近年,動物装着型の電子機器を用いる「バイオロギング」という手法により,直接観察することの難しい野生動物の研究が盛んに行われている。この手法では,データを内部に蓄積する記録計,またはデータを電波・超音波により受信機へ送信する発信機を動物に装着し,その生理状態や運動のデータを,位置や周囲の環境情報と同時に取得する。湖沼における魚類のバイオロギング研究は,1970 年代に米国の五大湖で始まり,現在まで数多く行われている。一方,日本では1990 年代以降,最先端の機器を用いて,魚類の移動経路や3 次元的な遊泳行動の解明,生物多様性を含む水中環境の把握など,先進的な取り組みが進められている。将来的には,機器の小型化やこれによる対象種の拡大に加え,複数の研究者・研究機関の協働による広域かつ統合的な研究の推進が,気候変動下における湖沼生態系の保全のために必要となるだろう。