智山学報
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『仏本行経』「昇忉利宮為母説法品」について
西村 実則
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キーワード: 摩耶夫人, 忉利夫
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2016 年 65 巻 p. 77-82

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抄録

    インド文献で摩耶夫人にふれるものは少ないわけではない。仏伝文学はむろん、阿含経典、アビダルマ論書、『華厳経』などに見ることができる。しかし摩耶夫人が述べたことばを記したものは数少ない。そうしたなかで仏伝文学に位置づけられる『仏本行経』にはブッダと摩耶夫人との対話がみられ、わずかながらも夫人の言葉を認めることができる。『仏本行経』の作者は不詳であるが、ブッダの誕生から入滅まで三十一章から成り、馬鳴作『仏所行讃』と同じく全編詩で構成されている。中国で劉宋年間(376ー449)に宝雲によって訳された。宝雲は伝(1)によると、涼州出身で、中央アジアのコータン、さらにインドを歴訪し、サンスクリットをも体得した仏者である。建康の西北に近い山寺、六合山でこの経典を訳出した。宝雲にはこの経典以外に、仏陀跋陀羅との共訳である『無量寿経』や『華厳経』(六十巻本)がある。
 一見すると平易な漢文にみえるが、決してそうではない。その第二十一章「昇忉利宮為母説法品」の現代語訳を試みてみよう。

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2016 智山学報
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