地球環境
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17 巻, 1 号
地球温暖化時代の生物季節と人びとの生活
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
  • 吉野 正敏
    2012 年17 巻1 号 p. 1-2
    発行日: 2012年
    公開日: 2025/10/10
    ジャーナル フリー

     季節の把握や研究について、特集号を『地球環境』に組むに至った理由はいくつかある。その一つは、日本人は季節への感性が鋭く、季節観がこまやかであると言われることがその一つである。四季の変化を感じ取りすばやく反応するのは、日本人の特徴だとされ、俳句の季語はその最たるものであると信じられている。

     この見方に私は特に反対はしないが、よく考えると、ほんとうに日本人だけだろうかという疑問が頭をよぎる。アントニオ・ヴィヴァルディの「四季」(75)は、日本人がこの世にいてもいなくても、全ヨーロッパから広く世界の人びとに受け入れられて、演奏されてきた。今後も価値を持ち続けるであろう。また、冬のヨーロッパで生活をしたことのある人ならば、フランツ・シューベルトの「冬の旅」(87)に、誰でも季節を感じるであろう。この歌曲は、生への絶望を若者がうたうヴィルヘルム・ミュラーの詩にシューベルトが曲をつけたものである。作詞者も作曲家も、季節感とは別の心情が作品完成の原動力であったかもしれないが、聴く者は、「冬の旅」に強く冬を感じる。そして、私が言いたい点は、これは日本人の文化圏の外の文化であることである。このような例は枚挙に暇がない。

     つまりは、洋の東西を問わず、人間は季節を感じ季節を捉えて生きてきたのである。人間の食料となる動植物が季節の変化に応じた生活をしているのだから、人間も季節を離れて生きることはできない。

     熱帯には四季がないとよく言われる。気温で言う限り、それは正しい。しかし、私はスリランカで季節のはっきりとした推移を体験したことがある。モンスーンとは季節風のことで、モンスーンアジアとは季節風が卓越する南アジア・東南アジア・東アジアのことである。スリランカは、南アジアにおける典型的なモンスーンアジア諸国の一つである。ここでは、雨季と乾季と、その遷移季のつごう四季がある。30年ほど前、私はそこで気候と農作物に関するプロジェクト研究をしていた。ある年、ひどい乾季で、コロンボの近くでのことだが、ゴムの樹の広大なプランテーションで、ゴムの樹の葉が全部落ちてしまった。このプランテーションを遠望すると、東北日本の冬山でみる風景のように、墨絵の世界であった。肌で感じる熱帯の暑さと、目でみている冬山の風景に私は戸惑いを越して、少し動転してしまった。しかし、さらに思いもかけないことが1ヵ月ほどたって起こった。その厳しい乾季が終わり、短い遷移季が過ぎて雨季に入ると、若い葉が一斉に出て、ゴム園全山が「新緑の候」になったのである。ちょうど、日本の房総あたりならば5月ころの山のようであった。熱帯の人びとにとっては新しい季節の開始であったのだ。

     このように世界各地にそれぞれの季節感があり、そして季節観を形成している。その上に近代科学としての季節学が生まれ、成長してきたのである。したがって、季節学の歴史は日本だけにあるわけではない。むしろ、文化の歴史が長いヨーロッパや、中国で季節学の誕生は古い。

     20世紀末までの季節学の発展を時代的にまとめると、次のようになろう。

     (1)動物・植物の成長の段階と、年を周期として繰り返す季節との対応を明らかにしようとした時代。特に気候の違いによってその対応がどのように異なるかに研究者は関心をもった。ヨーロッパ諸国では8~9世紀、日本では10世紀になってからである。

     (2)組織的にこれを観測し、記録する活動が求められた。これにはアカデミー・気象台や測候所などの国内網・国際網が使われた。そして観測方法・調査方法の統一が検討された。これは20世紀半ばである。

     (3)季節現象を温度計、あるいは、気候をとらえる記録計とする立場がある。民俗学的には春の山地斜面に残雪として残る“雪形”(例えば、駒ケ岳の駒の形の残雪模様)が古くからある。農作業計画にはよい参考になる現象として農民に受け入れられてきた。

     (4)生態学的な植物計(plant indicator)の見方が1920年~1930年代に確立した。日本にも輸入された。三澤勝衛もこれを学んだ。

     (5)気象台などにおける観測結果を整理し、ある国・地方・地域における等期日線図を作成したり、気温・降水量・日照日射・風などの気候要素との関係を統計的に解明した時代である。欧米では1930年代、日本では1940年代から盛んになった。

     (6)第二次大戦後、ヨーロッパ諸国、アジアでは中国・日本などで、季節学の研究が進んだ。上記の観測網の確立、観測結果の整理・解析が充実した。1950年~1970年代がピークであった。

     (7)生態学の立場から、生態系の季節現象の研究が1970年代ころから進んだ。それ以前は、いわば個々の動物・植物の季節現象が対象であった。今回の特集号では、この点を取り上げなかったが、大切な事柄である。

     (8)生物多様性と季節現象の関係を見直さねばならないという問題に発展した。個体で捉える生物計、統一した観測方法による広域の年年の状況把握、などとは異なる課題を提起した。特に1990年代になり、国際学界の議論になった。

     (9)1980年代ころから、気象観測の器械化、研究のスタイルが、野外の自然現象解明から大型計算機によるモデル構築などに変化した。これにより、動植物季節学の観測・調査・研究は衰退し始めた。

     (10)1990年代、この傾向に対し、IPCCで季節学的研究の重要性が指摘された。日本もそれを受けて、温暖化影響の研究の一端を担ってきている。この特集号でも大きな論点の一つである。

     (11)市民参加型、あるいは、学生や青少年または高齢者のグループ活動としての動植物季節の観察・観測・研究が進んでいる。この特集号では、京都を含めた関西の例を紹介した。今後さらに進展するであろう。

     (12)ツーリズムの発展によって、観光資源として開花・黄葉・紅葉などの季節現象の価値が高まったため、関心がもたれるようになった。また、登山・海水浴などのスポーツにおいても当日の天気ばかりでなく、季節の予測が必要である。これが、季節研究の活性化に繋がっている。

     (13)食品・衣料品などの仕入れ・展示・販売・商店街飾り付けなども季節性が強い。このような小売業界ばかりでなく、ビール・アイスクリームなどの製造計画にも季節の長期予報は必要である。

     (14)観光資源としては、公園全体、一定の長さの川堤全体、山地の斜面全体など、小地域全体の季節現象を把握する必要が生じた。また、山地の紅葉と初冠雪と青空の組み合わせ風景など、複数の季節現象をまとめた記録の解析・予測などが必要になった。さらに、これらの予測を宣伝したり旅行計画など作成のため、気象庁が発表する季節予測よりかなり早く行う必要が生じている。

  • 吉野 正敏
    2012 年17 巻1 号 p. 3-14
    発行日: 2012年
    公開日: 2025/10/10
    ジャーナル フリー

     人間は季節を感じ、季節を捉えて生きてきた。日本人は季節の移り変わりに敏感といわれる。この論文では先ず縄文時代・弥生時代以来、古代・中世を経て、現代に至る日本人の季節感・季節観を農耕文化との関連を通して記述した。また、外国人との違いを考察した。次いで、季節学の発展を、長い歴史をもつ中国、ヨーロッパの国々、特にドイツについて記述し、また、日本について展望した。特に日本については生物季節観測の歴史、第二次大戦前以来の季節学研究、観測記録の集積、統計表、等期日線図帳などについて詳しく述べた。観測対象として、春の発芽・開葉・開花日の北上、秋の黄葉・紅葉・落葉日の南下、動物季節の観測対象の日本における特徴などについて述べた。

     また、地球温暖化時代における季節学の最近の課題をまとめた。すなわち、1)直接影響と間接影響、2)衛星画像の解析による地球規模の植生の変化、3)山岳・亜高山帯または熱帯などこれまで研究が少なかった地域の生物季節、4)観光資源としての季節現象、5)住民参加型の季節観測について述べた。

  • 小池 重人, 繁田 真由美, 樋口 広芳
    2012 年17 巻1 号 p. 15-20
    発行日: 2012年
    公開日: 2025/10/10
    ジャーナル フリー

     ソメイヨシノをはじめとしたサクラの開花は、日本の各地で早まっている。早まりの程度は地域によって異なり、早まっている主要な地点では、10年あたり0.07日~4.01日(平均1.60日)変化している。気象庁の長期観測データの解析から、日本は全国的に早春の気温が上昇しており、それにともないサクラの開花日が早まっていると言える。気温が年々上昇する率、年変化率が大きいほど、開花日が早くなる率、年変化率が大きい傾向がある。気温が年々上昇していることから、開花日から満開日までの日数が短くなると予想されるが、むしろ長くなっている例の方が多い。早春の気温上昇によって開花日が早くなり、逆に開花日以降の最高気温が年々低くなっていることが関係している。

  • 青野 靖之
    2012 年17 巻1 号 p. 21-29
    発行日: 2012年
    公開日: 2025/10/10
    ジャーナル フリー

     京都で書かれた文献史料に残された、ヤマザクラの満開に関する植物季節記録に基づいて、過去1200年間の満開日推移を明らかにするとともに、それを用いた3月平均気温の推移を復元した。新たな調査によるものも含め、合計822年分の満開日データを解析に用いた。データを充実させるために、ヤマブキとフジの開花記録によるヤマザクラの推定満開日も併用した。9世紀以降の満開日推移には、150~200年の周期で極めて遅くなる時期が現れた。満開日に基づく3月平均気温の復元値は10世紀で現代より高くなった一方で、14世紀以降には四度にわたって5℃前後への低下を繰り返した。この気温変化は太陽活動の盛衰にほぼ同期して起きており、太陽活動の気候に対する影響の大きさがうかがえた。19世紀前半~現在の気温上昇幅(3.4℃)のうち、1.6℃は都市昇温によるもの、残る1.8℃は東アジア全体といった広域で起きた気候回復によるものと見られる。

  • 塚原 あずみ, 林 陽生
    2012 年17 巻1 号 p. 31-36
    発行日: 2012年
    公開日: 2025/10/10
    ジャーナル フリー

     従来の研究では、地球温暖化とサクラの開花期の関係が多く取り扱われている。本研究では、桜の開花日と満開日について、気温との関係に基づき、将来の気候変動が桜の開花期間にどのような変化をもたらすか評価した。開花から満開の期間を1つの生育ステージと考え、高緯度地域ほど開花期間が短いという地域特有の傾向の補正を行ったのち、発育速度DVRの概念を適用し、開花期間を推定するモデルを構築した。このモデルをもとに、IPCC-AR4で提供された将来の気候を用いた予測を行った。その結果、全国的な傾向として、温室効果ガス排出シナリオや予測対象とする年代および地点によらず、今世紀中ごろまでに開花期が遅くなり、現在より2.1日減の6.2日で開花から満開に至ることが明らかになった。この結果は、サクラを観光資源としてみた場合、お花見の日数が減ることになり人びとが楽しむ期間が減り、観光資源が減少することを示唆している。

  • 川崎 健
    2012 年17 巻1 号 p. 37-41
    発行日: 2012年
    公開日: 2025/10/10
    ジャーナル フリー

     海の季節は陸上とは大きく異なる。これは海水の物理的化学的特性によるものであり、とくに熱的慣性が大きいことに由来する。表層と100m深とはまったく別の世界で、季節の進行も異なる。海洋生態系の長期変動様式も陸上生態系とは異なる特徴を示し、大気-海洋間の相互作用と連動して、レジームシフトと呼ばれる数十年スケールの変動と転換を行う。北海道-本州東方水域は、黒潮と親潮が交錯する、世界で一、二を争う生産性の高い水域であり、季節的な環境変動が大きい。常磐沖水域における水温・塩分の年変化と魚類相の季節変化を示す。地球温暖化がサンマ漁業の季節変化に及ぼす影響についても検討する。

  • 増田 啓子
    2012 年17 巻1 号 p. 43-50
    発行日: 2012年
    公開日: 2025/10/10
    ジャーナル フリー

     気象庁の測候所の無人化により、これまで気象庁が統一的な手法で観測を蓄積してきた生物季節観測記録は途絶えてしまう。日本列島の多くの植物の開花や紅葉前線が描けなくなり、地球温暖化や都市域におけるヒートアイランドによる気温上昇の長期的傾向を捉えることも困難になる。そこで、京都府域を中心とした近畿の生物季節観測を市民の参加で行うことを試みた。居住している地域の長期的な変化を把握するために、統一手法で観測を行い、これまでの気象庁の開花・紅葉前線よりも精密な前線図を作成することができた。これらは観光のための基礎資料ともなりうる。このような観測を継続すると同時に、今後、観測している観測者で、その地域の標準木を設定し、毎年長期的に観測していくことを指摘した。

  • 松本 太
    2012 年17 巻1 号 p. 51-58
    発行日: 2012年
    公開日: 2025/10/10
    ジャーナル フリー

     近年春の開花が早まり、秋の紅葉が遅くなるなど植物季節に変化が見られるが、都市部では地球温暖化だけでなく、ヒートアイランドの影響も考える必要がある。そこで開花日に及ぼす都市の高温化の影響評価を目的として、2001年春に埼玉県熊谷市でソメイヨシノの開花日と同時期における気温の観測を行った。その結果、開花日の分布は都心の高温域で早く、郊外の低温域で遅い傾向がみられた。また翌2002年春、花芽の成長を観測し気温と比較した結果、熊谷地方気象台では郊外より開花日までの有効積算温度が高く、花芽の成長が早い傾向がみられた。よってヒートアイランドが開花日に影響を与えていることが明らかとなった。また観測で得た熊谷地方気象台と郊外における開花日と3月平均気温との関係を、熊谷地方気象台における経年的な関係に置き換えて評価した結果、都市の高温化による開花日の早まりは3日程度であることが推察された。

  • 漆原 和子, 乙幡 康之, 石黒 敬介, 高瀬 伸悟
    2012 年17 巻1 号 p. 59-68
    発行日: 2012年
    公開日: 2025/10/10
    ジャーナル フリー

     本論の前半では、まず、植物季節学的・気候学的立場から1940年代に始まったタンポポの開花季節に関する研究を展望した。次いで、植物生態学的な立場からの研究成果を主として1970年代以降について展望した。在来種・外来種の局地的分布の特徴・開花期間・年変化の差などに関する知見をまとめた。1940年代から2000年代におけるタンポポの開花日に関する植物季節学的研究の時代区分とその特徴を記述した。後半では、筆者らが行った東京都心部における調査結果を記述した。東京都心部の「小石川植物園」「市ヶ谷」「迎賓館」「桜田門」「日比谷」の5地点に分布するタンポポを、総苞外片の反り返り位置から5つに類型区分した。それぞれの類型のタンポポの分布と開花時期、開花期間と生育する土壌酸度を調べた。結果は、以下の通りである。開花時期は、咲き始め、咲き終わりともに在来種である類型4/4に近いタンポポほど早く、外来種に近い類型0/4に近いタンポポほど遅い。また、総苞外片の反り返りの位置が類型4/4に近い類型3/4のタンポポは類型4/4に、類型0/4に近い類型1/4のタンポポは類型0/4に開花期間が似る。また、類型別に区分したタンポポはそれぞれ適応する土壌酸度に違いがみられた。類型4/4はpH(H2O)が6.30以下の土地に生育するが、類型0/4はpH(H2O)が6.33以上の土地に生育し、雑種はその中間の土壌酸度の土地に分布することが明らかになった。

  • 西森 基貴
    2012 年17 巻1 号 p. 69-74
    発行日: 2012年
    公開日: 2025/10/10
    ジャーナル フリー

     本稿では、気温変化傾向の季節性とその影響の代表例として、過去の気候変動および将来の気候予測に見られる月ごとの違い、これまで長期変動解析があまり行われていなかった日射量の変動、およびそれらと関連した水稲生産における栽培ステージ(栽培ごよみ)の変化とその栽培ごよみを用いた温暖化に対する適応策について、これまでの研究成果をとりまとめ、展望した。近年の高温により水稲の登熟期は早まる傾向にあり、夏季の最高温時期に登熟を迎えるために高温不稔を誘発しやすいこと、および登熟期間の短縮により十分な日射が確保できず品質等にも影響すること等に関する研究の進展は、地球温暖化の水稲の生育・栽培・生産などに及ぼす影響を予測・検証する場合、重要な基礎的条件となる。

  • 杉浦 俊彦, 杉浦 裕義, 阪本 大輔, 朝倉 利員
    2012 年17 巻1 号 p. 75-81
    発行日: 2012年
    公開日: 2025/10/10
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     温暖化すなわち気温上昇が果樹の生物季節学的な変化に及ぼす影響について検討した。秋冬季の高温により、低温要求性をもつ自発休眠期の低温期間の長さや程度が減少し、自発休眠覚醒遅延が発生している。これは目には見えない現象であるが、ニホンナシ、ブドウ、モモなどでは、加温ハウス栽培での発芽不良として顕在化してきており、露地で発生することもある。一方、自発休眠覚醒の遅延よりも、その後の発芽・開花までの期間の短縮効果の方が大きいため、冬春季の温暖化により発芽期や開花期がほとんどの樹種や地域で前進傾向にある。開花期の変動により発生する問題としては、開花期の集中、結実率の低下がある。果実の成熟期は、ニホンナシ、ウメ、モモなどでは、前進している状況である。しかし、特定の色素の発現が明確なリンゴ、カキ、ブドウ、ウンシュウミカンの成熟期は、色素の合成に低温が必要であるため、開花期の前進に相応して早期化せず、むしろ遅延傾向である。

  • 福岡 義隆, 吉野 正敏
    2012 年17 巻1 号 p. 83-89
    発行日: 2012年
    公開日: 2025/10/10
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     健康・疾病に関する俚諺(りげん、または、諺・ことわざ)には、季節性・地域性がどのようにみられるかについて論述した。健康医学に関する諺のうち、科学的に根拠があり生気象学的にも実証可能で経験的・統計的に成り立つものを取り上げ考察した。まず、諺を分類し、特に、目的・効用による分類、形式による分類を示した。大分類では人間生活・生物・物理現象に分け、中分類では生物を植物・動物に分け、さらに、それぞれを小分類し、代表的な事象を表としてまとめた。次いで、天気俚諺と健康・疾病俚諺との関係、および、その季節性・地域性について論じた。「天候が変化すると頭痛がする」「寒くなると肩がこる」「天気が悪い日が続くと憂鬱な気分になる」「乾燥すると全身がかゆくなる」などの諺について日本における比率(%)の分布図を示し、気候区分との関係を考察した。最後に、沖縄における例、中国・モンゴル・アメリカにおける例を紹介し、季節との関係を述べた。

  • 西垣 知恵, 林 陽生
    2012 年17 巻1 号 p. 91-98
    発行日: 2012年
    公開日: 2025/10/10
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     生物季節の起日は、気温環境の変化を示す尺度である。特に春の生物季節は種目が多彩である。なかでもサクラの開花などは研究例が多い。本稿では、固有の種目の変化を取り扱うのではなく、春を代表する17種目(植物種目11、動物種目6)の起日が、1953~2004年の52年間にどのように変化したかについて論じた。これは、春の季節感の変化の議論に貢献しようとするためである。解析の結果、全国的な特徴として、主にスイセンの開花からノダフジの開花までの期間に相当する、春を代表する期間が早まると同時に春の期間が拡大していることが明らかになった。これは、冬から春にかけた期間の気温上昇と密接に関係している。春の生物季節の変化は、霜の初日と終日の変化から予想される気温の変化ともよく一致した。春に現れる複数の生物季節種目を取り扱い、春の季節感の変化の実態を明らかにした。

  • 常盤 勝美
    2012 年17 巻1 号 p. 99-106
    発行日: 2012年
    公開日: 2025/10/10
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     流通業界におけるマーチャンダイジングに対して季節変化が与える社会科学的影響の例として、商品の気象特性分析の活用手法を本稿ではまとめた。流通業界において、消費者の需要を予測するための重要な要因の1つとして、気象情報の活用度は非常に高い。分析にあたり、季節に応じた気象変化による商品販売動向変化を体系化した。気温が高く、体感的に暑い日に好まれる商品を昇温商品、気温が低く、体感的に寒い日に好まれる商品を降温商品と定義すると、店舗にて販売されている多くの商品を気象条件別に分類することができる。青果と精肉については25品目、鮮魚については13品目、日配品については14品目、さらに、惣菜・乾物・衣料品・日用雑貨品などの諸アイテムをあげ、表にまとめている。気象特性分析は、日々の発注業務から中長期的な商品計画まで幅広く活用できる。

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