智山学報
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アイデンティティ形成に占める信仰の位置
鈴木 晋怜
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1990 年 39 巻 p. 147-160

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抄録

急速に変化し、発展する現代社会の中で、我々は物質的、或は経済的な豊かさを享受しながら、その一方で内面的な危機に晒されている。それは、現代において我々が、どうしたら一貫した自分というものを保持していけるのか、或は、社会との関わりのなかで、どこに自分というものを見いだすことができ、そしてその自分とは何かという問いに対して明確な解答を持ちにくい状況のなかに生きているということであろう。これは、まさにエリクソンの言うアイデンティティ形成の問題である。それでは宗教はそうしたアイデンティティの形成にどれ程の影響を及ぼし得るのであろうか。この問題を実証的に考察するため、アイデンティティ形成の最も重要な時期である青年期に位置する若者を対象に質問紙法による調査を実施した。その結果、「ある宗教に対する信仰は、その人のアイデンティティの形成に貢献的に作用するという意味で影響を与える。但し、各人が自分の信仰というものに真剣に関与せず、それが慣習的・形式的なものである場合には、アイデンティティの形成上、彼らは無信仰者と何ら変わるところはない。」という結論が導き出された。

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1990 智山学報
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