智山学報
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風水思想と自然科学 : 特に生態学の観点から
岡野 忠正
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1990 年 39 巻 p. 127-138

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抄録

-風水思想は、中国古代人が多くの生活経験から感知した生態系(自然観)に基づいて成した生態学的要素をもつ神秘思想である-という仮説の証明を目的として考察を試みた。所謂『風水』は、中国民族の「長生」と「富裕」と「繁栄」(子孫の持続)への憧憬と熱望を満足させ裏付けるものとして、近代まで中国人の生活習慣(特に宅地や埋葬地また日取りなど)を規定してきた神秘的な術である。そして、その術のかなりの部分は、科学的裏付けのしようがなく、また方法論は、風水師の個人的見解の強い非体系的なものが多い。而しながらその背景には、陰陽・五行や十干十二支といった自然の営みから感知され体系化された思想と、磁石(羅経)という偉大な発明品がある。それらを応用した方位学と、「守護神性」や「竜脈」などの自然(宇宙)エネルギー獲得を目的とする方法論によって構成される風水思想の中には、現在の科学と符合しないからといって、安易に排斥してしまうには惜しい部分が包含されている。これを仮に準科学的なものと呼ぶならば、また現在の我々の自然科学が至っていない世界の構成者となる可能性を予想するならば、中国古代の思想を現代の自然科学の視点から考察をすることに、多少の意義はあろうかと考えている。

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1990 智山学報
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