日本化学療法学会雑誌
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Balofloxacinの臨床第I相試験
I.単回経口投与
中島 光好植松 俊彦福地 美保中野 真子小菅 和仁
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1995 年 43 巻 Supplement5 号 p. 115-140

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抄録

健常成人男子にbalofloxacin (BLFX) を経口投与し, 安全性と体内薬物動態について検討した。
空腹時単回投与は, 予備試験として各々2名の被験者を対象に10mg投与より開始し, 安全性を確認しながら20mg, 50mgと順次増量した。
次いで, 本試験として, 100mg, 200mgおよび400mgを順次経口投与した。200mg投与では食事の影響をみるため, 1週間の休薬期間をおくクロスオーバー法により同一被験者に朝食前と朝食後の2回投与した。その結果, 200mg食後投与群のうち1例が軽度かつ一過性の頭重感を, また400mg投与群では1例に立ちくらみ様の症状 (約10分間で消失) が発現した。いずれの症状も特別の処置を施すことなく一過性に消失した。他に特に問題となる症状.所見は発現しなかった。
BLFX投与後の血中濃度は用量に比例して増加した。Cmaxは100mg投与で約1μg/ml, 200mg投与で約2μg/mlとなった。Tmaxは1.0~1.2h, T1/2は7.0~8.3hで, 腸管吸収が速やかで, 比較的長く血中に持続した。食後投与ではTmaxが遅延し, Cmaxが低下したが, AUC0→ ∞, 累積尿中排泄率は空腹時投与とほぼ同等であったため, 吸収にはほとんど影響しないと考えられた。
いずれの投与量においても累積尿中排泄率は70~80%であった。代謝物としてグルクロン酸抱合体が約4%, 脱メチル体が約0.4%検出された。自然排泄便中の未変化体の回収率は2.8~10.7%で, 回収率が高い被験者では尿中排泄率が低い傾向がみられた。
以上の成績より, BLFXは安全性上特に問題なく, 体内動態に優れるため, 感染症患者を対象に臨床評価することが可能であると考えられた。

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