日本化学療法学会雑誌
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β-ラクタム系抗菌薬の初期殺菌能
松田 耕二井上 松久
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2005 年 53 巻 1 号 p. 1-4

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抄録

初期殺菌能 (Initial bactericidal activity) の定義を菌と抗菌薬が接触して1時問における殺菌速度とし, 初発菌数から1時間後の生存菌数を引いた値の対数値として表した。各薬剤の初期殺菌能を測定するための薬剤濃度はPseudomonas aeruginosa PAO1を用いて検討した。カルバペネム系抗菌薬の初期殺菌能は薬剤濃度 (μM) 依存的であったが, ceftazidime (CAZ) では調べた濃度範囲内 (0.5μMから80μMの間) では初期殺菌能は薬剤濃度に比例しなかった。その結果, カルバペネム系抗菌薬の初期殺菌能の評価可能な試験濃度として20μMという濃度を設定してimipenem (IPM), panipenem (PAPM), biapenem (BIPM), meropenem (MEPM) のカルバペネム系抗菌薬4薬剤とceftazidime (CAZ), cefpirome (CPR), cefepime (CFPM) の初期殺菌能を比較したIPMが最も強い初期殺菌能をもち, 次いでMEPMを除くカルバペネム系抗菌薬が強い初期殺菌能を示した.セフェム系抗菌薬は明らかにカルバペネム系抗菌薬に比べて初期殺菌能が劣ることがわかった。
緑膿菌の臨床分離菌47株を用いた初期殺菌能の検討では, 強い初期殺菌能 (1時間に2log以上の殺菌) を示す菌株の割合は, IPMで68.0%, MEPMで31.9%, PAPMで53.2%, BIPMで362%, セフェム系抗菌薬のCAZで0%, CPRで19.1%, CFPMで23.4%であった。一方, 幾何平均MIC値はIPMで1.67μg/mL, MEPMで0.612μg/mL, PAPMで5.87μg/mL, BIPMで1.02μg/mL, CAZで4.12μg/mL, CRPで6.60μg/mL, CEPMで3.61μg/mLであった。この結果から, 初期殺菌能とMIC値との間には相関関係は認められず, 初期殺菌能はMIC値とは異なり抗菌薬を評価するうえで重要なひとつのパラメーターとなりうることを示している。この研究は初期殺菌能と臨床効果の関係をさらに研究することに論拠を与えるものである。

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