CHEMOTHERAPY
Online ISSN : 1884-5894
Print ISSN : 0009-3165
ISSN-L : 0009-3165
複雑性尿路感染症に対する7432-Sとセファクロルの二重盲検法による比較試験
熊澤 浄一他
著者情報
ジャーナル フリー

1989 年 37 巻 Supplement1 号 p. 644-666

詳細
抄録

新セフェム系経口抗生物質7432-S (一般名: ceftibuten) の複雑性尿路感染症に対する有用性を。cefaclor (CCL) を対象とする二重盲検比較試験により客観的に評価した。カテーテル非留置の複雑性尿路感染症を対象に, 7432-Sは1日300mg, CCL床1,500mgをいずれも3分割投与で5日間服用させ, UTI薬効評価基準 (第3版) により効果判定を行った。
成績は以下の通りであった。
総投与症例323例中薬効評価対象例は229例 (7432-S群118例, CCL群111例) であった。
2. 総合臨床効果の有効率は, 全症例では7432-S群61.0%(72/118) CCL群80.2%(89/111) であり有意にCCL群が高かったが, グラム陰性菌症例では7432-S群76.8%(53/69), CCL群79.7%(55/69) で, 両薬剤群間に有意差は認められなかった。
3. 細菌学的効果での菌消失率は, 7432-S群73.6%, CCL群82.7%で両薬剤群間に有意差は認められなかった。菌種別の内訳をみると.グラム陽性菌, 特にEnteroceccus faecalisでの菌消失率は有意にCCL群が高かった。グラム陰性菌の菌消失率では有意差は認められなかったが, Serratia marcescensの消失率は7432-S群が有意に高かった。
4. 副作用発現率は, 7432-S群160例中5例 (3.1%), CCL群161例中5例 (3.1%) で有意差は認められず, 副作用の内容でも特異なものは認められなかった。
5. 臨床検査値異常は, 7432-S群115例中5例 (4.3%), CCL群105例中2例 (1.9%) で両薬剤群間に有意差は認められず, その内容も軽度の肝機能異常のみであり特異なものは認められなかった。
以上の成績は, 7432-Sの複雑性尿路感染症に対する有効率はグラム陽性菌をも含めた全症例ではCCLより低かったが, 7432-Sが本来強い抗菌力を有しているグラム陰性菌による複雑性尿路感染症においてはCCLの1/5量でCCLと同程度の効果および安全性が期待できることを示している。

著者関連情報
© 社団法人日本化学療法学会
前の記事 次の記事
feedback
Top