気候変動影響を最小限に抑えるための努力が進展しつつある。2015 年に採択され たパリ協定で,長期的な気温上昇幅を2℃,さらに,1.5℃以内に抑える目標が明記さ れた後,気候変動に関する政府間パネル(IPCC)から1.5℃に関する特別報告書が 2018 年に公表され,2℃ではなく1.5℃をまずは目指すべきという認識が世界中で共有 された。そのためには,世界の二酸化炭素排出量を2050 年までにネットゼロ(カー ボンニュートラル,脱炭素,実質ゼロとほぼ同義)まで減らさなくてはならない。こ の目標を踏まえ,多くの国がネットゼロを長期目標として掲げるようになった。本特 集号では,このような状況の中で,日本が2050 年までにネットゼロに至るための技 術的課題や,政策パッケージ,そして,社会経済的な状況まで,多彩な学問分野での 議論を包括する。単に排出量削減の問題としてではなく,社会変革としての提起を目 的とする。