鯨類の分布は餌生物に規定され、海表面水温、クロロフィルa濃度、海底傾斜、水深といった海洋環境に大きく依存していると推論されてきた。本研究では、北海道大学鯨類研究会が通年、津軽海峡で実施している鯨類目視調査の記録を、調査区画ごとに集計してカマイルカの遭遇率ならびに集中度を求め、一般化線形混合モデル(GLMM)を用いて分布と海洋環境の関係について検討した。その結果、カマイルカは湾内の1から2箇所に集中していることが示された。GLMMからカマイルカが多く分布する海域は低いクロロフィルa濃度、低い海表面水温を特徴に持つことを示された。既存の研究から、鯨類高いクロロフィルa濃度を示す海域に集中することが示唆されているが、本研究の結果はこれとは逆の傾向を示した。また、カマイルカはGLMMで選ばれた特徴をもつ海域とは関係なく集中している傾向があることが認められた。これらのことから、津軽海峡のカマイルカは海洋環境によって分布を規定されているわけではないことが示された。