日本化学療法学会雑誌
Online ISSN : 1884-5886
Print ISSN : 1340-7007
ISSN-L : 1340-7007
呼吸器感染症における新規抗微生物薬の臨床評価法策定の根拠とその検証
1. 急性上気道感染症群
渡辺 彰三木 文雄大泉 耕太郎力富 直人古賀 宏延二木 芳人草野 展周齋藤 厚
著者情報
ジャーナル フリー

1998 年 46 巻 12 号 p. 498-505

詳細
抄録

本論文の目的は, 日本化学療法学会の抗菌薬臨床評価法制定委員会の呼吸器系委員会 (以下, 本委員会) が本誌 (vol.45: 762~778, 1997) に報告した「呼吸器感染症における新規抗微生物薬の臨床評価法 (案)」で設定した診断基準, 重症度判定基準および有効性判定基準の策定根拠を, 急性上気道炎群の例において示すことである。新基準では, 臨床評価の対象となる急性上気道炎群として急性咽頭炎, 急性扁桃腺および急性気管支炎の3疾患をあげたが, 基準設定に今回用いたのは抗菌薬の開発治験時に集積された2,257例である。この群の治験症例のほとんどは担当医の判断によって選択された症例であり, 本委員会の設定した新診断基準に合致する率は67% (1,518/2,257) と低かった。しかし, 本委員会が評価すべき項目とした起炎微生物の検索, 白血球数, 杆状核球, CRP, 体温をすべて測定した1,172例における合致率は81% (947/1,172) と高かった。担当医の重症度判定では, 経口薬群と注射薬群に乖離が見られると共に中等症がもっとも多かったが, 新基準による判定では軽症例がもっとも多かった。すなわち, 新診断基準に合致した1,518例では, 担当医判定による軽症/中等症/重症の分布は41%/50%/9%であり, 新基準による判定では同様に50%/39%/10%であった。臨床効果判定に関しては, 新基準が主要評価目とした7日後に評価項目を測定し得た例は少なくなかったが, 解析に用いることができた234例では, 担当医判定と新基準による判定の合致率が85~93%と高かった。以上より, 急性ヒ気道炎群における新規抗微生物薬の臨床評価法としての新しい基準はいずれも妥当であり, 今後, 有効に使われるべきであるが, 医療技術の進歩と抗微生物薬の新たな開発によって起炎菌と治療効果の変化が予想されるので, 見直しを絶えず行うことが必要と考える。

著者関連情報
© 社団法人日本化学療法学会
前の記事 次の記事
feedback
Top