CHEMOTHERAPY
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皮膚・軟部組織感染症ならびに重症熱傷の感染に対するTicarcillinの効果の臨床的検討
相川 直樹山本 修三茂木 正寿安尾 信内藤 千秋行岡 哲男須藤 政彦
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1981 年 29 巻 7 号 p. 725-732

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抄録

皮膚・軟部組織感染症ならびに熱傷患者の感染に対するTicarcillin (TIPC) の効果を臨床的に検討した。
皮膚・軟部組織感染症は5例で, 他薬剤による治療が無効あるいは臨床的に重篤な症例であった。TIPCが有効であったのは3例で, いずれもGentamicin (GM), あるいはDibekacin (DKB) が無効であったP. aeruginosa, Providencia, Bacteroidesなどの菌は消失, 炎症所見も改善した。熱傷患者は3例で.うち2例はEnterobacterによる敗血症であったが, TIPCの単独使用で血液培養は陰性化, 臨床症状も改善し救命し得た。無効例は3例あり, 臨床効果は合計すると, 有効5例 (63%), 無効3例 (27%) であった。細菌学的効果は, 分離した起炎菌22株中16株 (73%) が消失, 菌種別内訳では, P. aeuginosaは5株中3株, Enterobacterは3株中2株, E. coliは2株すべてが消失, 嫌気性細菌も3株すべてが消失した。8例中3例に本剤投与期間に一致して肝機能検査値の異常を認めたが, 他には本剤投与に関連した副作用は認めなかった。
今回の治験成績, ならびに本剤の広範囲な抗菌スベクトラム, P. aeruginosaに対する優れた抗菌力, 皮膚移行の特性および安全性の点を総合的に判断し, TIPCは難治性の皮膚・軟部組織感染症や熱傷患者の感染に対する有用な化学療法剤として評価に値するものと考えられた。

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