日本化学療法学会雑誌
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各種抗菌薬に対する臨床分離株の感受性サーベイランス
2000年分離グラム陰性菌に対する抗菌力
吉田 勇杉森 義一東山 伊佐夫木村 美司山野 佳則
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2003 年 51 巻 4 号 p. 209-232

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抄録

2000年に全国16施設において種々の臨床材料から分離されたグラム陰性菌19菌種属, 1,227株に対する各種抗菌薬のMICを寒天平板希釈法で測定し, 抗菌力の比較検討を行った。腸内細菌科の抗菌薬感受性は, ほとんどのβ-lactam系薬に対して, 過去のデータに比べ耐性化傾向は認めなかったが, ニューキノロン系薬 (NQs) に対する低感性株を含む耐性株の分離頻度は引き続き上昇していた。Escherichia coli, Klebsiella spp., Proteus spp.においては, ceftriaxone, ceftazidime, aztreonamあるいはcefbodoximeに対する非感性菌は, それぞれ9.8%, 4.0%, 8.3%検出された。Neisseria gonorrhoeae, Branhamella catarrhalisに対し, 多くの抗菌薬は良好な抗菌力を有していたが, N.gonorrhoeaeではNQs低感性株を含む耐性株が92%にまで達し, きわめて高い分離頻度であった。Haemophilus influenzaeにおけるβ-lactamase産生株は7%であり, 1998年より減少したが, β-lactamase-negative ampicillin耐性株 (BLNAR) の分離頻度は1992年3.3%, 1994年3.5%, 1996年15.6%, 1998年24.4%, 2000年37.0%と大きく増加していた。Pseudomonas aeruginosaの各抗菌薬に対する感受性は上昇しており, tobramycin, doripenem, meropenem, arbekacinは, MIC90で6.25μg/mL以下を示した。抗緑膿菌薬11剤に対する感受性解析の結果, 多剤耐性化は進んでおらず, すべての抗菌薬に感性の株の分離頻度が上昇していた。P. aeruginosa以外のブドウ糖非醗酵グラム陰性菌においても, 測定抗菌薬の抗菌力は若干上昇していた。

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