1984 年 32 巻 Supplement2 号 p. 239-252
新しいpenicillin系抗生剤のTA-058について, その抗菌力, 吸収・排泄ならびに臨床効果を検討し, 以下の結果を得た。
1) 抗菌力
臨床分離のE. coli, K. pneumoniae, Enterobacter属, C. freundiiなどに対するTA-058の抗菌力はABPC, CBPC, TIPCなどと同等か1~2段階優れたが, PIPCよりは多少劣った。P. mirabilisに対してはこれら4剤に比してかなり強力であったが, indole (+) Proleus属に} まこれらよりも劣った。P. aeruginosaに対してはCBPC, TIPCより優れるもののPIPCよりは劣る抗菌力であった。
2) 吸収・排泄
健康成人にTA-058を1,000mg1回静注すると, 5分後に平均94μg/ml, 1時間後に19.3μg/mlの血中濃度が得られ, 以後漸減して8時間後には0.44μg/mlとなった。血中半減期はα相で0.20時間, β相では1, 34時間であった。この際の尿中排泄は注射後2時間で平均3, 523μg/mlの尿中濃度が得られ, 8時間までに投与量の74.3%が尿中に回収された。また, probenecid併用による本剤の吸収・排泄への影響は殆ど認められなかった。
3) 臨床成績
尿路感染症3例にTA-058を使用し, 有効2例, 無効1例の結果が得られた。副作用として特に重大なものは認められなかった。