CHEMOTHERAPY
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経口カルバセフェム剤loracarbefの各種動物における体内動態
山下 錦也上野 素子佐藤 清
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1993 年 41 巻 Supplement3 号 p. 97-106

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抄録

新しい経口カルバセフェム剤loracarbef (LCBF) のマウス, ラット, イヌ, およびサルにおける体内動態について検討した。
Cefaclor (CCL) を対照薬として用い, 比較検討した。なお, 薬剤の投与は50mg/kg経口投与とした。
マウスではLCBFのCmaxは57.6μg/mlを示し, CCLの50.6μg/mlより若干高値を示した。LCBFのT1/2はCCLとほぼ同程度であったが, AUCは53.5μg・h/mlであり, CCL (46.6μg・h/ml) よりやや大きい値を示した。
ラットではLCBFのCmaxは19.1μg/ml, AUCは49.3μg・h/mlであり, CCLの9.6μg/ml, 21.6μg・h/mlよりも約2倍高値を示した。
LCBFはマウス, ラットともに肝, 腎, 脾, 肺の各臓器に速やかに分布し, 臓器内濃度はCCLに比べ高く, 良好な組織移行性を示した。
イヌではLCBFのCmaxは42.3μg/ml, T1/2は2.63h, AUCは207.9μg・h/mlで, サルではCmaxは16.0μg/ml, T1/2は1.27h, AUCは63.1μg・h/mlでイヌ, サルともにCmax, AUCのいずれもCCLよりも高値を示し, AUCではおおよそ2倍の高値を示した。
LCBF 50mg/kg経口投与後24時間までの尿中排泄率はマウスでは81.7%, ラットでは56.1%, イヌでは67.8%, サルでは49.2%を示し, CCLではそれぞれ62.0%, 36.1%, 11.6%, 18.2%であった。LCBFの尿中排泄はCCLと比べ全ての動物種において高値を示した。
LCBFはラット以上の大動物では対応するセフェム剤CCLより優れた体内動態を示した。この知見は, カルバセフェム抗生物質の特徴のひとつと考えられる。

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