1981 年 29 巻 11 号 p. 1304-1317
新しく開発された局所投与用皮膚真菌症治療薬Tolciclateについて, Tolnaftate, Clotrimazoleを比較薬物として真菌学的研究を行った結果, 次のような成績が得られた。
1) Tolciclateは子のう菌, 不完全菌類に対して良好な抗菌力を示し, 子のう菌類に対して, Tolnaftateよりも優れ, Clotrimazoleとほぼ同等であった。また不完全菌類に対してTolnaftateと同等であり, Clotrimazoleより優れていた。
2) 臨床分離T. mentagrophytes, T. interdigitaleに対して, Tolciclateは他の2薬物よりも優れていたが, T. rubrumに対してはTohaftateより劣り, Clotrimazoleより優れていた。またTolnaftateとの間に相関関係は認められたが, Clotrimazoleとの間に相関性は認められなかった。
3) 抗菌力に及ぼす諸因子の影響では, 培地pH, 馬血清添加, 接種菌量により影響を受けたが, 培養時間では影響されなかった。
4) 試験管内耐性獲得試験では, 3薬物ともに耐性の上昇は認められなかった。
5) 生菌数に及ぼす影響では, 3薬物ともに, A. niger, T. mentagrophytesに対して殺菌的に作用した。
6) 抗菌作用機序の検討では, カリウムイオンの漏出を認めたが, 直接的な細胞膜作用を有するものではなかった。
7) 形態変化については, 作用濃度により, 膨化胞子や異常分芽後, 菌糸体を伸ばしていく像が観察できた。