2013 年 18 巻 2 号 p. 145-152
日本における希少樹種は、森林伐採や土地開発など人為的要因により衰退し、絶滅が危惧されている。希少樹種の自生地の多くは分断され、小集団化が進んだ集団では遺伝的多様性が減少し、分断化に伴って遺伝子流動の大きさや方向性は変化する。小集団化は、花粉制限や近交弱勢による種子生産の低下をもたらし、更新不良を引き起こす大きな要因となっている。さらに、更新する場所の環境の劣化や競合種の侵入は、希少樹種の生育や更新を妨げる。このような現状に対して、保全単位の設定は遺伝的かく乱を防ぎ、種苗の移動について適切な範囲を示す。保全単位内においては集団間の遺伝子流動を保障し、健全な更新が保障されるような保全対策が必要である。近年のDNAマーカーを用いた遺伝解析は希少樹種の保全研究に大きく貢献する。