CHEMOTHERAPY
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小児感染症患者におけるS-1108の安全性およびカルニチン動態
藤井 良知他
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1993 年 41 巻 6 号 p. 655-665

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抄録

肺炎, 気管支炎, 咽頭炎等の小児呼吸器感染症患者21名 (4~17歳) を対象に, ビバロィルオキシメチルエステルを有する経口セフェム薬S-1108を投与し, 血中, 尿中の遊離カルニチン, ビバロイルカルニチン, および血漿アシル/遊離カルニチン比の推移を調べた。同時に対照としてS-1108が投与さていない患者120名 (男児63名, 女児57名) の血漿遊離カルニチン, 総カルニチン濃度を測定し, 以下の結果を得た。
1. S-1108非投与対照患児の血漿遊離カルニチン, 総カルニチン濃度は, 各々42.8±9.5, 54.5±11.8nmol/mlを得, 正常範囲を推定した。
2. S-11082~6mg/kgを1日3回, 4~12日間投与すると血漿遊離カルニチンは投与量, 投与期間に応じて減少した。しかし投与終了後, 血漿遊離カルニチンは増加傾向を示し, 低投与量群 (6mg/kg/日) では3~4日で, 高投与量群 (16~18mg/kg/日) では1週間前後でそれぞれ正常値に復帰した。特に高投与量群で血漿遊離カルニチン濃度は最大投与前値の約20%まで有意に減少したが, 休薬後数日で投与前値に復帰し, カルニチン動態の可逆性が見い出された。
3. 二次性カルニチン欠損症の指標といわれる血漿アシル/遊離カルニチン比は各症例ともほぼ0.5以下で, 投薬前, 投薬中, 投薬後共に大きな変動はみられなかった。
4. S-1108投与全症例に, カルニチン欠損にもとつくと考えられる自他覚的症状および副作用は観察されなかった。
以上の結果よりS-1108投与にもとつくカルニチン動態に関しては標準用法, 用量の範囲内では安全で, かつ忍容性の高い薬剤であると考えられた。

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