CHEMOTHERAPY
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慢性複雑性尿路感染症に対するMezlocillinとCarbenicillinの二重盲検法による臨床比較試験
熊本 悦明他
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1980 年 28 巻 10 号 p. 1308-1331

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抄録

尿路感染症に対するMezlocillin (MZPC) の有効性と安全性を評価するため, Carbenicillin (CBPC) を対照薬として, 多施設問での二重盲検法による比較試験を行った.
対象は尿路に基礎疾息を有する成人の慢性複雑性尿路感染症の入院患者で, 薬剤投与前の尿中白血球敬が5コ/hpf以上で, かつ尿中生菌数が104コ/ml以上のものとした。投与期間は5日間とし, 効果の判定はUTI研究会の薬効評価基準に準拠して行なった。
試験薬剤の投与された総症例は203例で, そのうち156例 (MZPC投与群81例, CBPC投与群75例) について効果の判定が可能であった。
総合臨床効果はMZPC投与群81例中, 著効10例, 有効20例, 無効51例で有効率37.0%であるのに対し, CBPC投与群の75例では, 著効5例, 有効13例, 無効57例で有効率は24.0%であり, MZPC投与群の有効率が高く, 有意差傾向 (P<0.10) を認めた。
細菌学的効果では, 菌の消失率はMZPC投与群で58.0%, CBPC投与群で46.1%であり, MZPC投与群での消失率が高く, 有意差を認めた (P<0.05)。
副作用症状については, MZPC投与群で41%CBPC投与群で4.9%の発現率であり, 両薬剤群間で有意差はなく, 臨床検査値の異常についても, 発現率で両薬剤群間に有意差は認められなかった。
以上から, MZPCは, 慢性複雑性尿路感染症の治療上, 有用な薬剤であると考えられた。

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