地球環境
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遺伝的多様性から見えてくる日本の哺乳類相:過去・現在・未来
玉手 英利
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2013 年 18 巻 2 号 p. 159-168

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抄録

日本列島に生息する哺乳類の遺伝的多様性に関する知見をもとに、哺乳類相が形成された過程を論じる。18種の分子系統地理を比較すると、本州内で系統群が大きく分かれる種、本土と島嶼で系統群が分かれる種、系統群が離散的に分布する種など多様な遺伝的分化のパターンが見られる。ニホンジカ、ニホンザル、ツキノワグマ、ノウサギなどの種は本州中部で2系統群にわかれる共通のパターンを示すことから、これらの種は森林環境の変化とともに同調的に分布を変化させたと考えられる。集団レベルの遺伝的多様性の比較では、日本の哺乳類の地域集団が、乱獲、生息地の分断化や保護など様々な人間活動の影響を強く受けていることが示された。さらに、外来種の遺伝子浸透や新たな地域集団の形成が地域生態系に及ぼす影響が懸念される。

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© 2013 一般社団法人国際環境研究協会
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