船頭平閘門は1902年に建造された水路閘門である。石材の目地に使用されたモルタルの材料を偏光顕微鏡下で観察した結果、ボート型のⅡ型ビーライトが多く含まれる竪窯焼成のセメントが使用されていたことから、モルタルは建造当時のものと考えられる。このようなセメントは水和が緩慢であるため、セメントペーストへアルカリが継続的に供給されて中性化が抑制された反面、ASRも継続することになった。EDS定量分析の結果、ASRゲルは骨材内部では未だにアルカリ濃度が高く、膨張余力を有していたが、セメントペースト中には粗大な空隙が多く、そこにASRゲルが滲出して骨材に膨張ひび割れがほぼ生じなかったことで、現在に至るまで健全であると考えられる。