日本化学療法学会雑誌
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Streptococcus pneumoniaeHaemnophilus influenzaeの混合培養系におけるcefoselisの抗菌力
松本 佳巳塩川 晶子若井 芳美波多野 和男池田 文昭
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2000 年 48 巻 7 号 p. 516-523

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抄録

近年日本国内においても増加傾向にあるペニシリン耐性Streptococcus pneumnoniae (PRSP) とβ-lactamase非産生アンピシリン耐性Hamophilus influenzae (BLNAR) による複数菌感染に対するcefoselis (CFSL) の有用性を評価するため, 両菌種の臨床分離株に対するin vitroおよびin vivo抗菌力を検討し以下の成績を得た。
1. CFSLはPRSPおよびBLNARにMIC90: 2μg/mlと優れた抗菌力を示し, PRSPを含むS. pneumoniaeおよびBLNARを含むH. influemaeに対する活性は, cefozopmn (CZOP) より4~8倍優れた。
2. CFSLはMIC以上の渡度において混合培養したPRSPおよびBLNARを著明に殺菌し, CZOPより低濃度で優れた殺菌性を示した。また, 血清中濃度の10%が移行すると仮定して求めた喀痰中渡度のシミュレーション系においても混在する両菌をCZOPおよびimipenem/cilastatin (IPM/CS) より効果的に殺菌した。
3. PRSPおよびBLNARによるマウス呼吸器複数菌感染系においてCFSLは20mg/kgの投与量で肺内菌数を有意に減少させ, CZOP, ceftazidime (CAZ) およびflomoxef (FMOX) より優れた治療効果を示した。さらに, ヒトの血漿中濃度推移をマウスに再現したin vivo pharmacokinetic modelによる検討でCFSLは0.5gヒト相当量で顕著な肺内菌数減少効果を示し, IPM/CSと比較しても優れる傾向を示した。
ペニシリン結合蛋白の変異によるこれらの耐性菌にもCFSLは優れた活性を示し両菌の複数菌感染の頻度が高い呼吸器感染症におけるCFSLの有用性が示唆された。

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