本論文はコンクリート中のひび割れにおける、通水開始初期の大幅な通水量抑制の主要因として考えられる気泡成長のメカニズムに関して、土質分野の既往研究で指摘されている供給水の過飽和という平衡論の観点から実験的に検証するとともに、気泡の成長速度に着目して、速度論の観点から実験的考察を行い、気泡の周りを水が流れることで気液界面を通じた気体分子の移動速度が加速され得ることを示した。さらに気泡成長の要因となる供給水の過飽和を解消することによって、流路断面を減少させるような巨視的な気泡の発生を排除した通水試験についての検討を試みた。その過程で通水量抑制には巨視的な気泡の発生による流路断面の減少だけでなく、別のメカニズムも存在する可能性が示唆された。