CHEMOTHERAPY
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半合成ペニシリン系抗生物質TA-058に関する細菌学的評価
西野 武志石井 信男谷野 輝雄
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1984 年 32 巻 Supplement2 号 p. 47-66

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抄録

新しく半合成されたペニシリン系抗生物質TA-058に関する細菌学的評価をCarbenicillin (CBPC), Piperacillin (PIPC) およびApalcillin (APPC) を比較薬として検討し, 以下の成績を得た。
1. TA-058は教室保存のグラム陽性菌, グラム陰性菌群に広い抗菌スペクトラムを有していたが, その抗菌力はCBPCと同等でありPIPCおよびAPPCより劣っていた。
2. 臨床分離株に対する抗菌力について検討したところE. coli, H. influenzae, P. mirabilisに対して優れた抗菌力を示し, P. aeruginosaに対してはCBPCと同等か若干劣っていた。
3. E. coli, P. aeruginosaに対する殺菌作用を検討した結果, E. coliの場合, TH-058はMIC以上の濃度で2時間後までは対照ペニシリン剤よりも優れた殺菌作用を示し, とくに薬剤作用時の菌量が高い場合 (約108cells/ml) に, TA-058の殺菌作用はPIPCやAPPCよりも優れていた。P. aeruginosaの場合, 低菌量ではいずれの薬剤も同様であったが, 菌量が高いとTA-058の殺菌力は, CBPCより劣ったがAPPCと同様でPIPCより優れていた。
4. マウス実験的感染症に対する治療効果をE. coli, K. pneumoniae, P. aeruginosaを用いて検討した結果, TA-058はCBPC, PIPCおよびAPPCに比べ非常に優れた治療効果を示し, とくに接種菌量が多い場合CBPC, PIPCおよびAPPCに比べて優れていた。
5. 感染マウスを用い血清および腹水内濃度について検討したところ, TA-058はPIPCに比べ良好な吸収, 分布を示した。

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© 社団法人日本化学療法学会
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