CHEMOTHERAPY
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MRSAのマウス腸管内への定着条件に関する検討
井田 孝志田村 淳河原條 勝己嶋田 甚五郎
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1994 年 42 巻 8 号 p. 923-930

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抄録

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA) のマウス腸管定着モデルの作製を目的とし, MRSAの定着条件について検討した。実験に使用したマウスは, 入荷時にすでに腸管内にメチシリン感受性黄色ブドウ球菌 (MSSA) を保有するもの (以下Group A) と保有しないもの (以下Group B) があり, 両者の比率はおおむね8: 2であった。Group BのマウスにABPCを前投与した後, Staphylococcus aureus NU 36 (MRSA) を接種すると, 高率に腸管内への定着が認められ, 接種21日後でも糞便中からMRSAが回収できた。Group Aならびにampicillin (ABPC) を前投与しないマウスでは, MRSAを接種しも腸管内への定着は認められず, 糞便中からMRSAは早期に消失した。同様にGroup BのマウスにABPCを前投与した後, マウス糞便由来Staphylococcus aureus MF 28 (MSSA) を接種したところ, 腸管内への定着が高率に認められた。ABPC投与による腸内細菌叢の変動を調べた結果, 嫌気性菌を中心に大きな変動が認められた。また, 腸管内に生息しているMSSAと接種したMRSAは, 腸管内における発育部位が同一と考えられ, 両者の間でその部位を競合することが示唆された。以上の結果からMRSAのマウス腸管内定着には, ABPC投与による腸内細菌叢の撹乱と腸管内MSSAとの競合という2つの要因が関与しており, MSSAを腸管内に保有していないマウスにABPCを前投与した後にMRSAを接種するとMRSAが高率に腸管内に定着することが認められた。

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© 社団法人日本化学療法学会
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