抄録
ラットにおけるCinoxacin (CINX) の体内動態について検討を行なった。CINXの主要消化管吸収部位は小腸上部および中部で, 経口投与後, 速やかに, ほとんど完全に吸収された。
主排泄経路は尿中への排泄で, 静注, 経口投与後, 投与量の大部分が高濃度で尿中へ移行し, 他の排泄経路の寄与は小さかった。胆管カニュレーションラットにおいては, わずか2%程度の胆汁中排泄率が認められた。
経口投与後, 血漿中濃度は30分以内にピーク値を示し, その後速やかに減少し, 8時間ではピーク値の1/20, 24時間では検出限界以下であった。
ラット組織中濃度は, 血液と同様に30~60分でピーク濃度を示し, その後速やかに減少した。腎臓に最も高濃度の分布がみられ, 血液と同程度であった。他の組織では, 血漿の1/3以下の濃度であった。妊娠ラットにおいても雄性ラットと同様の分布を示し, 胎仔移行性は極めて低かった。
7回あるいは21回反復投与後のCINX血漿中濃度, 尿中排泄率は1回投与のそれと大きく変わらず, 反復投与によって, 排泄の遅延や体内への蓄積などの著明な変化は認められなかった。
CINXおよび14C-CINXを投与した時の比較, あるいは尿中代謝物の検討の結果より, ラットにおいては, CINXはほとんど代謝されることなく未変化体として存在することが明らかになった。