日本化学療法学会雑誌
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肺炎球菌による小児急性中耳炎の細菌学的, 疫学的, 臨床的検討
1997年9月から1998年8月までの1年間の検討
宇野 芳史渡辺 信介二木 芳人松島 敏春
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1999 年 47 巻 7 号 p. 387-395

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抄録

1997年9月から1998年8月までに当院を受診したStreptococcus pneumoniae による小児急性中耳炎症例の細菌学的, 疫学的, 臨床的検討を行い, 現在の問題点について検討した。今回の検討期間中, S. pneumoniae は284例から334株検出され, 内訳はペニシリン感受性肺炎球菌 (penicillin-susceptible S. pneumoniae, 以下PSSP) が117株 (35.0%), ペニシリン中等度耐性肺炎球菌 (penicillin-intermediate resistant S. pneumoniae, 以下PISP) が165株 (49. 4%), ペニシリン耐性肺炎球菌 (penicillin-resistant S. pneumoniae, 以下PRSP) が52株 (15.6%) であった。年齢は生後5か月から12歳11か月まで (平均3歳7か月) であり, 性別は男児151例, 女児133例であった。PISPとPRSP検出症例はPSSP検出症例より低年齢の傾向があった。検出月別では2月をピークとする1峰性の分布を示し, 大半の期間でPISPとPRSPの耐性菌がPSSPの検出率より多い傾向であった。また, 地区別の検討では, 郡部より市部での耐性化が進んでいた。血清型別では6, 19, 3, 23型の順に多く検出されたが, 耐性株は23, 19, 3, 6型の順に高率であり, PCGのMICが4μg/mlと高度耐性であった株は6, 19, 23型であった。S. pneumoniaeの治療において, 第一選択とすべき経口セフェム系抗菌薬はcefditorenpivoxilと考えられたが, MICが4μg/mlと耐性を示す株もあり, 注意を要すると考えられた。症例によってはclindamycinも優れた感受性を示すものがあったが, 耐性菌も存在するため, 必ずMIC測定後に使用すべきであると考えられた。経口抗菌薬, 鼓膜切開術などの治療で良好な結果の得られた症例は81.4%で, 18.6%の症例では耳漏の持続が認められたり, 反復性中耳炎に移行した。特に初回細菌検査でPSSPが検出された症例でも, その後PISPが検出され, 難治性中耳炎に移行した症例もあり, 初回治療の重要性が再認識された。また, S. pneumoniae の耐性化率が高度な地区では, S. pneumoniae に対する抗微生物薬の使用についてのガイドライン作成が必要であると考えられた。

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