人間は季節を感じ、季節を捉えて生きてきた。日本人は季節の移り変わりに敏感といわれる。この論文では先ず縄文時代・弥生時代以来、古代・中世を経て、現代に至る日本人の季節感・季節観を農耕文化との関連を通して記述した。また、外国人との違いを考察した。次いで、季節学の発展を、長い歴史をもつ中国、ヨーロッパの国々、特にドイツについて記述し、また、日本について展望した。特に日本については生物季節観測の歴史、第二次大戦前以来の季節学研究、観測記録の集積、統計表、等期日線図帳などについて詳しく述べた。観測対象として、春の発芽・開葉・開花日の北上、秋の黄葉・紅葉・落葉日の南下、動物季節の観測対象の日本における特徴などについて述べた。
また、地球温暖化時代における季節学の最近の課題をまとめた。すなわち、1)直接影響と間接影響、2)衛星画像の解析による地球規模の植生の変化、3)山岳・亜高山帯または熱帯などこれまで研究が少なかった地域の生物季節、4)観光資源としての季節現象、5)住民参加型の季節観測について述べた。