CHEMOTHERAPY
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41 巻, Supplement3 号
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  • 中根 たみ子, 井上 邦雄, 三橋 進
    1993 年 41 巻 Supplement3 号 p. 1-9
    発行日: 1993/08/30
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しいカルバセフェム系抗生物質loracarbef (LCBF) のin vitroにおける抗菌力, β-lactamaseに対する安定性について, cefaclor (CCL), cefdinir (CFDN), cefprozil (CFPZ) を対照薬剤として比較検討した。
    1) LCBFはグラム陽性菌に対し, CCLと同等あるいはそれを上回る抗菌力で, グラム陰性菌に対してはCCLと同等もしくはそれよりも優れた抗菌力を示した。
    2) LCBFはセフェム系抗生物質と同様の殺菌作用を示した。
    3) LCBFはCSaseおよびCXaseの一部を除く各種β-lactamaseに安定性を示し, またpenicillinase産生菌に対してCCLよりすぐれた抗菌力を有していた。
  • 山下 錦也, 辻 明良, 五島 瑳智子
    1993 年 41 巻 Supplement3 号 p. 10-22
    発行日: 1993/08/30
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Loracarbef (LCBF) は新しく開発された経口用のカルバセフェム剤でその側鎖はcefaclor (CCL) に類似している。本報告はLCBFのin vitroおよびin vivo抗菌力をCCL, cefprozil (CFPZ), cefixime (CFIX) と比較検討した成績である。その主な結果は下記の通りである。
    LCBFはグラム陽性菌およびグラム陰性菌に対し広域の抗菌スペクトルを示し, 臨床分離グラム陽性菌に対する抗菌力はCCLと同等, CFIXより優れていた。腸内細菌科の菌種に対してはCFIXより劣るが, CCLと同等であった。Neisseria gonorrhoeaeに対してはCCL, CFPZより優れた抗菌力を示した。LCBFのStaphylococcus aureus, Escherichia coliに対する殺菌作用はCCL, CFPZに比べ, 同等かやや弱かった。またβ-lactamaseに対する安定性はCCLより安定で, 本剤のひとつの特性と考えられた。
    マウス実験感染モデルに対するLCBFの治療効果は, S.aureus Smith全身感染モデルではCFIXより優れていたが, CCL, CFPZより劣っていた。E.coli C-11, Klebsiella pneumoniae 3 K-25感染に対してはCFIX, CCLに比べ劣るものの, CFPZと同等かやや優れていた。また, Streptococcus pneumoniae TMS 3を感染菌とした呼吸器感染, E.coli KU-3での上行性尿路感染ではCCLとほぼ同等の治療効果を示した。LCBFのマウス血中濃度, 臓器内濃度分布はCFPZと同等でCCLより良好な体内動態を示した。
  • 渡辺 邦友, 加藤 直樹, 武藤 吉徳, 田中 香お里, 田中 保知, 加藤 はる, 上野 一恵
    1993 年 41 巻 Supplement3 号 p. 23-30
    発行日: 1993/08/30
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Carbacephem系の薬剤loracarbef (LCBF) の嫌気性菌に対する抗菌スペクトラムを32菌種33株を用いて寒天平板希釈法により検討した。また好気性および嫌気性菌の臨床分離株243株に対する抗菌力をも検討した。
    LCBFは, Bacteroides fragilis, Bacteroides thetaiotaomicron, Bacteroides ovatus, Bacteroides unifomisのいわゆるB.fragilis groupとPrevotella bivia, Clostridium difficileの7菌種8株を除く, 共試した嫌気性菌のすべての菌種の発育を3.13 μg/mlの濃度で抑制する良好で幅広い抗菌作用を示し, cefaclor (CCL) と類似の抗菌スペクトラムであった。LCBFは新鮮臨床分離株についてもCCLと同程度の優れた抗菌力を示した。特にEscherichia coli, Klebsiella pneunoniae, Peptostreptococcus spp.およびPropionibacterium acnesに対しCCLよりも優れた成績であった。
    またLCBFはB.fragilis由来のβ-lactamaseの加水分解を受け, その安定性はcefiximeよりは劣るが, CCL, cefazolinと同等かやや優れる成績であった。また, 本薬剤のBacteroides distasonisに対する殺菌力はCCLよりも強力であった。本剤の100 mg/kgを1日2回5日間経口投与したマウス盲腸内におけるC.difficileの増殖は認められなかった。
  • 西野 武志, 大槻 雅子, 芳野 達也
    1993 年 41 巻 Supplement3 号 p. 31-50
    発行日: 1993/08/30
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    初めての経口用カルバセフェム系抗生物質loracarbef (LCBF) に関するin vitroおよびin vivo抗菌力について, 既知の抗生物質cefaclor (CCL), cefuroxime (CXM), cefixime (CFIX), cefteram (CFTM), cefdinir (CFDN) およびcefprozil (CFPZ) を比較薬剤として検討を行った。
    In vitroにおいて, LCBFはグラム陽性菌およびグラム陰性菌に対しCCL, CFPZとほぼ同様の広域抗菌スペクトラムを示した。
    臨床分離株に対する抗菌力においては, グラム陽性菌に対してLCBFはStreptocmus pneumoniae, Streptococcus pyogenes において良好な抗菌力を有しており, その抗菌活性はCXM, CFIX, CFTM, CFDNより劣るが, CCLおよびCFPZとほぼ同等か若干優れていた。
    また, グラム陰性菌ではMoraxella catarrhalis, Haemophilus influenzae, Escherichia coli, Klebsiella pneumoniae, Proteus mirabaisに対して良好な抗菌力を示し, その抗菌力はCXM, CFIX, CFTM, CFDNより僅かに劣るものの, CCLおよびCFPZと同等あるいは優れていた。さらに, 嫌気性菌のPropionibacterium acnes に対しては, CCLよりもかなり優れた抗菌力を示した。
    In vivoのマウス実験的感染症においてLCBFは, Staphylococcus aureus Smith, S.pyogenesC-203, E.coli KC-14, K.pneumoniae KC-1 においてCCLとほぼ同等であり, 菌株によってはCFIX, CFTM, CFDNより優れた治療効果を示した。
  • 佐藤 清, 吉竹 裕子, 山下 錦也
    1993 年 41 巻 Supplement3 号 p. 51-62
    発行日: 1993/08/30
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Loracarbef (LCBF) は既存のセフェム骨格の1位の硫黄が炭素に置き換わったカルバセフェム骨格を有する新しいタイプの経口β-ラクタム系抗生物質である。LCBFのin vitro抗菌力をcefaclor (CCL), cephalexinおよびamoxicillinと比較検討した。
    各種臨床分離株に対する感受性分布試験では, LCBFはStaphylococcus aureus, Streptococcus属, Escherichia coli, Klebsiella pneumoniae, Proteus mirabilis, Haemophilus influenzae およびNeisseria gonorrhoeaeに対して0.2~1.56μg/mlのMIC50を示した。中でもE.coliおよびK.pneumoniaeに対しては比較薬剤中最も優れた抗菌力を示した。嫌気性菌に対してはグラム陽性菌にのみ中等度の抗菌力を示した。LCBFは殺菌的に作用しMICとMBCはほぼ同値を示した。LCBFの抗菌力は培地, 培地pHおよび馬血清の添加によって影響されにくいが, 接種菌量については高菌量でMIC値が上昇した。これらの成績は比較薬剤でも同様に認められる現象であった。pHに対する安定性試験では, CCLはpH 2.0~4.0でのみ安定であるのに対し, LCBFはpH 2.0~10.0の広い範囲で極めて良好なpH安定性を示した。β-lactamaseに対しては, cephalosporinaseにはCCLと同様に分解されるが, penicillinase型の一部にはLCBFがCCLより若干安定であった。β-ラクタム系抗生物質の作用点であるぺニシリン結合蛋白質に対する親和性をE.coliNIHJ JC-2を用いて検討したが, CCLとほぼ同様な結合親和性を示した。
    以上の結果, LCBFはCCLによく類似した抗菌プロフィ-ルを示し, 優れたpH安定性はカルバセフェム骨格に起因する特徴と考えられる。
  • 山下 錦也, 清水 牧子, 望月 治美, 佐藤 清
    1993 年 41 巻 Supplement3 号 p. 63-69
    発行日: 1993/08/30
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しい経口カルバセフェム剤loracarbef (LCBF) のin vivo抗菌作用について, マウスおよびラットを用いて各種感染症モデルを作製し, 対照薬としてcefaclor (CCL), cephalexin, cefixime, cefterampivoxilを用い感染治療効果を比較検討した。
    Staphylococcus aureus, Streptococcus pyogenes, Escherichia coli およひKlebsiella pneumoniae のマウス腹腔内感染症に対して, LCBFは良好な治療効果を示しCCLとほぼ同程度であった。特筆すべきこととしてLCBFはS.mreusおよびK.pneumoniaeに対して第3世代セフェムの経口剤よりも優れた治療効果を示す場合がみられた。
    Cyclophosphamide投与による白血球減少マウスを用いた腹腔内感染症においても, LCBFはCCLと同等の良好な治療効果を示した。
    S.aureus, E.coliおよびK.pneumoniaeを用いたラット腹腔内感染症において, LCBFは5材中3株で同等, 2株ではCCLより著明に優れた治療効果を示した。
    K.pmeumoniaeによるマウス呼吸器感染症, ならびにE.coliによる尿路感染症に対してもLCBFはCCLに匹敵する治療効果を示した。
  • 上野 素子, 佐藤 清
    1993 年 41 巻 Supplement3 号 p. 70-76
    発行日: 1993/08/30
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Loracarbef (LCBF) は協和醗酵工業 (株) で創製された新しい経口カルバセフェム系抗生物質であり, その化学構造はcefaclor (CCL) と近似する。Postantibiotic effect (PAE) とは, 細菌に抗菌薬を一定時間作用させたのちこれを除去し, 抗菌薬の消失後も持続する増殖抑制効果のことである。今回, LCBFのグラム陽性菌に対するin vitroおよびin vivo PAEについてCCLと比較検討した。
    In vitro PAE: LCBF, CCLの両薬剤は, Staphylococcus aureus 209-P, Streptococcus pneumoniae J673の2菌種に対して濃度依存的にPAEを示した。LCBFのPAEはCCLと大差がなく, ほぼ同程度であった。
    In vivo PAE: S. aureus Smith, S. pmummiae J673の実験的マウス感染症においてLCBFおよびCCLを経口投与し, 腹腔内生菌数の抑制を指標に検討した。LCBFの腹腔内生菌数の増殖抑制作用はCCL投与群よりも長く持続し, LCBFのin vivo PAEはCCLより優れていた。
    以上の結果, グラム陽性菌に対するLCBFのPAEは, CCLと比較しin vitro系ではほとん ど差がみられなかったが, in vivo系においては高値を示した。
  • 吉竹 裕子, 望月 治美, 佐藤 清
    1993 年 41 巻 Supplement3 号 p. 77-84
    発行日: 1993/08/30
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Loracarbef (LCBF) をEscherichia coli F3385に作用させた時の菌の形態変化について位相差顕微鏡および電子顕微鏡を用いてcefaclor (CCL) と比較検討した。
    位相差顕微鏡による観察: 濃度依存的に菌の伸長化が進み, バルジを形成し, 溶菌に至った。24時間後には生存菌体の修復像が観察された。
    走査型電子顕微鏡による観察: LCBF, CCLを作用した菌は, ほぼ同様の形態変化が観察された。すなわち, 3.13μg/ml 2時間作用により菌の伸長化とバルジの形成が観察され, 4時間後には溶菌像やそれに伴う偏平化した菌体が多数観察された。LCBFでは伸長化した菌の先端部分にSpheroplast様構造と思われる菌の膨化が観察された。
    透過型電子顕微鏡による観察: LCBFとCCLの作用では, ほぼ同様な形態変化が観察された。2時間で伸長化した菌が現れ, バルジや細胞質内に電子密度の低下した部分が観察された。4時間後には, 細胞質の内容物がほとんど失われ希薄化した菌および一部修復像も観察された。
    また, Staphylococcus aureus 209-PとKlebsiella pnemmoniae F1928についても位相差顕微鏡による形態変化の観察を行った。両菌株とも濃度依存的に形態変化が観察された。K.pneumoniae F1928については, LCBFは低濃度でも早期から菌の伸長化とバルジが確認できた。
    以上の結果, LCBFは抗菌像の面からCCLとほぼ同質で同程度の抗菌活性を有していると考えられた。
  • 吉竹 裕子, 望月 治美, 清水 牧子, 佐藤 清
    1993 年 41 巻 Supplement3 号 p. 85-91
    発行日: 1993/08/30
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Loracarbef (LCBF) の細菌学的評価の一環として, 血清補体およびマウス培養マクロファージ (Mφ) との協力殺菌作用を検討した。
    1.血清補体との協力作用
    菌の増殖に影響を与えないモルモットの補体存在下において, LCBFまたはcefaclor (CCL) と血清補体との協力殺菌作用を検討した。Staphylococcus aurms 209-PおよびEscherichia coli NIHJ JC-2の両菌に対して明白な協力作用は認められなかった。
    2.マウス培養Mφとの協力作用
    Mφを培養したシャーレに薬剤とE. coli NIHJ JC-2を同時に加え, Mφとの協力作用について検討した結果, LCBFおよびCCLにMφとの協力殺菌作用があることが認められた。
    MφのE.coli貧食率を測定したところ, 培養2時間後Mφは単独で24%, 薬剤添加時では40~60%の貧食率を示した。またこの時電子顕微鏡下では, 1個のMφが多数の伸長化した菌を貧食している像やバーストして空胞化している菌を貧食している像が観察されMφに効率良く貧食殺菌された。
  • 山下 錦也, 佐藤 清
    1993 年 41 巻 Supplement3 号 p. 92-96
    発行日: 1993/08/30
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    カルバセフェム抗生物質loracarbefの体液内濃度を測定するために, 微生物学的定量法 (bioassay法) の条件検討を実施した。
    LCBFのbioassay法として2種類の異なる検定菌を用いる系を確立した。一つの系はMicrococcus luteus PCI1001を検定菌とし, Antibiotic Medium 1 (Difco) を培地に用いる寒天平板拡散法 (Cup法) で, 測定範囲は0.08~10.0μg/mlであった。もう一つの系はBacillus subtilis ATCC6633を検定菌とし, 培地にNutrient Agar (栄研) を用いる系で, 測定範囲は0.31~20.0μg/mlであった。
    血漿中濃度の測定など微量の濃度測定にはM.luteus PCI1001を検定菌とする方法を, 尿中濃度の測定など高濃度が予想される場合にはB.subtilis ATCC6633を検定菌とする方法がそれぞれ適していた。
  • 山下 錦也, 上野 素子, 佐藤 清
    1993 年 41 巻 Supplement3 号 p. 97-106
    発行日: 1993/08/30
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しい経口カルバセフェム剤loracarbef (LCBF) のマウス, ラット, イヌ, およびサルにおける体内動態について検討した。
    Cefaclor (CCL) を対照薬として用い, 比較検討した。なお, 薬剤の投与は50mg/kg経口投与とした。
    マウスではLCBFのCmaxは57.6μg/mlを示し, CCLの50.6μg/mlより若干高値を示した。LCBFのT1/2はCCLとほぼ同程度であったが, AUCは53.5μg・h/mlであり, CCL (46.6μg・h/ml) よりやや大きい値を示した。
    ラットではLCBFのCmaxは19.1μg/ml, AUCは49.3μg・h/mlであり, CCLの9.6μg/ml, 21.6μg・h/mlよりも約2倍高値を示した。
    LCBFはマウス, ラットともに肝, 腎, 脾, 肺の各臓器に速やかに分布し, 臓器内濃度はCCLに比べ高く, 良好な組織移行性を示した。
    イヌではLCBFのCmaxは42.3μg/ml, T1/2は2.63h, AUCは207.9μg・h/mlで, サルではCmaxは16.0μg/ml, T1/2は1.27h, AUCは63.1μg・h/mlでイヌ, サルともにCmax, AUCのいずれもCCLよりも高値を示し, AUCではおおよそ2倍の高値を示した。
    LCBF 50mg/kg経口投与後24時間までの尿中排泄率はマウスでは81.7%, ラットでは56.1%, イヌでは67.8%, サルでは49.2%を示し, CCLではそれぞれ62.0%, 36.1%, 11.6%, 18.2%であった。LCBFの尿中排泄はCCLと比べ全ての動物種において高値を示した。
    LCBFはラット以上の大動物では対応するセフェム剤CCLより優れた体内動態を示した。この知見は, カルバセフェム抗生物質の特徴のひとつと考えられる。
  • 西条 敬, 加藤 譲, 池永 哲二, 服部 修, 日高 珠恵, 橋本 惟, 中西 順一, 西森 司雄, 志熊 廣夫, 仲澤 政雄
    1993 年 41 巻 Supplement3 号 p. 107-128
    発行日: 1993/08/30
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しい経口カルバセフェム剤loracarbefの一般薬理作用を検討し, 下記の成績が得られた。
    1.一般症状観察・中枢神経系: 2000mg/kgの経口投与においても, 一般症状, 自発運動量, 協調運動, barbital睡眠, 電撃および薬物誘発痙攣に対して影響を及ぼさず, 筋弛緩作用も認められなかった。ウサギにおいて, 1000mg/kgの経口投与2時間後に体温の低下が認められた。ウサギ自発脳波に対しては, 500mg/kgの経口投与においてほとんど影響が認められず, 脊髄反射に対しても200mg/kgの静脈内投与で影響がみられなかった。
    2.呼吸・循環器系: 麻酔犬において100および200mg/kg静脈内投与の投与初期に大腿動脈血流量の一過性の軽度な増加が見られたが, 呼吸数, 血圧, 心電図, 心拍数および自律神経作動薬による血圧反応に対してほとんど影響を及ぼさなかった。また, 摘出心房および血管に対しても, 10-4g/mlの濃度まで作用は認められなかった。
    3.平滑筋・自律神経系: 摘出回腸, 気管, 輸精管, 子宮標本において, 10-4g/mlの濃度まで作用は認められなかった。胃腸管輸送能および瞳孔径に対しては, 2000mg/kgの経口投与においても影響は認められなかった。また, 瞬膜収縮に対しても200mg/kgの静脈内投与で影響がみられなかった。
    4.溶血および血小板凝集能に対し, 10-4g/mlの濃度まで影響は認められなかった。血液凝固・線溶系に対しては, 500mg/kgをサルに5日間経口投与してもほとんど影響が認められなかった。
    5.尿量および尿中電解質: 1000mg/kgの経口投与で尿量の減少傾向, Na+とCl-の排泄減少とK+の排泄増加が認められた。
    6. その他: 神経・筋接合部に対し, 200mg/kgの静脈内投与で影響が認められなかった。局所麻酔作用および局所刺激性は, 10-4g/mlの濃度においても認められなかった。抗炎症作用は, 200mg/kgの経口投与においても認められなかった。さらに, 600mg/kgをラットに35日間経口投与しても精子形成能に変化は認められなかった。
  • 柴 孝也, 小林 智
    1993 年 41 巻 Supplement3 号 p. 129-151
    発行日: 1993/08/30
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    健常成人男子志願者34名を対象に新規経口カルバセフェム剤loracarbef (LCBF) の第I相試験として100mg, 200mg, 400mgの単回経口投与試験およびプラセボを対照とした1回200mgおよび400mg 1日3回の7日間連続経口投与試験を行い, 安全性および薬物動態を検討した。
    1.単回および連続投与試験を通じ一般臨床症状, 理学的検査, 血液・血液生化学, 尿および止血・凝固系検査で本剤に起因すると思われる異常所見は認められなかった。
    2.LCBFは100, 200および400mg (200mg×2) を単回経口投与後速やかに吸収され, 投与後約1時間で最高血漿中濃度に達し, 以後一相性に消失した。その最高血漿中濃度はそれぞれ4.97, 7.44および15.6μg/mlであった。また, AUC0~∞はそれぞれ6.88, 14.6および30.7μg・h/mlであった。100mgから400mgの投与量範囲において投与量と最高血漿中濃度および投与量とAUC0~∞との間に線形性が認められた。消失半減期 (T1/2) は0.94~1.18時間で投与量の増大に伴う延長傾向は認められなかった。投与後24時間までの尿中排泄率は, それぞれ91.5, 93.5および91.9%であった。
    3. LCBF 200mgを食後30分に投与し, 空腹時投与と比較したところ, 食事による最高血漿中濃度の有意な減少, また最高血漿中濃度到達時間および平均滞留時間の有意な延長が示された。AUC0~∞は僅かに減少したものの尿中排泄率に差を認めなかったことより吸収量に変化はないと考えられた。
    4.LCBF 200mgあるいは400mgを1日3回7日間, 計19回連続投与したところ, 単回に比べ, 血中および尿中排泄動態に変化は認められなかった。
    5.TLC/bioautographyにより血漿および尿中抗菌活性代謝物の検索を行ったが, 活性代謝物は検出されなかった。
  • 加藤 直樹, 加藤 はる, 田中 保知, 田中 香お里, 渡辺 邦友, 上野 一恵
    1993 年 41 巻 Supplement3 号 p. 152-159
    発行日: 1993/08/30
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新カルバセフェム系経口抗菌薬であるloracarbef (LCBF) の連続投与がヒト糞便内フローラに及ぼす影響を検討した。LCBFは成人男性に200mg (6名) もしくは400mg (5名), 1日3回, 7日間投与された。また, コントロールとして抗菌薬を含まないプラセーボ群も同時にフローラの検討をした。いずれの投与量においてもLCBFの連続投与は糞便内フローラにほとんど影響をもたらさなかった。すなわち, 糞便内の総菌数には変動がなく, 200mg投与群でレシチナーゼ陽性Clostridium属, 400mg投与群でFusobacterium属が一時増加した。また, いずれの投与群でもEnterococcus属が増加し, 200mg投与群でLactobacillus属が一過性に減少した。菌種レベルでの検討においては, Bacteroides fragilis groupでは明らかな変動は認められず, 一部の被験者でEscherichia coliが減少し, Klebsiella pneumoniaeEnterococcusaviumが消失し, 替わってEnterobacter cloacaeなどの他のEnterobacteriaceaeが出現した。これらのフローラの変化は一過性で, LCBF投与終了3~4週間後には元の状態に復した。Clostridium difficileの出現はLCBF投与群で1例ずつ認められた。今回の検討により, LCBFの連続投与はヒト腸内フローラにほとんど影響を与えないものと思われた。
  • 齋藤 玲, 富沢 磨須美, 中山 一朗, 佐藤 清
    1993 年 41 巻 Supplement3 号 p. 160-167
    発行日: 1993/08/30
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Loracarbef (LCBF) は新しい経口カルバセフェム剤である。臨床分離の7菌種180株に対する抗菌力をMIC90でみるとStaphylococcus aureusは12.5μg/ml, Escherichia coliは1.56μg/ml, Klebsiella pneumoniaeは1.56μg/ml, Proteus mirabilisは1.56μg/ml, Morganellamorganii, Serratia marcescens, Pseudomonas aeruginosaはともに100μg/ml以上であった。LCBFを健康成人男子6名に空腹時に200mg 1回経口投与し, その体内動態を同量のcefixime (CFIX) とクロスオーバー法で比較した。薬動力学的パラメーターのCmaxはLCBF投与8.28μg/ml, CFIX投与2.20μg/mlであった。Tmaxは1.25と4.17時間, T1/2は1.17と3.07時間, AUCは16.4と17.6μg・h/mlであった。尿中排泄率は12時間で93.2と25.0%であった。呼吸器感染症22例に対して, LCBFを1日600mg分3で4~10日間投与し, 治療効果をみた。臨床効果は著効6例, 有効15例, やや有効1例, 有効率は95.5%であった。起炎菌が検出された12例の細菌学的効果は全て消失であった。副作用は1例に胃痛を認めたが臨床検査値異常は全例に認められなかった。
  • 渡辺 彰, 本田 芳宏, 徳江 豊, 庄司 聡, 菊地 宏明, 高橋 洋, 本宮 雅吉, 中村 俊夫, 富樫 秀生
    1993 年 41 巻 Supplement3 号 p. 168-177
    発行日: 1993/08/30
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    経口用カルバセフェム系抗生物質のloracarbefの呼吸器由来7菌種に対するin vitro抗菌力をcefixime (CFIX), cefteram (CFTM), cefaclor (CCL) およびampicillin (ABPC) と比較検討し, 呼吸器感染症19例に対する臨床効果, 細菌学的効果ならびに安全性を検討して臨床的位置付けを試みた。Methicillin-susceptible Staphylococcus aureusに対する抗菌力はCFTMより1管, CCLより2管強く, Haemophilus influenzaeに対する抗菌力はABPCより劣るがCCLより2管強かった。Escherichia coliKlebsiella pneumoniaeに対してはABPCとCCLより1~4管強かった。Methicillin-resistant S.aureusEnterobacter cloacae, Serratia marcescens, Pseudomonas aeruginosaに対する抗菌力はCCLと同様に不十分であった。急性気管支炎2例, 急性肺炎9例, 慢性気道感染症急性増悪9例の計20例に本剤を1日600~1200mg, 3~15日間投与して, 効果判定可能の19例中著効5例, 有効10例, やや有効4例で有効率は79%であった。本剤投与前にStreptococcus pneumoniae5株, Streptococcus pyogenes1株, Moraxella catarrhalis 1株, H.influenzae8株の計15株を分離し, 治療後に判定可能13株中9株が消失した。副作用症状は見られず, 好酸球数増多を1例, トランスアミナーゼ値上昇を3例に認めたが, 投与終了時にはいずれも改善していた。LCBFは種々の呼吸器感染症の外来管理例に対する有力な第一次選択薬剤の一つと考えられる。
  • 大石 明, 坂内 通宏, 仲村 秀俊, 石井 昌俊, 福井 俊夫, 青崎 登, 吉松 博, 奥井 津二, 勝 正孝
    1993 年 41 巻 Supplement3 号 p. 178-183
    発行日: 1993/08/30
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Loracarbefの基礎的および臨床的検討を行い以下の知見を得た。
    基礎的検討での本剤の抗菌力はグラム陽性菌 (Staphylococcus aureus, staphylococcus epidemfdis, streptococcus pyogenes, sstreptococcus pneumoniae) およびグラム陰性菌 (Escherichia coli, klebsiella pneumoniae, Proteus mirabilis, proteus vulgaris, Haemophilus influenzae) に対してcefaclorと同等またはそれ以上の抗菌力を示した。
    臨床的検討では急性咽頭炎12例, 急性気管支炎2例, 気管支肺炎1例 (男9人, 女6人, 年齢17~79歳) に対し本剤を1日600mg分3で5~10日間投与し, 著効4例, 有効10例, やや有効1例であった。副作用は認められなかった。臨床検査値の異常変動は投与後検査を行い得た11例では認められなかった。
  • 柴 孝也, 吉田 正樹, 堀 誠治, 嶋田 甚五郎, 斉藤 篤, 酒井 紀, 松本 文夫, 今井 健郎, 北條 敏夫, 高橋 孝行, 森田 ...
    1993 年 41 巻 Supplement3 号 p. 184-187
    発行日: 1993/08/30
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しい経口カルバセフェム剤loracarbef (LCBF) の体内動態および臨床的検討を行い以下の成績を得た。
    1.体内動態
    腎機能障害患者2例 (クレアチニンクリアランス (Ccr) 20ml/min 1例, 10ml/min以下1例) に本剤200mg経口投与し, 経時的な血中濃度, またCcr 10ml/min以下の患者で透析性を検討した。Ccr 20ml/minの患者では投与1時間後にCmaxは15.45μg/mlを示し, Ccr10ml/min以下の患者ではCmaxは6時間後に12.21μg/mlを示した。Ccr 10ml/min以下の患者の透析開始時には, 32.86μg/mlの血中濃度に達し, 1時間後で動脈血で22.75μg/m正, 静脈血で11.141μg/ml, 4時間後ではそれぞれ17.77μg/ml, 9.60μg/mlであった。
    2.臨床的検討
    肺炎6例, 慢性気管支炎2例, 急性膀胱炎1例の計9例にLCBFを1回200mgを1日2~3回, 5~7日間投与した。臨床効果は肺炎6例中有効5例, 慢性気管支炎2例中有効1例, 急性膀胱炎1例は有効であり全体では9例中有効7例, やや有効2例であった。副作用, 臨床検査値の異常変動は認められなかった。
  • 片平 潤一, 柴田 雄介, 菊池 賢, 長谷川 裕美, 戸塚 恭一, 清水 喜八郎
    1993 年 41 巻 Supplement3 号 p. 188-193
    発行日: 1993/08/30
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しく開発された経口用カルバセフェム剤であるloracarbef (LCBF) のヒトにおける体内動態と, それに及ぼすプロベネシドの影響を検討した。また, 呼吸器感染症における本剤の臨床的検討を行い若干の知見を得た。
    1) LCBFを200mg経口投与した際の血中濃度は1.13時間後に最高8.55μg/mlに達し, 半減期は1.42時間であった。またAUCは16.9μg・h/mlであった。
    2) LCBFを投与する際にプロベネシド19を併用すると, 血中濃度は12.8μg/mlと1.5倍に上昇し, 半減期も1.75時間と延長した。その結果AUCは35.4μg・h/mlと2倍になった。このことはLCBFが腎において尿細管からも排泄されることを示唆している。
    3) 急性の呼吸器感染症10例にLCBFを1回200mg1日3回投与した結果, 著効2例, 有効8例で臨床的有効率は100%と優れた効果が見られた。副作用は認められず, 臨床検査値では1例で血小板増加が疑われたのみで忍用性も優れていた。
  • 後藤 元, 岡 慎一, 後藤 美江子, 島田 馨, 佐野 靖之, 宮本 康文
    1993 年 41 巻 Supplement3 号 p. 194-200
    発行日: 1993/08/30
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しい経口カルバセフェム剤loracarbef (LCBF) について, in vitro pharmacokinetic systemを用いた抗菌力および呼吸器感染症に対する臨床的有用性について検討を行った。
    1.In vitro pharmacokinetic systemを用い, LCBF200mgを食前および食後に内服した時の薬剤の体内動態をシミュレートし, Streptococcus pneumoniae IID553, Haemophilus influenzaeIID984に対する抗菌活性を検討した。
    In vitro実験にて, 投与5時間以後のH.influenzaeおよびS.pneumoniaeに対する抗菌活性は食後モデルの方が優れていた。
    2.呼吸器感染症25例にLCBFを1日400mg~1, 200mg投与した時の有効性, 安全性について検討した。疾患別臨床効果は, 咽喉頭炎1/2例, 肺炎6/6例, 急性気管支炎5/5例, 慢性気管支炎5/7例, びまん性汎細気管支炎1/1例, 気管支拡張症1/1例, 肺気腫+感染1/1例が有効以上であり, 全体の有効率は87%(20/23例) であった。
    自他覚的副作用としては嘔気, 腹痛, 胃痛を1例, 顔面浮腫感を1例に認めた為投与を中止し, 効果判定より除外した。また, 本剤によると思われる臨床検査値の異常変動は認められなかった。
    起炎菌が推定されたのは9例であり, 8菌種13株が分離同定された。細菌学的効果を菌種別に検討するとS.pneumoniae1/3株, Strepococcus sp.2/2株, Moraxella catarrhalis2/2株, Klebsiella oxytoca1/1株, Enterobacter agglomerans1/1株, Pseudomoms aemginosa0/1株, Scinetobacter anitratus1/1株Acinetobacter lwoffii2/2株でそれぞれ消失した。
  • 小林 芳夫, 内田 博, 小川 哲平, 小林 広幸
    1993 年 41 巻 Supplement3 号 p. 201-204
    発行日: 1993/08/30
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しく開発された経口用カルバセフェム系抗生剤であるloracarbef (LCBF) の基礎的検討を行なう目的でStaphylococcus aureus, Escherichia coliおよびKlebsiella pneumoniaeの各々臨床分離株に対する抗菌力を検討した。Methicillin resistant S.aureusに対するLCBFのMICは100μg/ml以上であった。しかし, それ以外のS.aureusには良好な抗菌力を示した。すなわちcefaclor (CCL) とほぼ同等, cefur。xime (CXM) には劣るもののcefteram (CFTM) およびcefpodoxime (CPDX) のいずれよりも優れていた。E.coliに対しても本剤の抗菌力は良好で, CPDX, CFTMおよびcefixime (CFIX) よりは劣るもののCCLならびにCXMよりは優れた抗菌力を示した。K.pneumoniaeに対しては本剤はCCLとほぼ同等でCXMよりは優れているものの, CFTM, CPDXおよびCFIXよりは劣っていた。
    12例の急性気道感染症患者に本剤を1日量600mg投与し全例有効の成績を得た。分離菌が起因菌と考えられる細菌学的効果はβ-streptococcusが検出された1例で判定可能であったが除菌と判定された。本剤によると考えられる副作用および臨床検査値の異常変動は認められなかった。
  • 斧 康雄, 青木 ますみ, 芳賀 敏昭, 野末 則夫, 宮司 厚子, 杉山 肇, 山口 守道, 徳村 保昌, 大谷津 功, 宮下 琢, 西谷 ...
    1993 年 41 巻 Supplement3 号 p. 205-208
    発行日: 1993/08/30
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しい経口用カルバセフェム系抗生物質loracarbef (LCBF) の臨床分離株に対する抗菌力をcefaclor (CCL), cefotiam (CTM), cefixime (CFIX) と比較し, また各種細菌感染症に対する臨床的有用性について検討した。
    臨床分離株methicillin-sensitive Staphylomccus aureus (9株) に対する抗菌力は他剤に劣り, Escherichia coli (20株) に対してはCTM, CFIXに劣るもののCCLに優る抗菌力を示した。Klebsiella pneumoniae (20株) に対しては, 他の3剤に比し劣り, Enterobacter cloacae (7株) に対しては, CCLと同等の抗菌力を示した。
    臨床的には, 急性気管支炎の5例に本剤1回200mg~400mgを1日2~3回, 4~14日間経口投与した。臨床成績は, 著効1例, 有効4例であった。細菌学的には, 原因菌が判明した2例はいずれも除菌しえた。副作用としては, 投与前後における4例の臨床検査成績を含め自他覚所見は認められなかった。
  • 沖本 二郎, 吉田 耕一郎, 玉田 貞雄, 多田羅 治, 守屋 修, 二木 芳人, 副島 林造
    1993 年 41 巻 Supplement3 号 p. 209-213
    発行日: 1993/08/30
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しい経口カルバセフェム系抗生物質loracarbef (LCBF) について, 細菌学的および呼吸器感染症に対する臨床的検討を行い, 以下の成績を得た。
    1) Haemophilus infzuenzae, Klebsiella pneumoniae, Moraxella catarrhalisに対するMICは, 0.063~2.0μg/miにみられ, cefaclor (CCL>に優る成績であったが, cefotiam (CTM), cefteram pivoxil (CFTM-PI) よりやや弱い抗菌力であった。Streptococcus pneumoniaeに対しては, CCLに劣る抗菌力であった。Staphylococcus aureusに対するMIC50は2.0μg/mlにあり, CCL, CFTM-PIと同等の抗菌力を有していた。しかし, methicillin-resistant S.aureus, Pseudomonas aeruginosa に対するMICは高値を示した。
    2) 呼吸器感染症17例を対象にLCBFを使用した結果, 臨床効果は著効2例, 有効10例, やや有効2例, 無効3例で有効率は70.6%であった。臨床的副作用および臨床検査値の異常を認めた症例はなかった。
  • 栗村 統他
    1993 年 41 巻 Supplement3 号 p. 214-222
    発行日: 1993/08/30
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しく開発されたcarbacephem系抗生剤loracarbef (LCBF) の試験管内抗菌力および臨床効果について検討した。抗菌力は国立呉病院に保存されている臨床分離株のなかからグラム陽性球菌としてStaphylococcus aureus 他6菌種105株, グラム陰性桿菌としてEscherichia coli他23菌種324株を選び, LCBF, cephalexin (CEX), cefixime (CFIX), cefteram (CFTM) の抗菌力を測定し, 比較検討した。グラム陽性球菌については, Staphylocmus spp.に対してはLCBFの抗菌力が最も優れていた。Streptococcus spp.に対しては, CFTMの抗菌力が最も優れ, LCBFの抗菌力はCEXより優れていたが, CFIXよりも劣った。Entemoccus spp.に対しては, 4剤とも
    抗菌力は弱かった。グラム陰性菌中腸内細菌科の菌種に対しては, CFIX, CFTMの抗菌力が優れ, LCBFの抗菌力はCEXより優れていたが, E.coli, Klebsiella pneumoniae, Salmonellaspp., Shigella spp., Proteus mirabilis以外の菌種に対しては弱かった。腸内細菌科以外の菌種に対する抗菌力はLCBFはCFTMより劣ったものの, CEXよりは優れていた。
    臨床効果は9例の呼吸器感染症 (肺炎5例, 急性気管支炎1例, 慢性気管支炎1例, 気管支拡張症1例, 肺気腫への感染1例) について検討した。1日投与量は800mgが4例, 600mgが5例で, 投与日数は7日から16日にわたった。肺炎2例および気管支拡張症例に著効, 急性気管支炎例および肺気腫例に有効, 他の4例にやや有効または無効であった。分離された菌株はStreptococcus pneumoniae, Haemophilus influenzae, S.aureus, E.coliそれぞれ1株, Moraxella catarrhalis 2株で, S.pneumoniae, H.influenzae, S.aureusは消失, E.coliは減少, M.catarrhalisの1 株は残存, 他の1株はPseudomonas aemginosaに交代した。副作用はみられなかった。
  • 松本 行雄, 杉本 勇二, 千酌 浩樹, 阪田 拓哉, 小西 龍也, 寺本 英已, 櫃田 豊, 佐々木 孝夫
    1993 年 41 巻 Supplement3 号 p. 223-226
    発行日: 1993/08/30
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    はじめての経口用カルバセフェム系抗生物質loracarbefの呼吸器感染症病原菌に対する抗菌力と, 呼吸器感染症における臨床効果ならびに有用性について検討し, 下記の結果を得た。
    呼吸器感染症患者より分離された臨床株に対する本剤のMICは, Haemophilus influenzaeでは0.39~1.56μg/ml (MIC901.56μg/ml) に分布し, Moraxellacatarrhalisでは0.2~3.13μg/ml (MIC901-56μg/ml), Streptococcus pneumoniae では0.39~1.56μg/ml (MIC900.78μg/ml), Staphylococcus aureus では0.2~6.25μg/ml (MIC901.56μg/ml) に分布していた。
    呼吸器感染症8例 (肺炎1例, 慢性気管支炎3例, 気管支拡張症+感染2例, びまん性汎細気管支炎1例, 急性気管支炎1例) における本剤の臨床効果は著効1例, 有効3例, やや有効2例, 無効1例, 判定不能が1例であった。起炎菌の判明した症例は5例で, H.influenzae3例, H.influmzae+S.pneumoniae1例, Klebsiella pneummiae1例 (効果判定不能症例) であり, 本剤により除菌できたのは, H.influenzaeの1例のみであった。自他覚的な副作用は認めなかったが, 臨床検査値で軽度のGOT, GPTの上昇を1例に認めた。
  • 澤江 義郎, 岡田 薫, 石丸 敏之, 高木 宏治, 下野 信行, 三角 博康, 江口 克彦, 重松 美加, 仁保 喜之
    1993 年 41 巻 Supplement3 号 p. 227-234
    発行日: 1993/08/30
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しく開発された経口用カルバセフェム系抗生物質であるloracarbef (LCBF) について基礎的, 臨床的検討を行った。
    LCBFの臨床分離菌に対するMIC80をみると, methicillin-sensitive Staphylococcus aureus6.25, Escherichia coli1.56, Klebsiella pneumoniae 25μg/mlであったが, methicillin-resistantS.aureus, Enterococcus faecaliS, Enterobacter spp., Proteus spp., Citrobacter freundii, Pseudommas aeruginosa はいずれも>100μg/mlと劣っていた。これらの抗菌力はcephalexin, cefaclor とほぼ同等で, cefpodoximeよりグラム陰性桿菌で著明に劣っていた。
    平均年齢70.2歳の5名の高齢者にLCBFの200mgを空腹時に内服させたときの血清中LCBF濃度の平均値は1時間後に8.85μg/mlのピーク値となり, T1/2が1.75時間であった。そのときの平均8時間累積尿中排泄率は84.8%であった。
    肺炎1例, 急性気管支炎1例, 急性扁桃炎2例, 急性咽頭炎1例, 痴1例の計6例に, LCBFを1日600~1200mg, 4~21日間使用したところ, すべて有効ないし著効であった。起炎菌の明らかにできた4例中3例では菌消失したが, 1例が減少にとどまった。
    副作用, 臨床検査値異常は認められなかった。
  • 光武 耕太郎他
    1993 年 41 巻 Supplement3 号 p. 235-241
    発行日: 1993/08/30
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新規の経口用カルバセフェム系抗菌剤であるloracarbefについて, 基礎的ならびに臨床的検討を行い以下の結果を得た。
    1.抗菌力: 臨床分離株12菌種419株に対する最小発育阻止濃度 (MIC) を測定し, 他4薬剤 (cefaclor, cefixime, cefotiam, amoxicillin) と比較検討した。その結果, 本剤はmethicillin-resistant Staphylococcus aureus, Enterococcus fae6alis, Pseudomonas aerugfnosa, Acinetobacter anitratusを除いたグラム陽性および陰性菌に良好な抗菌活性を示し, CCLとほぼ同等の成績が得られた。
    2.体液内濃度: びまん性汎細気管支炎患者2例において, 本剤を経口投与した時の血中および喀痰中濃度を高速液体クロマトグラフィー (HPLC) にて測定した。本剤200mgあるいは400mgを経口投与した後の最高血中濃度はそれぞれ8.3と16.1μg/ml, 最高喀痰中濃度はそれぞれ0.47と0.36μg/mlで, 良好な喀痰内移行性が認められた。
    3.臨床的検討: 呼吸器感染症患者21例に本剤を投与し, 臨床効果および副作用について検討した。21例中有効13例, やや有効3例, 無効4例, 判定不能1例で, 総合的な有効率は65%であった。副作用としては, 胃部不快感が1例にみられたが, 軽度であったために投与継続可能であった。臨床検査値異常としては, 好酸球の上昇が1例に認められた。
  • 宇都宮 嘉明他
    1993 年 41 巻 Supplement3 号 p. 242-252
    発行日: 1993/08/30
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    初の経口用carbacephem 系抗生物質であるloracarbef (LCBF) の基礎的・臨床的研究を行なった。
    呼吸器病原性の明確な菌株に対するLCBFのMIC50およびMIC70はそれぞれ, Staphylococcus aureus 12.5μg/mlと>100μg/ml, Streptococcus pneumoniae 0.78μg/mlと1.56μg/ml, Haemophilus influenzae 0.78μg/mlと1.56μg/ml, Branhamella catarrhalis 1.56μg/mlと3.13 μg/ml, Pseudomonas aeruginosa はMIC50は>100μg/mlであった。
    慢性気管支炎患者において200mg単回投与後の最高血中濃度は120分後の7.7μg/mlで, 4時間後でも血中濃度は2.3μg/mlと良好な血中移行が示された。同一症例での200mg, 1日3回の連続投与では喀痰中濃度は大半が0.15μg/ml前後であった (最高血中濃度の約2%)。喀痰中最高濃度は5日目の0.33μg/ml, 最高血中濃度の4.3%であった。
    本剤を慢性呼吸器感染症9例と急性気管支炎1例に用いた。有効は3例, やや有効3例, 無効4例と有効率は30%にとどまった。細菌学的には55%が除菌され, 本剤の起炎菌に対するMICの0.78μg/mlが除菌できるかどうかの境界線上にあると考えられた。
    副作用は認められなかったが, 1例のみにトランスアミナーゼの上昇がみられ, 本剤の中止にてすみやかに改善した。
    以上の結果より呼吸器感染症の治療においてLCBFはcefaclorよりすぐれた抗菌力を有しており, 組織移行も良いことが明らかとなったので十分な量の投与が可能であれば有望な治療薬として期待できると結論付けられる。
  • 山崎 透, 生田 真澄, 時松 一成, 一宮 朋来, 増田 満, 平松 和史, 永井 寛之, 後藤 陽一郎, 田代 隆良, 那須 勝, 仲間 ...
    1993 年 41 巻 Supplement3 号 p. 253-259
    発行日: 1993/08/30
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しく開発された経口用セフェム系抗生剤loracarbef (LCBF) について, 臨床分離菌に対する抗菌活性を測定し, 呼吸器感染症に対する臨床検討を行い, 以下の結果を得た。
    1.抗菌力: 臨床材料から分離した15菌種521株について, 日本化学療法学会規定の方法により最小発育阻止濃度を測定し, cefaclor (CCL), cefteram (CFTM) の抗菌力と比較した。メチシリン感性Staphylococcus aureus, Streptococcus pneumoniae, Moraxella catarrhalis に対してはCFTMにやや劣り, CCLとほぼ同等の抗菌力を示した。グラム陰性桿菌に対しては, Escherichia coli, Klebsiella pneumoniae, Proteus mirabilis には優れた抗菌活性を示し, CCLより優れていたが, 他の腸内細菌群にはCCLとほぼ同等の抗菌力であった。ブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌には, CCL, CFTMと同様に抗菌力は低かった。
    2.血中および喀痰中への移行濃度: LCBFを慢性気道感染症患者2例に食後1回投与した際の血中および喀痰中移行濃度を測定した。最高血中濃度はいずれも投与2時間後に見られ, 200mg投与例では4.6μg/ml, 400mg投与例では8.8μg/mlであった。以後漸減してゆき, 8時間目には各々0.78, 0.80μg/mlであった。喀痰内移行濃度は最高値で, 各々0.066, 0.018μg/mlであり, 血中濃度に対する喀痰中の濃度比率は0.2~1.4%であった。
    3.臨床成績: 呼吸器感染症12例を対象に1回200mgを1日3回, 2~10日間投与した。臨床効果は有効8例, やや有効3例, 判定不能1例であった。本剤投与による自・他覚的副作用は, 1例軽度の胃部不快感がみられたが, 中止後速やかに軽快した。臨床検査値異常は認められなかった。
  • 伊良部 勇栄他
    1993 年 41 巻 Supplement3 号 p. 260-266
    発行日: 1993/08/30
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新経口カルバセフェム系抗生剤であるloracarbefについて, 基礎的, 臨床的検討を行った。
    基礎的検討: 臨床分離株14菌種, 302株について, 本剤とcefaclor (CCL), cefotiam (CTM), cefixime (CFIX), cefteram (CFTM) およびamoxicillin (AMPC) の抗菌力を比較した。本剤はMIC90でみるとグラム陽性菌においてはCCL, AMPCより優れており, グラム陰性菌においてもCCLと同等か優れた成績であった。しかし, CTM, CFIXおよびCFTMに比べると, 同等かやや劣る成績であった。
    臨床的検討: 呼吸器感染症13例に対して本剤1日600mgを分3で投与した。臨床効果は1例が著効, 9例が有効, 2例がやや有効, 1例は無効であり有効率は77%であった。除菌率は70%であった。
    副作用は出現しなかったが, 本剤に起因すると考えられる有意な臨床検査値変動については1例で好酸球数の上昇がみられた。
  • 宮尾 則臣, 広瀬 崇興, 熊本 悦明, 青木 正治, 和田 英樹, 赤樫 圭吾
    1993 年 41 巻 Supplement3 号 p. 267-275
    発行日: 1993/08/30
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しい経口セフェム剤であるloracarbef (LCBF) の有用性を基礎的, 臨床的に検討した。
    1.抗菌力: 教室保存の尿中分離グラム陽性菌4菌種とグラム陰性菌7菌種各50株に対するLCBF, cefixime (CFIX), cefaclor (CCL) 3薬剤のMICをMIC 2000システムを用いて測定した。LCBFの抗菌力はStaphylococcus aureus, Staphylococcus epidemidis, Escherichia coli, Klebsiella pneumoniae, Proteus mirabilisに対し良好であり, MIC90はそれぞれ, 25, 12.5, 1.56, 25, 50μg/mlであった。E.coliに対しては, CCLより良い抗菌力であった。Enterococcus faecalis, Enterococcus faecium, indole-positive Proteus spp., Enterobacter spp., Semtia marcescens, Pseudomonas aeruginosaに対してはそれほど強い抗菌力ではなかった。
    2.臨床的検討: 女子急性単純性膀胱炎8例と慢性複雑性膀胱炎10例で検討した。投与量は, 単純性では200mgまたは400mgを1日1回, 複雑性では1回400mgを1日2回とした。
    女子急性単純性膀胱炎症例の中, UTI薬効評価基準による評価が可能であった6例では, 3日目判定で著効1例, 有効5例であった。慢性複雑性膀胱炎症例の中, UTI薬効評価基準による評価が可能であった8例では, 著効5例, 有効2例, 無効1例であった。副作用は軽度の胃部不快感が1例に認められた。臨床検査値異常は認められなかった。
  • 斎藤 功, 西古 靖, 横澤 光博
    1993 年 41 巻 Supplement3 号 p. 276-283
    発行日: 1993/08/30
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新カルバセフェム系抗菌剤loracarbef (LCBF) の抗菌力, 組織移行および尿路感染症に対する臨床的検討を行った。LCBFのStaphylococcus aureusに対する抗菌力はcefaclor (CCL) と同等でcefixime (CFIX) より優れていた。また, Klebsiella pneumoniae, Escherichia coli, Neisseria gonorrhoeaeに対する抗菌力はCFIXより劣るもののCCLより優れていた。組織移行では前立腺組織内濃度の対血中比は, 200mg投与45~60分後で平均0.16, 70~135分後で平均0.14, 400mg投与60分後で平均0.24, 70~145分後で平均0.34であった。精巣および精巣上体組織内濃度の対血中比は400mg投与120分後でいずれも0.46であった。臨床的検討では有効率は主治医判定で急性単純性膀胱炎で93.8%(15/16例), 複雑性尿路感染症では61.5%(16/26例), またUTI薬効評価基準に合致した急性単純性膀胱炎9例ですべて有効以上, 複雑性尿路感染症9例では8例が有効以上であった。副作用および臨床検査値異常は認められなかった。
  • 兼松 稔, 山田 伸一郎, 米田 尚生, 斉藤 昭弘, 伊藤 康久, 藤広 茂, 坂 義人, 河田 幸道, 玉木 正義, 前田 真一
    1993 年 41 巻 Supplement3 号 p. 284-295
    発行日: 1993/08/30
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    協和醗酵工業株式会社で創製された経口カルバセフェム系抗生物質であるloracarbefの泌尿器科領域感染症に対する有用性を検討する目的にて, 基礎的ならびに臨床的検討を行った。
    1) 当教室保存の標準株および複雑性尿路感染症由来の臨床分離株に対する本剤の抗菌力を, cefaclor (CCL), cefixime (CFIX), cefteram (CFTM) を対照薬として測定した。本剤の抗菌力・抗菌スペクトラムはCCLと類似しており, Staphylococcus aureus, Staphylococcus epidermidisなどのグラム陽性球菌に対してはCFIX, CFTMといった他の新規経口セフェム剤より優れ, 主に腸内細菌群を中心としたグラム陰性桿菌に対してはCFIXやCFTMの方が優れていた。
    2) 本剤400mg投与2時間後の前立腺組織内濃度は, 平均3.14μg/g (n=3), 血清中濃度は10.72μg/ml (n=3), 血清中濃度に対する前立腺組織内濃度比は0.302であった。組織移行は良好とはいえないが, 組織内濃度そのものの値は, 感性菌による前立腺炎であれば本剤の効果が期待できるレベルのものと考えられた。
    3) 泌尿器科領域の各種感染症38例に対し, 本剤の治療効果と安全性とを検討した。UTI薬効評価基準により評価の可能な例についてその有効率を見ると, 単純性尿路感染症11例では全例が菌陰性化し。有効率は100%であった。複雑性尿路感染症16例では著効10, 有効4, 無効2で有効率は88%であった。軽度な消化器症状2例, 軽微な臨床検査値の異常が2例にみられたが, 重篤にはいたらなかった。
    以上の検討から, 本剤は泌尿器科領域の感染症に対して有効且つ安全性の高い薬剤と考えられた。
  • 鈴木 恵三, 堀場 優樹, 田中 利幸, 米津 昌弘, 名出 頼男, 日比 秀夫
    1993 年 41 巻 Supplement3 号 p. 296-303
    発行日: 1993/08/30
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新経口セフェム剤loracarbefを, 泌尿器科領域の感染症の治療に1日200~1200mgを投与して, 以下の成績を得た。急性単純性尿路感染症24例で100%, 慢性複雑性尿路感染症32例で81%(以上UTI薬効評価基準による), 男子尿道炎1例中1例に, 慢性前立腺炎13例中5例に有効であった。安全性では, 自他覚的副作用として, 1例にカンジダ性腟炎を認めた。臨床検査値の変動では白血球数の減少, GOT・GPTの上昇, 好酸球増多が各1例に認められた。
  • 桑山 雅行, 荒川 創一, 守殿 貞夫, 伊藤 登, 井谷 淳
    1993 年 41 巻 Supplement3 号 p. 304-309
    発行日: 1993/08/30
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しく開発された経口用カルバセフェム剤loracarbefの基礎的・臨床的検討を行い以下の結果を得た。
    1) 前立腺組織内移行: 前立腺肥大症9例に本剤200mgあるいは400mgを経口単回投与し, 経尿道的切除にて採取された前立腺組織中の濃度を測定した。前立腺組織内濃度 (平均値) は, 200mg投与において1時間後, 2時間後でそれぞれ1.39μg/g, 0.99μg/gで対血清比は0.46, 0.23であり, 400mg投与においては, 1時間後, 2時間後でそれぞれ1.805μg/g, 4.77μg/gで対血清比は, 0.21, 0.48であった。
    2) 臨床成績: 急性単純性膀胱炎4例, 複雑性尿路感染症20例に1回200mg 1日2回あるいは3回投与し, 臨床効果を検討した。UTI薬効評価基準第3版に合致する急性単純性膀胱炎3例の有効率は100%(3/3), 複雑性尿路感染症16例の有効率は69%(11/16) であった。細菌学的効果 (除菌率) は, 急性単純性膀胱炎で全例, 複雑性尿路感染症で82%であった。自他覚的副作用は全例に認められず, 臨床検査値の異常変動もみられなかった。
  • 渡辺 豊彦, 竹中 皇, 林 俊秀, 畠 和宏, 小野 憲昭, 公文 裕巳, 大森 弘之
    1993 年 41 巻 Supplement3 号 p. 310-317
    発行日: 1993/08/30
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新規カルバセフェム系抗菌剤loracarbefの尿路感染由来菌に対する抗菌力, 前立腺移行, ならびに, その臨床効果を検討した。
    1) 抗菌力: 尿路感染症由来菌, 14菌種205株に対する本剤のMICを測定し, 同系薬剤であるcefixime (CFIX), cefteram pivoxil (CFTM-PI), cefaclor (CCL) と比較検討した。全体としてCCLとほぼ同等, Staphylococcus epidermidis, Klebsiella oxytocaに対しては, CCLより優れた抗菌力を示した。
    2) 前立腺液移行: 健康男子4例を対象に, 本剤200mg単回投与1, 2, 4時間後の前立腺圧出液 (EPS) 中濃度を測定した。EPS中の濃度は全体としてばらつきが大きいものの, 4時間後で0.48±0.16μg/mlであった。
    3) 臨床効果: 16例の尿路感染症患者 (急性単純性膀胱炎3例, 急性単純性腎孟腎炎1例, 複雑性尿路感染症12例), 急性細菌性前立腺炎1例を対象に, 本剤1回量200~400mgを1日2~3回, 3~7日間食後投与し, UTI薬効評価基準に準じ臨床的検討を行った。急性単純性膀胱炎に対しては2例とも著効, 急性単純性腎孟腎炎の1例は著効, 複雑性尿路感染症に対しては著効4例, 有効3例, 無効1例であった。用量別には, 1日400mg投与群が2例中2例, 600mg投与群が8例中7例, 800mg投与群が2例中2例が有効以上であった。細菌学的効果は91.7%(11/12) という高い除菌率であった。副作用は下痢, 腹痛を1例に認めたが特に処置を必要としなかった。
  • 谷村 正信, 片岡 真一, 安田 雅春, 藤田 幸利
    1993 年 41 巻 Supplement3 号 p. 318-321
    発行日: 1993/08/30
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    われわれは新規経口カルバセフェム系抗生物質loracarbef (LCBF) について, その細菌学的効果, 臨床効果および副作用について検討した。
    1) Staphylococcus epidermidisに対するLCBFの抗菌力はcefaclor (CCL) と類似して, cefixime (CFIX) より優っていた。Escherichia coli, Klebsiella pneummiaeおよび
    Proteus mirabilisに対する抗菌力はCCLと類似しているが, CFIXよりわずかに劣っていた。Semtia marcescensおよびProteus vulgarisに対してはLCBFおよびCCLの抗菌力は低かった。
    2) 尿路感染症8例に使用しUTI薬効評価基準にて評価可能な5例で著効であった。
    3) 副作用および臨床検査値異常は認められなかった。
  • 植田 省吾, 松岡 啓, 野田 進士
    1993 年 41 巻 Supplement3 号 p. 322-327
    発行日: 1993/08/30
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Loracarbef (LCBF) の腎機能障害者における体内動態と慢性複雑性尿路感染症に対する臨床的検討をおこない, 以下の結果を得た。
    1.LCBF 200mg食後投与において, 軽度腎機能障害者でTmax: 1.7±0.5時間, Cmax: 7.5±0.6μg/ml, AUC0-24h: 26.2±4.8μg・h/ml, T1/2: 1-7±0.3時間, 尿中回収率は94.8±9.0%であり, 中等度腎機能障害者でTmax: 2.3±1.2時間, Cmax: 8.5±1.1μg/ml, AUCo.24h: 41.4±10.2μg・h/ml, T1/2: 2.5±0.9時間, 尿中回収率は93.4±11.0%であった。
    2.12例の慢性複雑性尿路感染症において, 主治医判定では著効3例 (25%), 有効4例 (33%), やや有効2例 (17%), 無効3例 (25%) であった。UTI薬効評価基準による判定では, 総合臨床効果は著効3例 (25%), 有効4例 (33%), 無効5例 (42%) で総合有効率は58%であった。副作用は特に認めず, 1例に血小板減少を認めた。
  • 江田 晋一, 後藤 俊弘, 北川 敏博, 小濱 康彦, 児玉 光博, 川原 元司, 牧之瀬 信一, 大井 好忠, 川原 和也, 八木 静男, ...
    1993 年 41 巻 Supplement3 号 p. 328-335
    発行日: 1993/08/30
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    尿路感染症患者尿由来の臨床分離株10菌種計294株に対するloracarbef (以下本剤) の最小発育阻止濃度 (MIC) を測定し, cefaclor (CCL), cefteram (CFTM), cefotiam (CTM) の抗菌力と比較検討した。本剤はEscherichia coli, Klebsiella pneumoniae, Proteus mirabilisに対してはCCLより1ないし2段階強い抗菌力を示した。Staphylococci, Entemoccus faecalis, Citrobacter freundii, Entmbacter cloacae, Serratia marcescens, Proteus vulgans, PseudmonasaeruginosaのMIC90は本剤, CCL, CTMは100μg/ml以上であった。尿路感染症患者19例を対象に臨床的検討を行った。急性単純性膀胱炎5例に対しては1回200mgを1日1~3回, 複雑性尿路感染症14例に対しては1回200mgあるいは400mgを1日2回あるいは3回投与した。UTI薬効評価基準に合致する急性単純性膀胱炎3例の総合臨床効果は著効2例, 有効1例で総合有効率100%であった。複雑性尿路感染症13例の総合臨床効果は著効5例, 有効3例で総合有効率62%であった。本剤を投与した19例において自他覚的副作用は認めなかった。1例でGOT, ALP, ビリルビンの軽度上昇を認めたが本剤の投与とは関係ないものと思われた。
  • 河田 幸道他
    1993 年 41 巻 Supplement3 号 p. 336-352
    発行日: 1993/08/30
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    複雑性尿路感染症に対する新経口カルバセフェム剤, loracarbef (LCBF) の臨床用量を検討する目的で, cefixime (CFIX) を対照薬とした用量検討比較試験を行った。
    対象は尿路に基礎疾患を有する複雑性下部尿路感染症とし, 外来症例, カテーテル非留置症例であることを条件とし, 前立腺術後の症例, Pseudomonas aeruginosa分離例は含めないこととした。
    LCBFの投薬量は1回200mg, 1日3回 (LC-600) または1回400mg, 1日2回 (LC-800), CFIXは1回200mg, 1日2回 (CF-400) とし, いずれも7日間投薬後にUTI薬効評価基準に従って臨床効果を判定した。
    総合有効率はLC-600群の22例で77.3%, LC800群の22例で86.4%, CF, 400群の23例で82.6%, また細菌消失率はLC-600群で31株中87.1%, LC-800群で29株中86.2%, CF400群で33株中90.9%と, いずれも3群間に有意差を認めなかった。
    副作用の発現率はそれぞれ3.1%, 3.0%, 0%, 臨床検査値の異常変動発現頻度は3.4%, 0%, 3.3%と, いずれも3群間に有意差を認めず, 有効性と安全性を勘案して判定した有用性にも3群間に有意差は認められなかった。
    これらの成績から, 複雑性尿路感染症に対するLCBFの投薬量は, 1回400mg, 1日2回が適当と考えられた。
  • 河田 幸道他
    1993 年 41 巻 Supplement3 号 p. 353-370
    発行日: 1993/08/30
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しく開発された経口カルバセフェム剤loracarbef (LCBF) の, 複雑性尿路感染症に対する有用性を客観的に評価する目的で, cefixime (CFIX) を対照薬とした二重盲検比較試験を行った。
    LCBFは1回400mg, CFIXは1回200mgをいずれも1日2回, 7日間投薬した後にUTI薬効評価基準に従って臨床効果を判定した。総投薬症例260例中LCBF群の100例とCFIX群の96例を有効性の評価対象としたが, LCBF群におけるグラム陽性菌の頻度が有意に高かった以外は両群の背景因子に有意差を認めなかった。
    総合臨床効果はLCBF群において有意に高く, 有効率はLCBF群で89.0%, CFIX群で79.2%であった。また細菌消失率はLCBF群で150株中92.0%, CFIX群で133株中84.2%であり両群間に有意差を認めなかった。
    副作用は, LCBF群の133例中3.0%, CFIX群の125例中4.8%に認められ, 臨床検査値の異常変動はLCBF群では1例も認められず, CFIX群では3例 (2.7%) に認められたが, いずれも両群問に有意差を認めなかった。有用性はLCBF群において有意に高かった。
    これらの成績から, LCBFは尿路感染症の治療において有用な薬剤であり, とくに複雑性尿路感染症ではPseudmonas aeruginosa以外の細菌が原因となったカテーテル非留置症例など, 外来の軽症ないし中等症の尿路感染症の治療において有用であると考えられた。
  • 富澤 尊儀, 山田 耕次, 渡部 義弘
    1993 年 41 巻 Supplement3 号 p. 371-379
    発行日: 1993/08/30
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新経口抗菌剤Loracarbef (LCBF) について, 11例に200mgを単回投与した際の本剤の皮膚組織内濃度の測定と, 55例の皮膚感染症患者に対して1回200mgないし400mgを1日2~3回, 3~15日間経口投与し, 臨床効果の検討を行い, 次のような結果を得た。
    1. LCBF投与1~3時間後の皮膚組織内濃度は0.24~3.70μg/g, その時の血漿中濃度は1.27~9.97μg/mlであった。
    2. 皮膚感染症55例に対するLCBFの臨床効果は有効率78.2%であった。
    3. 55例中44例の皮膚病巣より50株の細菌が分離され, 消失率は83.0%であった。
    4. LCBFに起因すると考えられる副作用, 臨床検査値の異常変動は認められなかった。
  • 鳥越 利加子, 山田 琢, 阿部 能子, 下江 敬生, 神崎 寛子, 秋山 尚範, 荒田 次郎
    1993 年 41 巻 Supplement3 号 p. 380-384
    発行日: 1993/08/30
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    経口カルバセフェム剤loracarbef (LCBF) の皮膚科領域における基礎的, 臨床的検討を行った。
    1.皮膚感染病巣から分離したStaphylococcus aureus 165株に対するLCBFのMICを106CFU/mlで測定し, 同様に測定したcefaclor (CCL) のMICと比較した。MICのピークはLCBFで1.56μg/ml (69株), CCLで3.13μg/ml (51株) であった。
    2.ラットにLCBF 20mg/kgを胃内投与した後の皮膚内濃度は60分後がピークであり, 対血漿濃度比は0.151~0.179であった。
    3.4人の手術患者でLCBF 200mg内服後の皮膚内濃度と血漿中濃度を測定した。その比は3例が各0.21, 0.23, 0.32であった。1例は皮膚内濃度が検出限界以下であった。
    4.皮膚科領域の感染症32例にLCBF 1回200mgを1日3回, 1例のみ400mgを1日3回経口投与した。評価の対象とした31例中, 著効19例, 有効10例, やや有効2例, 無効0であった。副作用は, 頭重感と嘔吐1例, 発疹1例, 軽度の軟便が1例にみられた。
  • 池田 政身, 山本 康生, 小玉 肇
    1993 年 41 巻 Supplement3 号 p. 385-389
    発行日: 1993/08/30
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しい経口用カルバセフェム系抗生剤loracarbefを皮膚科領域にて検討した。
    1.雄ラットにLCBF 20mg/kg胃内投与 (空腹時) した時の30分, 1, 2, 4, 6時間後の血清内, 皮膚内濃度は各11.88, 5.37, 2.83, 0.63, 0.15μg/ml, 3.23, 1.56, 0.91, 0.14, 0.08μg/g (湿重量)(n=4) であった。
    2.毛嚢炎2例, リンパ管炎1例, 急性爪囲炎1例, 慢性爪囲炎の急性増悪1例, 皮下膿瘍2例, 化膿性汗腺炎1例, 感染性粉瘤1例, 二次感染3例の計12例に対しLCBFを1日600mg食後3分服で使用した。結果は著効3例, 有効7例, やや有効1例, 無効1例であり有効率は83.3%であった。細菌学的効果では12例中9例で除菌された。本剤によると思われる自, 他覚的副作用は認められず, 臨床検査値異常も認められなかった。
  • 中山 一誠, 山地 恵美子, 川村 弘志, 川口 広, 秋枝 洋三, 渡辺 哲也, 鈴木 俊明, 糸川 冠治
    1993 年 41 巻 Supplement3 号 p. 390-399
    発行日: 1993/08/30
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新経口カルバセフェム系抗生物質loracarbef (LCBF) について, 皮膚・軟部組織感染症に対して臨床的検討を行った。
    対象疾患は感染性粉瘤, 瘻疽, 蜂巣炎, 皮下膿瘍, 創感染, 節, リンパ管 (節) 炎, 爪囲炎, 乳腺炎などの53症例である。主治医判定による臨床効果は53症例中, 著効9例, 有効35例, やや有効6例, 無効3例であり, 有効率83.0%であった。
    一方, 統一判定基準による皮膚・軟部組織感染症の臨床効果は53例中, 著効22例, 有効25例, やや有効3例, 無効3例であり, 有効率88.7%であった。細菌学的検討では, 単独感染20例における細菌の消失率は100%を示し, 一方混合感染18例では94.4%の消失率を示した。
    副作用に関しては, LCBF使用53例において自他覚的に1例も副作用は認められなかった。
    臨床検査値異常に関しては検討可能症例において, 特に異常は認められなかった。
    臨床材料より分離された21種59株についてMICを検討した結果59株中52株 (88.1%) は本剤の6.25μg/ml以下に分布した。
  • 真下 啓二, 由良 二郎, 品川 長夫, 石川 周, 水野 章, 保里 恵一, 鈴木 芳太郎, 伊藤 昭敏, 三宅 孝, 岡田 英也, 中村 ...
    1993 年 41 巻 Supplement3 号 p. 400-407
    発行日: 1993/08/30
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新規の経口用カルバセフェム系抗生物質loracarbefについて外科領域における基礎的・臨床的検討を行い, 以下の結果を得た。
    1) 抗菌力: 外科病巣分離のStaphylococcus aureus, Escherichia coli, Klebsiella pneumoniaeに対するMIC50/MIC90 (μg/ml>)はそれぞれ>100/>100, 1.56/100, 0.78/>100であった。これはS. aureusに対してはcefaclor (CCL) と同等, E. coliK. pueumoniaeに対してはCCLより2ないし4倍優れていた。
    2) 胆汁中移行: 胆石症2例と胃癌再発による閉塞性黄疸の1例における本剤400mg内服後の胆汁中濃度はそれぞれ6.3μg/ml, g.0μg/ml, 3.7μg/mlのピークに達した。これに対する最高血漿中濃度は10.5μg/ml, 10.5μg/ml, 14.3μg/mlであった。
    3)臨床使用成績: 外科的感染症21例に対する臨床効果は著効2例, 有効19例で, 有効率100%であった。また, 細菌学的には消失15例, 部分消失1例, 不変1例, 菌交代1例で消失率88.9%であった。自他覚的副作用はなく, 臨床検査値の異常変動は2例に軽度のトランスアミナーゼの上昇を認めたが, 投与終了後には改善した。
  • 森本 健, 木下 博明, 中谷 守一, 田中 宏, 藤本 幹夫, 大野 耕一, 酒井 克治
    1993 年 41 巻 Supplement3 号 p. 408-418
    発行日: 1993/08/30
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    外科疾患で入院中の5例についてloracarbef (LCBF) 200mg内服させたところ, 血清中濃度は4症例では内服後2時間以内に, 1症例では4時間で2.72~6.16μg/mlのピークレベルとなり, 胆汁中濃度は3例で内服後6時間以内で測定可能レベルに達し, 1.60~4.63μg/mlのピークレベルがみられた。ヒト胆汁中では6時間後の残存力価は37℃で89~97%でlatamoxef, cefaclorに較べて安定であった。
    皮膚軟部組織感染18例の臨床効果は著効5例, 有効8例, やや有効5例, 有効率72%の結果であった。起炎菌の単数菌・複数菌感染などの分離状況による臨床効果, 細菌学的効果には差はなく, 細菌学的効果を評価した起炎菌18株では14株が消失し, 4株が残存し, 消失率は78%であった。起炎菌のうち19株についてMIC3.13μg/ml以上を示す9株が認められた。自他覚的副作用は認めず, 臨床検査値の変動を治療の前後で確認できたのは12例で異常変動を認めなかった。新規経口用carbacephem LCBFは皮膚軟部組織感染を中心とした外科領域感染症に使用して有用性が期待できる。
  • 谷村 弘他
    1993 年 41 巻 Supplement3 号 p. 419-430
    発行日: 1993/08/30
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Loracarbef (LCBF) は消化管からの吸収性を高めた経口カルバセフェム剤である。われわれはLCBFの体内動態と外科感染症における臨床効果を検討した。
    胆嚢摘出予定の9例にLCBF 200mgまたは400mgを経口投与した際の最終投与3~5時間後の胆嚢組織内濃度は, LCBF 200mgまたは400mg単回投与では0.20~0.30μg/g, 200mg 1日3回, 3日間連続投与では0.05~1.25μg/gであった。その際の本剤の胆嚢胆汁中濃度は, 単回投与で0.90~3.90μg/ml, 連続投与では0.20~5.20μg/mlであった。
    T-tube挿入4例にLCBF 200mgを単回投与した際の胆管胆汁中濃度は200mg投与2~6時間後で3.29~6.55μg/mlのピーク値を示し, 12時間までの胆汁中回収率は0.13~0.17%であった。
    乳腺炎3例, 創感染4例, 肛門周囲膿瘍24例, 感染性粉瘤12例を含む表在性外科感染症56例に, LCBFを200mg, 1日2~3回, 2~15日間投与して臨床効果を検討した結果, 著効3例, 有効43例, やや有効9例, 無効1例で, 有効率82%であった。細菌の消失率はグラム陽性菌で95%(37/39株), グラム陰性菌で97%(32/33株), 嫌気性菌では100%(13/13株) であった。自他覚的な副作用は認めなかったが, 臨床検査値異常としてGPTの上昇を1例に認めた。
  • 横山 隆他
    1993 年 41 巻 Supplement3 号 p. 431-435
    発行日: 1993/08/30
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しく開発された経口カルバセフェム系抗生物質であるloracarbef (LCBF) について, 広島大学第一外科において外科感染巣から分離した各種細菌に対する抗菌力を検討すると共に外科感染症患者に投与し, 臨床効果, 安全性について検討した。
    各種細菌に対するLCBFの最小発育阻止濃度 (MIC) について検討した結果は以下のとおりであった。
    グラム陽性球菌ではmethicillin-sensitive Staphylococcus aureusのMIC50は6.25μg/ml, coagulase-negative StaphylococcusのMIC50は25μg/mlであったが, methicillin-resistant S. aureus, Enterococcus sp.のMIC50は100μg/ml以上であった。
    グラム陰性桿菌ではEscherichia coli, Klebsiella pneumoniaeのMIC90は0.78μg/mlと良好な抗菌力を有していた。Enterobacter sp., Citrobacter freundii, Serrath marcescensのMIC90はいずれも100μg/ml以上と高い値であった。
    肛門周囲膿瘍4例, 乳腺炎1例の計5例にLCBFを投与して臨床効果, 安全性について検討した。その結果, 全例有効であり, 投与前に細菌を検出した4例全例に投与後, 菌の消失を認めた。副作用, 投与前後の臨床検査値の異常は認められなかった。
    以上のことから, LCBFは外科領域の感染症に対して, 経口抗菌剤として有用な薬剤と考えられた。
  • 椿 茂和
    1993 年 41 巻 Supplement3 号 p. 436-440
    発行日: 1993/08/30
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    カルバセフェム系抗生剤loracarbefカプセルを, 耳鼻咽喉科領域の感染症に使用し, 組織内濃度の測定と臨床試験を行った。
    組織内濃度測定には1回200mgを経口投与した後, 上顎洞粘膜, 口蓋扁桃, 鼻茸を摘出した。臨床試験は急性中耳炎, 慢性中耳炎の急性増悪, 慢性副鼻腔炎の急性増悪, 急性扁桃炎, 扁桃周囲膿瘍に対し, 1日600mgを経口投与した。
    1) 組織内濃度は, 内服後80~98分 (平均85分) で0.27~2.30μg/g (平均1.07μg/g) で, 血清中濃度は0.54~2-83μg/ml (平均1.96μg/ml) であった。
    2) 臨床効果は, 著効3例, 有効4例, やや有効2例で, 有効以上は9例中7例であり, 高い有効率を示した。
    3) 検出されたグラム陽性菌, 陰性菌に対して, 良好な除菌効果を示した。
    4) 副作用は認められず, 安全性, 有用性に問題はなかった。
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