2014 年 19 巻 2 号 p. 155-163
汚染物質の監視にかかわる生物モニタリングとは、野生生物を捕集・濃縮装置、あるいは鋭敏なセンサーとして利用しながら、環境中に存在する化学物質や重金属類等の汚染物質の濃度とその変化を監視するものである。ムラサキイガイ等の二枚貝、巻貝、魚、ミミズ、ネズミ、植物の葉、さらには昆虫等の短寿命生物を使った生物モニタリングが世界のさまざまな国で実施され、化学物質適正管理のための基礎情報を提供している。本稿では、実際の例を含めて生物モニタリングの概要を紹介したあと、筆者らが試みているトンボを使った市民参加型環境モニタリング手法について紹介する。さらに化学物質の一斉分析手法や毒性研究、バイオロギング研究などの急速な進歩を背景に、生物モニタリング手法の将来展望についてもまとめる。