本報の実験範囲では、材料分離を考慮した場合、電気炉酸化スラグの使用量は細骨材の一部として40%置換まで利用可能であることを確認した。

  • 山地 功二, 橋本 親典, 藤原 京介, 渡邉 健
    2023 年 77 巻 1 号 p. 299-307
    発行日: 2024/03/29
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル フリー

    締固め時のコンクリートの伝播加速度の測定は従来有線加速度計による測定手法が大多数であり、無線ICタグを使用した手法は皆無である。本研究では、IoT技術を活用したワイヤレスの静電容量式加速度センサ付き無線ICタグを用い、プレキャストコンクリートの型枠内に充填されるフレッシュコンクリートの伝播加速度を計測、定量化した。計測された加速度はスランプおよびスランプフロー値に依存しない。また製品形状および締固め充填高さ等の差異に関係なく、型枠に設置されている外部振動機近傍は大きく、遠方は小さく、加振位置からの減衰作用と考えられる。

耐久性
  • Luge CHENG, Naohiko SAEKI, Ryo KURIHARA, Ippei MARUYAMA
    2023 年 77 巻 1 号 p. 308-316
    発行日: 2024/03/29
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル フリー

    The microstructure evolution of cement paste along the carbonation depth under different RH conditions (23-80%) was characterized using SEM image analysis, complementing the phase quantification of each depth by XRD. From the microstructure analysis of binarized SEM images used to determine local porosity, a sudden reduction of local porosity occurred from the non-carbonated zone to the carbonated zone, and the lowest porosity was observed at the carbonation front. According to the ratios of macro-pores and microcracks to the total voids along the carbonation direction, calcium carbonate tends to precipitate in the microcracks, which could also explain the lowest ratio of microcracks occurring at the carbonation front. At low RH (23%) conditions, the ratios of microcracks and pores are similar to the non-carbonated zone because of the microcracks newly formed from the connection between the pre-existing microcracks by decalcification of C-S-H and remaining unfilled pores.

  • 参納 千夏男, 伊藤 始, 安藤 陽子, 鳥居 和之
    2023 年 77 巻 1 号 p. 317-325
    発行日: 2024/03/29
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル フリー

    本研究では、太陽光パネルガラスを細骨材として使用した場合のアルカリシリカ反応(ASR)の特徴とフライアッシュによるASR抑制効果を促進膨張試験と顕微鏡観察により評価した。その結果、ASRによるひび割れは、ガラス破砕時に生じた潜在的なひび割れに沿ってゲル化することにより生成すること、膨張を生じたひび割れ内部のASRゲルのCaO/(SiO2+Na2O)比は0.2程度と低いことが確認された。一方、フライアッシュを混和した場合、ガラス粒子内部のひび割れにおけるASRゲル化はほとんど認められず、膨張が抑制されていたことが確認された。

  • 吉田 夏樹, 澁井 雄斗
    2023 年 77 巻 1 号 p. 326-334
    発行日: 2024/03/29
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル フリー

    エトリンガイトの遅延生成(DEF)の抑制対策として、フライアッシュ(FA)および高炉スラグ微粉末(BFS)の有効性が報告されている。本研究では、EPMAで取得した多点の面分析データを解析し、エトリンガイト(Ett)およびモノサルフェート(Ms)の分布状況を可視化した。DEF膨張したセメント系では、内部C-S-Hと外部C-S-Hの境界にEttが点在していた。FA混和系は内部C-S-H周囲にEttは認められず、多くのFA粒子内にMsやEttが生成した。FA粒子に硫酸イオンが消費される効果が加わり、膨張は抑制されると推察した。BFS混和系はMsが安定的に生成し、膨張に寄与するEttは認められなかった。

  • 澁井 雄斗, 吉田 夏樹
    2023 年 77 巻 1 号 p. 335-343
    発行日: 2024/03/29
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル フリー

    コンクリートの内部膨張による劣化のうち、アルカリシリカ反応(ASR)に加えて、近年、遅延エトリンガイト生成(DEF)が注目されている。劣化の過程でASRとDEFが化学的に相互作用し反応を助長しあうと示唆されているが不明な点が多い。本研究では、コンクリート試験体中でASRとDEFの複合劣化を実験的に再現し、膨張率の測定、断面観察・元素分析を行った結果、ASRとDEFがそれぞれ単独で生じた場合と比較して、複合的劣化では膨張率が必ずしも大きくならないことが確認された。また、アルカリ濃度より算出したpHと膨張率の変化には相関があり、pH低下が緩やかなほど膨張率も緩やかに大きくなり、pH低下が急なほど膨張率も急激に大きくなることが確認された。

  • 菅原 典大, 宮里 心一, 斎藤 豪, 鈴木 一帆
    2023 年 77 巻 1 号 p. 344-351
    発行日: 2024/03/29
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル フリー

    塩害では鉄筋の不働態皮膜が破壊し、腐食が進行する。またアルカリシリカ反応(ASR)では骨材が膨張し、ひび割れが生じる。またそれらの予防策としてフライアッシュ(FA)の混和が挙げられる。本研究では、両者の複合劣化を対象に、コンクリート内部に埋設された鉄筋の腐食速度、およびFA混和の防食効果を評価した。すなわち、塩害の単独劣化および塩害とASRの複合劣化が生じ、加えてFA混和した供試体を湿潤気中に暴露し、膨張率や鉄筋腐食速度を測定した。また、ひび割れ観察、ゲルフルオレッセンス法、細孔径分布、コンクリート抵抗およびカソード分極曲線により、塩害とASRおよびFA混和が鉄筋腐食に及ぼす影響を考察した。以上の結果、水が直接に供給されない環境では、ASRゲルにより酸素供給が阻害され腐食速度が抑制されること、FA混和によってコンクリート組織が致密になり腐食速度が抑制されることを明らかにした。

  • 西 陸登, 齋藤 俊克, 出村 克宣
    2023 年 77 巻 1 号 p. 352-359
    発行日: 2024/03/29
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル フリー

    本研究では、吸水調整材(WACM)塗布コンクリート供試体、WACM塗布による下地処理の後、ポリマーセメントモルタル(PCM)で被覆したコンクリート供試体について塩化物イオン浸透試験を行い、WACM塗布による下地処理と製造業者が定める範囲内で変化させたその塗布量がPCM被覆コンクリートの塩化物イオン浸透抑制効果に及ぼす影響について検討している。その結果、WACMの塗布はコンクリート表層部に塩化物イオン浸透抑制効果を付与し、下地処理のためのWACM塗布とPCM被覆の相乗効果によって、PCM被覆コンクリートへの塩化物イオン浸透が抑制され、その抑制効果はWACMの塗布量の増加に伴い向上する。

  • 齊藤 準平
    2023 年 77 巻 1 号 p. 360-368
    発行日: 2024/03/29
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル フリー

    弾性限度内外の圧縮応力を継続付与したモルタルの塩分浸透特性を調べるために、応力強度比(σc/f’c)=0、0.15、0.35、0.50、0.60の圧縮応力を継続付与したモルタル供試体に対し、見掛けの拡散係数の算出、残留ひずみの計測、内部空隙状況の把握を行った。その結果、圧縮応力を継続付与した場合の拡散係数は、弾性限度付近まで低下しその後は上昇に転じること、弾性限度を超えるとσc/f’c=0.50程度で無付与状態の拡散係数と同程度になることがわかった。弾性限度以降の拡散係数の上昇の要因として、微細ひび割れの発生と細孔直径=100nm~5μmの細孔容積の増加が関係していることがわかった。

  • 花岡 温広, 胡桃澤 清文
    2023 年 77 巻 1 号 p. 369-376
    発行日: 2024/03/29
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル フリー

    CO2削減の観点から高炉スラグ微粉末やフライアッシュを混和した混合セメントを用いたコンクリート構造物が増加している。しかし、既往の研究において混合セメントコンクリートは普通ポルトランドセメントコンクリートと凍害劣化メカニズムが異なると指摘されている。そこで本研究では、異なるセメント種類にて作製したセメント硬化体を用いて、凍害劣化に及ぼす要因を定量的に明らかにすることを目的とした。その結果、セメント種ごとに凍結融解劣化抵抗性は異なり、空気量、気泡間隔係数および圧縮強度ではその違いを説明することはできなかったが、凍結水量や粗大な空隙量により凍害劣化の程度を説明することが可能であることが示された。

  • Yutaka TAKASHINA, Lin SHEN
    2023 年 77 巻 1 号 p. 377-385
    発行日: 2024/03/29
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル フリー

    Frost scaling damage to concrete structures is affected by complex combinations of multiple factors. Therefore concrete scaling mechanism is not yet completely understood. This study examines concrete’s damage exposed to deicing chemicals within dilution water. The existence of the dilution water is greatly connected with salt frost damage. The neural network’s analysis is effective for clarification of the relationship among complicated factors. This study revealed an important relationship between scaling damage and dilution water. A scaling damage evaluation was confirmed using a thermography’s technique. And concrete surface irregularity is grasped by three-dimensional photograph digital measurement systems.

  • 本合 弘樹, 安藤 陽子, 大坪 祐紀, 川瀬 宏文
    2023 年 77 巻 1 号 p. 386-393
    発行日: 2024/03/29
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル フリー

    船頭平閘門は1902年に建造された水路閘門である。石材の目地に使用されたモルタルの材料を偏光顕微鏡下で観察した結果、ボート型のⅡ型ビーライトが多く含まれる竪窯焼成のセメントが使用されていたことから、モルタルは建造当時のものと考えられる。このようなセメントは水和が緩慢であるため、セメントペーストへアルカリが継続的に供給されて中性化が抑制された反面、ASRも継続することになった。EDS定量分析の結果、ASRゲルは骨材内部では未だにアルカリ濃度が高く、膨張余力を有していたが、セメントペースト中には粗大な空隙が多く、そこにASRゲルが滲出して骨材に膨張ひび割れがほぼ生じなかったことで、現在に至るまで健全であると考えられる。

高強度・高流動コンクリート
繊維補強コンクリート
  • 木村 貴裕, 佐藤 あゆみ, 高 慧
    2023 年 77 巻 1 号 p. 418-424
    発行日: 2024/03/29
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル フリー

    本研究では、鋼繊維と3種類の有機繊維を混入した超高強度繊維補強コンクリートのマトリックス強度が各種繊維補強効果に及ぼす影響について実験的検討を行った。その結果、圧縮強度の増加とともに曲げ強度が増加し、同じ圧縮強度で比較したとき、鋼繊維とPBO繊維を用いた場合の曲げ強度は、ポリエチレン繊維とポリビニルアルコール繊維を用いた場合よりも大きくなった。これは、使用繊維の弾性率の大小が影響していると考えられる。また、繊維種別毎に曲げタフネスが最大となる圧縮強度が異なることが認められ、マトリックスが超高強度になった場合、曲げタフネスで示される繊維補強効果が低下する危険性があることが示唆された。

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