CHEMOTHERAPY
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新注射用セファロスポリン系抗菌薬FK037の嫌気性菌に対する抗菌力
加藤 直樹加藤 はる田中 香お里渡辺 邦友上野 一恵
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1994 年 42 巻 Supplement3 号 p. 37-45

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抄録

新注射用セファロスポリン系抗菌薬FK037の嫌気性菌に対する抗菌力をセフェム系抗菌薬であるcefpirome (CPR) とceftazidime (CAZ) 及びオキサセフェム系のflomoxef (FMOX) と比較検討した。FK037は参考菌株を用いた検討において幅広い抗菌スペクトラムを示し, 多くの菌種に対してMICは3.13μg/ml以下であった。しかし, CPRやCAZと同様に, Eubacterium lentum ATCC 25559及びclstridium difficile GAI10029, Bacteroides fragilisgroupの多くの菌種, Prevotella bivia ATCC 29303, fusobacterium varium ATCC 8501に対するMICは50μg/ml以上で抗菌力がやや弱かった。新鮮臨床分離株を用いた検討においては, Peptostreptococcus anaerobias, peptostreptococcus asaccharolyticzts, Clostridium peifringens, Mobiluncas spp., Porphyromonas gingivalis及び通性嫌気性菌のGardnerella vaginalisに対するFK037のMIC90は0.78μg/ml以下で, 優れた抗菌力を示した。一方, B.fragilisに対するFK037のMIC50は25μg/mlで, 抗菌力はやや弱かった。これらの抗菌力はCPRやCAZとほぼ同等であったが, FMOXには劣る成績であった。参考菌株を用いた検討において, Fusobacterium nucleatum及びF.variumに対するFK037の抗菌力は接種菌量の増加により低下したが, その他の菌種では接種菌量の影響はみられなかった。また, 培地pHの影響は, F.varium及びBacteroides gracilis以外の菌種ではみられなかった。B.fragilisに対して, FK037は4MICの濃度で殺菌作用を示した。B. fragilisの産生するcefuroximase I型のβ-ラクタマーゼによりFK037は分解を受けたがCPRよりは安定で, CAZよりは不安定であった。本薬連続投与によるマウス盲腸内でのC.difficileの異常増殖実験では, FK037は薬剤投与終了7日目の検査においてCAZやFMOXよりはC.difficileがやや検出されやすい傾向がみられた。

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