抄録
新しいcephem系抗生物質ceftriaxone (CTRX, Ro 13-9904) につき産婦人科領域での抗菌力・吸収・排泄・経胎盤的胎児移行等の検討と産婦人科的感染症に対する臨床効果, 副作用, 有用性を検討し, 以下の結果を得た。
1. 抗菌力
産婦人科臨床分離株12種103株のMIC80はGPCL56~25μg/ml, GNBO.05~50μg/mlに分布したか, とくにS. aureus, S. epidermidis, E. coll., K. pneumoniae, Proteus sp., S. inurcescens, E. cloacaeに良い抗菌力を示した。
2. 吸収・排泄
1g静注後の血清中濃度は1時間値か75.0μg/ml, 8時間値が23.44μg/ml, 半減期8.1時間, 8時間内尿中排泄率35%で血中持続時間が長く, 排泄の遅いことが特徴的であった。
3. 臍帯血・羊水中移行
CTRX 1g, 静注後20分~7時間45分内に臍帯血清中に15.63~40.63μg/ml, 羊水中に2.15~23.44μg/mlの移行が認められ, 主な感染起因菌のMIC値を上まわる濃度が長時間にわたり得られた。
4. 臨床成績
産婦人科的感染症8例に対し1回191日2回7例, 1日1回1例に峰注または点滴静注し, 7例 (87.5%) に臨床効果を認め, 4例中3例 (75%) に細菌学的効果を認め, 副作用は少なかった。
以上の所見からCTRXの産婦人科的感染症に対する有用性を認めた。