日本化学療法学会雑誌
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Balofloxacinのマウスにおける光毒性誘発能の検討
丸谷 清杉山 修小泉 妙子小松 博道三好 昌夫長谷川 隆司田中 公一大谷 元
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1995 年 43 巻 Supplement5 号 p. 100-105

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抄録

balofloxacin (BLFX) の光毒性誘導能について, BALB/c系雌性マウスの耳翼皮膚反応を指標として検討した。200あるいは800mg/kgのBLFXをマウスに単回経口投与した後に40J/cm2の長波長紫外線 (UVA) を照射したところ, いずれの投与群でも耳翼に紅斑等の肉眼的変化はみられず, また耳翼皮膚組織の変化も認められなかった。しかしながら, 比較対照として用いたオフロキサシン (OFLX) では200mg/kg群で2/6例, 800mg/kg群で5/6例にいずれもごく軽度の紅斑が観察され, ナリジクス酸 (NA) では200mg/kg以上の投与群で全例に中等度以上の紅斑が発現し, 皮膚の病理組織学的検査により好中球を主体とする炎症性細胞の浸潤および皮下織および真皮の浮腫も認められた。
さらに, 1日1回, 7日間連続して20, 80あるいは160mg/kgのBLFXをマウスに経口投与した後に20J/cm2のUVAを照射したところ, いずれの投与群でも耳翼の紅斑および耳翼組織の変化は認められなかった。同様の処置を施したOFLX群のマウスでは, OFLXの80mg/kg投与群では2/6例に, 160mg/kg投与群では全例 (n=6) の耳翼に軽度の紅斑が出現した。また, NA群のマウスでは, 80mg/kg以上の投与群の全例に紅斑が継続的に観察され, 組織球および好中球を主体とする炎症性細胞の浸潤が用量依存的に観察された。
これらマウスにおける単回および反復経口投与実験において観察された耳翼の紅斑を点数化し, 各投与群の光毒性の程度を溶媒群と比較した。BLFXを投与したマウスでは, 単回投与および反復投与のいずれにおいても溶媒群と同様陰性であったが, OFLXの800mg/kg, NAの200および800mg/kgを単回投与した群, またOFLXの160mg/kgおよびNAの80mg/kg以上を反復投与した群で, それぞれ有意に高いスコアが得られた。
以上の成績から, 本実験条件下ではBLFXはマウスに対して光毒性を示さないと結論された。

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