CHEMOTHERAPY
Online ISSN : 1884-5894
Print ISSN : 0009-3165
ISSN-L : 0009-3165
新経口カルバセフェム剤loracarbefに関する細菌学的研究
山下 錦也辻 明良五島 瑳智子
著者情報
ジャーナル フリー

1993 年 41 巻 Supplement3 号 p. 10-22

詳細
抄録

Loracarbef (LCBF) は新しく開発された経口用のカルバセフェム剤でその側鎖はcefaclor (CCL) に類似している。本報告はLCBFのin vitroおよびin vivo抗菌力をCCL, cefprozil (CFPZ), cefixime (CFIX) と比較検討した成績である。その主な結果は下記の通りである。
LCBFはグラム陽性菌およびグラム陰性菌に対し広域の抗菌スペクトルを示し, 臨床分離グラム陽性菌に対する抗菌力はCCLと同等, CFIXより優れていた。腸内細菌科の菌種に対してはCFIXより劣るが, CCLと同等であった。Neisseria gonorrhoeaeに対してはCCL, CFPZより優れた抗菌力を示した。LCBFのStaphylococcus aureus, Escherichia coliに対する殺菌作用はCCL, CFPZに比べ, 同等かやや弱かった。またβ-lactamaseに対する安定性はCCLより安定で, 本剤のひとつの特性と考えられた。
マウス実験感染モデルに対するLCBFの治療効果は, S.aureus Smith全身感染モデルではCFIXより優れていたが, CCL, CFPZより劣っていた。E.coli C-11, Klebsiella pneumoniae 3 K-25感染に対してはCFIX, CCLに比べ劣るものの, CFPZと同等かやや優れていた。また, Streptococcus pneumoniae TMS 3を感染菌とした呼吸器感染, E.coli KU-3での上行性尿路感染ではCCLとほぼ同等の治療効果を示した。LCBFのマウス血中濃度, 臓器内濃度分布はCFPZと同等でCCLより良好な体内動態を示した。

著者関連情報
© 社団法人日本化学療法学会
前の記事 次の記事
feedback
Top