CHEMOTHERAPY
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CS-807の嫌気性菌に対する抗菌作用
渡辺 邦友加藤 直樹沢 赫代青木 誠上野 一恵
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1988 年 36 巻 Supplement1 号 p. 62-71

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抄録

新しい経口セファロスポリンCS-807とその活性体 (R-3763) のNa塩であるR-3746の嫌気性菌に対するin vitro抗菌作用をGAM寒天培地を用いる寒天平板希釈法で参考菌株38株および最近の臨床分離株152株を対象として検討した。またB.fragilis GAI-5562株を用い, ラットパウチ内感染モデルによりCS-807のin vivo抗菌作用をも検討した。
R-3746は, 対照としたT-2525と同等の嫌気性菌に対する抗菌スペクトラムおよび抗菌力を示した。R-3746はB.fragilisの産生するβ-lactamaseに対し, 不安定であるものの, Cefaclorよりはるかに安定で, B.fragilisに対する抗菌力もCefaciorより強力であることが認められた。R-3746のin vitro抗菌力は接種菌量により影響を受けたが, 試験にもちいる基礎培地の種類によっては影響を受けなかった。
ラットパウチ内に103CFU/ml接種されたあと, CS-807の20mg/kg 1日2回2日間の経口投与は, 24時間経過した対数増殖期にあるB.fragilisのその後の増殖に対し, 殆ど影響をあたえなかった。接種菌株に対するR-3746のMICは106CFU/ml接種で3.13μg/ml, 108CFU/回接種で100μg/mlであった。なお, この条件下で, パウチ内のR-3746濃度は最高値で2.0μg/ml (初回投与後6時間) であった。
CS-807を2mg/mouse ICR系マウスに5日間経口投与し, 盲腸内のC.difficileの異常増殖の有無を中止後1日目と5日目の2点で検討した。CS-807投与によっては中止後1日目にC.difficileの増殖が見られたが, 5日目には見られなかった。
CS-807は臨床材料からしばしば分離される嫌気性菌の大多数の菌種に良好な抗菌作用を示し, 好気性菌と嫌気性菌の混合感染症にその有用性が期待される。またCS-807の使用に際しては他のほとんどの化学療法剤と同様にC.difficileの出現にすべきであろう。

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