仏滅直後の仏教教団のあり方を考えてみたい。釈尊は紀元前383年に入滅し、アショーカ王が前268年に即位したという説に拠るならば、この115年間という時代が考察の対象となる。したがって、仏滅直後とは、ここでは滅後100年頃までとしておきたい。
この100年という時間の隔りにおける教団の歴史的変遷をさまざまな角度から検討することが必要となろうが、先にアショーカ王時代の仏教について、特に舎利信仰に着目して考察したが、そこでその時代すでに舎利信仰が何らかの形をとって存在していたことを見た(1)。本稿ではさらに、舎利信仰が発生してくると思われる歴史的、地理的環境を探るために、アショーカ王の時代より少し遡り、やや詳しい検討を加えてみたい。確たる資料が乏しいため、断片的情報を繫ぎあわせての推測ともなりかねないが、あくまで事実と考えられる事柄を中心に考察することにしたい。