抄録
In vivoにおける薬効が優れているといわれる新しい合成ペニシリン剤TA-058の腹膜炎を中心とした腹腔内感染症について基礎的・臨床的研究を行った。
1) 腹腔ドレーンを挿入した2例において, TA-058 1g静注後の腹水中濃度を血中濃変ど比較検討した。1~2時間後に, それぞれ66.0μg/ml, 74.0μg/mlと最高腹水中濃度に達し, 6時間後も20.2μg/ml, 18.2μg/mlと高値を維持していた。
2) 腹膜炎18例, 腹腔内膿瘍6例, 腹膜炎術後腹壁創感染3例, 計27例に対してTA-058 1~2g 1日1~2回静注または点滴静注にて5~9日 (平均6.6日) 間投与した際の臨床的効果は, 著効5例, 有効13例, やや有効4例, 無効3例, 判定不能2例で有効果72.0%であった。細菌学的効果は, E.coli 87.5%, S. faecalis 83.3%, Bacteroldes spp.85.7%が消失したが, P. asruginosaが残存した。副作用は1例も認められなかった。
以上, TA-058は腹水中へも高濃度に移行し, 腹膜炎をはじめとする腹腔胸感染症に対して有用な薬剤の1つといえる。