呼吸器感染症に対するApalicillin (APPC) とCarbenicillin (CBPC) の治療効果ならびに両薬剤の副作用の客観的な比較検討を目的として, 全国30施設において, 急性および慢性呼吸器感染症患者187例にAPPCあるいはCBPCそれぞれ1回2gずつ, 1日2回, 原則として14日間点滴静注を行ない, 治療効果, 副作用, 有用性の両薬剤群間での比較をwell controlled studyにより実施した結果, 以下の成績を得た.
1) 投薬187例中, プロトコール不適合例を除外した159例 (APPC投与79例, CBPC投与80例) の患者背景因子では, APPC投与群に軽症例が, CBPC投与群に重症例が多く, また, 高体温症例がAPPC投与群に多く, 重症度および体温について両薬剤群間に推計学的に有意の偏りが認められた。
2) APPC投与79例とCBPC投与80例の臨床効果は, 著効4例: 4例, 有効62例: 40例, やや有効8例: 19例, 無効4例: 16例, 判定不能1例: 1例, 有効率83.5%: 55.0%で, 両群間に有意差 (P<0.001) が認められた。
肺炎および肺化膿症症例66例に対する臨床効果については, 両薬剤群間に有意差は認められないが, 慢性気道感染症とその急性増悪の症例93例に対する臨床効果については, 両群間に有意差 (APPC>CBPC) が認められた。
対象患者を重症度で層別して, 両薬剤の有効性を比較すると, 重症例では有意差が認められないが, 中等症および軽症の症例ではともに有意差 (APPC>CBPC) が認められた。
3) 細菌学的効果については, 両薬剤群問に有意差を認めなかった。
4) 慢性気道感染症とその急性増悪症例において, APPC投与群の発熱, 喀痰量, 赤沈値の治療に伴う改善が, CBPC投与群よりすぐれていた。
5) 副作用出現例はAPPC投与群93例中8例, CBPC投与群89例中9例で有意差はなく, 臨床検査値異常はAPPC投与群92例中12例に対してCBPC投与群89例中21例で, とくにBUN上昇がAPPC投与群0, CBPC投与群6例と, 有意差が認められた。
6) 臨床効果と副作用・臨床検査値異常を基に判定した有用性についても, 両薬剤群間に有意差 (APPC>CBPC) が認められた。
以上の成績から, 慢性呼吸器感染症およびその急性増悪に対して, APPC1日4gはCBPC1日4gよりすぐれた治療効果を挙げ得るものと考えられる。
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