日本化学療法学会雑誌
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Staphylococcus aureusのセフェム耐性化とペニシリン結合蛋白4の増量
村上 和久土肥 正善永田 弘小松 良英
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キーワード: セフェム耐性, PBP 4
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1996 年 44 巻 8 号 p. 583-589

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抄録

2倍系列希釈したcefcapene (CFPN) またはcefteram (CFTM) を含んだ4mlの液体培地にStaphylococcus aureus FDA 209P JC-1の菌液40μlを植菌し, 37℃ で20~24時間静置培養した。
これを1代培養として, コントロール菌液とほぼ同じ濁度を示した菌液のうち薬剤濃度がもっとも高いものから同様に植え継ぎ, 14代まで継代培養した。親株に対し0.78μg/mlであったCFPNの寒天MICは5, 10, 14代継代株ではそれぞれ3.13, 12.5, >200μg/mlに上昇した。CFTMでも同様に, 3.13μg/mlからそれぞれ6.25, 25, >200μg/mlとなった。一方, flomoxefやcefhletazoleなどPBP 4に親和性の高いセファマイシン系薬剤のMICは, 最大2管までしか上昇しなかった。これらの継代株では耐性の上昇に伴ってPBP 4の産生量が増加しており, セフェム薬の作用を受けた菌では生存にPBP 4が重要な役割を果たしていることが示唆された。薬剤存在下で14代継代した株の耐性は不安定で, 薬剤を含まない培地で植え継ぐと簡単に低下した。耐性が低下すると共にPBP 4の産生量も低下した株がある一方, 産生量が逆に増加した株もあった。したがって, 14代継代株ではPBP 4の増量に加えて未知の要因も耐性に関与していることが示唆された。

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