智山学報
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弘法大師と興教大師 : 両部不二思想をめぐって
宮坂 宥勝
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1991 年 40 巻 p. 31-51

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抄録

両祖の教学の同異についてみる場合の基準のひとつに、両部不二思想があると思われる。従来の密教教学では一般に両部不二は空海の思想の特質を形成するとみるのが、常識的になっている。が、思うに、これは東密の所説に由来する。そして、東密説は台密の両部而二説に相対する立場を標榜したものにほかならない。ところで、同じ東密でも而二(または二而)門学説と不二門学説とがある。このように東密にも両説があるのは、空海の説いた両部の関係を而二とみるか、もしくは不二と認めるかに関わっていたからであろう。そこで、まず空海に両部不二思想ありとし、これをもって空海密教の特徴とする所論を再検討し、当面、覚鑁の不二思想の形成を確認する必要がある。また、従来、本有・修生、一法界・多法界、有相・無相、理智(二法身)なども、空海の両部不二思想を根拠とするかのように、それらの関係を同じく不二と説くが、これについても再検討してみたい。結論。両部不二思想は空海にはまだ明確に認めがたく、それは覚鑁によって確立されたものの如くである。また、さらにこの両部不二思想は両部神道の本地垂迹説の理論的根拠ともなっている点に言及する。

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1991 智山学報
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