抄録
薩摩の上井覚兼が書いた日記である『上井覚兼日記』は、自筆が残されている貴重な史料である。
そこには茶湯会尺という言葉があり、茶の湯と酒宴が同日に行われ、武士たちの慰みとなっていた。
また茶会そのものは現代の茶会とあまりかわらない手順で行われてもいた。ただし茶会の進行は記述されているが、茶道具等についての詳細な記録はなく、これまで見てきた茶会記の記録を疑わざるを得ない。また茶的と称する弓矢を使用した遊芸も行なわれていた。茶の湯が、これまで考えられていた以上に多様な形式で楽しまれていた可能性を考える必要がある。