日本化学療法学会雑誌
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Balofloxacinの抗酸菌を含む各種細菌に対する抗菌力と喀痰内移行及び呼吸器感染症に対する臨床的検討
渡辺 彰庄司 聡高橋 洋菊地 宏明徳江 豊貫和 敏博本宮 雅吉本間 光信今野 淳佐山 恒夫柏木 誠麻生 昇新妻 一直滝沢 茂夫中村 美加栄
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1995 年 43 巻 Supplement5 号 p. 190-201

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抄録

Balofloxacin (BLFX) の抗酸菌を含む呼吸器由来10菌種計220株に対する抗菌力をofloxacin (OFLX) 等と比較検討すると共に呼吸器感染症21例に対する臨床効果, 細菌学的効果並びに安全性を検討し, 内1例で喀痰移行を検討した。本剤はMSSA, MRSA, Escherichia coli, Klebsiella pneumoniae, Enterobacter cloacae, Haemophilus influenzae, Pseudomonas aerrginosaに対し各々2, 8, 0.25, 1, 1, ≦0.125, 8μg/mlで全株の発育を阻止し, OFLXに匹敵した。抗酸菌 (Mycobacterium tuberculosis, Mycobacterium avium, Mycobacterium intracellulare) にはOFLXの1/2の抗菌力を示したが, rifampicin耐性結核菌にOFLXの2倍の抗菌力を示した。急性気管支炎2例, 慢性気道感染症8例, 肺炎10例, マイコプラズマ肺炎1例の計21例に本剤の100mgあるいは200mgを1日1~2回, 7~21日間投与し, 判定可能の19例中著効が5例, 有効14例で有効率は100%であった。慢性気管支炎の1例に200mg投与後3時間目に最高血中濃度1.57μg/ml, 5~6時間目に最高喀痰内濃度2.29μg/mlが得られて146%の移行比であった。投与前にはH. influenzae 3株, K. pneumoniae 1株, P. aeruginosa 1株の計5株を分離し, 全株の消失を得た。好酸球増多3例とGOT/GPT上昇2例を認めたが, 投与終了後に改善した。各種病原細菌に強い抗菌力を有するBLFXは種々の呼吸器感染症に対する第一次選択薬剤の一つと考えられる。

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