北関東医学
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心筋梗塞における心筋の血流と交感神経分布に関する研究
舘野 円
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1992 年 42 巻 6 号 p. 565-575

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抄録
201Tl (タリウム) は心筋の血流分布に応じて心筋に取り込まれるのに対し, ノルアドレナリンの誘導体metaiodo-benzylguanidine (MIBG) は, 交感神経の分布を反映すると期待される.そこで虚血性心疾患患者に201Tlと123I標識MIBGを投与し, single photon emission CT (SPECT) 像を撮影したところ, ともに正常心筋に集積し, 梗塞部には集積しなかった.ただ, 123I-MIBGの欠損域は201Tlの欠損域よりも広いことが認められた.心筋の血流と交感神経の分布の違いの意義を追究するため, ラットに実験的に作成した心筋梗塞モデルを用いて, 125I-MIBGと201Tlの心筋分布をオートラジオグラフィで確認するとともに, 交感神経線維の分布を, 蛍光顕微鏡と電子顕微鏡で観察した.心筋梗塞発症後18時間以上経過したラットでは, 125I-MIBGと201TlClの分布は一致し, MIBGは心筋組織内カテコラミン顆粒の分布を反映していた.しかし梗塞発症6時間後のラットでは, 125I-MIBGの欠損域は, 201Tlと一致しない部分が見られ, 同部では交感神経varicosity内のカテコラミン顆粒が消失しているものの, 心筋・神経細胞の変性は認められなかった.123I-MIBGによる心筋シンチグラフイは, 心筋梗塞病変のカテコラミンの分布を忠実に反映しているため, 急性期の梗塞心筋における201TlとMIBGの分布の違いを生じるものと考えられた.
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